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『千年相姦』二章 『クルルー様の冒険譚』 第七夜 チコ(3)

【これまでのあらすじ】
『交配の旅』から七年ぶりに〈千年森〉に帰郷してきたクルルー(キトゥン・18歳)。
養親・レフィナ(自称ニンゲン・年齢不詳)との再会を喜ぶのも束の間、七年の月日は一人と一匹を大きく隔てる。
そんな中クルルーが「レフィナを(寝物語で)満足させることができたら、レフィナの顔を見せてもらっていい?」と話を持ちかけ自らの旅の話、題して『クルルー様の冒険譚』を語り出す。ここまでが第一章。

そして第二章『クルルー様の冒険譚』に話は進み、視点は七年前、11歳のクルルーに移行する。
クルルーは旅先で雌キトゥン・コロンと出会い交配を成立させる。そんな二匹を見つめる不穏な眼差しが……。

二匹の交配を見つめていたのは「ニゲル」という名の美貌の雄キトゥンだった。
本能的危機感でニゲルから逃れる必要性を感じたクルルーはコロンに「逃げよう」と訴えるも軽く一蹴される。なんとニゲルは、コロンの友達・サリーの兄だというのだ。彼は「お隣」に住む昔なじみの雄だと。
だがニゲルの危険性をなおも訴え続けるクルルーにコロンが提案する。
「わたしの家にいらっしゃいよ!」

コロン一家に招き入れられたクルルーはパパやママ、コロンの妹コロネ、更にはニゲルの妹であるサリーとの交流を通してキトゥン社会に根を下ろしていく。

そして月日は流れ六年。
クルルーは17歳になっていた。
異様に美しいパパの過去の浮気疑惑やママの底知れなさ、コロネの「手ほどき」を巡っての諍いなど小さな問題を孕みつつみも彼はとりあえずの平穏な日々を送っていた。
そんなさなか彼はニゲルの「爪痕」を発見する。
ニゲルはコロン一家の「お隣」であるにもかかわらずここ六年間クルルーは一度も彼と顔を合わせたことがないのだ。
これは一体どういうことなのか。
爪痕に脅威を覚えるクルルー。
彼の不安に呼応するように爪痕を見つめるクルルーの背後に忍び寄る影が……。
【今回登場する登場人物】
 
クルルー(17歳)   ニゲル(18〜9歳)

二章 『クルルー様の冒険譚』 第七夜 チコ(3)


 二度あることは三度ある、というけれど、それは一度あったことは二度ある、ということでもある。
 それは突然訪れた。
 ひっ……。
 これ、こ、こ、この、……感触!
 頭が警報を鳴らしている。けれど頭の中のつんざくような警鐘に反して、肝心の身体がそれに対して応えることができない。
「一度あることは二度ある、……よねぇ」
 僕の思考を読み取ったようにねっとりした声が耳元に響き渡る。その直後に頸椎に牙を立てられた。
 またかよ!
「グルルルルッ」
 抵抗する意志はなかった。けれど雄の本能としてどうしても反射的に唸り声をあげてしまうのだ。決して痛かったからではない。
 断じて。
「ヌイの実はおいしかった?」
「ひっ……」
 おかげさまであのときはコロンの身体が復調して交配に再び及ぶことができました、とはとてもじゃないけどいえなかった。仮にも、ライバルの雄にもらった果実に対して。
「ただいま〜」
「おっ、おっ、おっ……、おかえり、なさい、ませ」
 耳元でぷっ、と吹き出す気配があった。
「あんた本当にさあ、……相変わらずっていうか、……畑仕事は楽しい?」
 付け足しのように訊かれる質問にも僕は律儀に答える。
「うまくいけば、このまま計画通りに出荷だって……」
「そう、それはよかった。あんた真面目だよねぇ、僕にはほんと、無理」尊敬するよ、囁かれる。
 嫌味だろうか。
 まったく、いけすかない。
「き、き、君こそ、毎日毎日毎日あっちいきこっちいきふらふらふらふら……、ど、どこに行っていたのさ」
「僕? 僕はまあ……、こっちの事情が、ね。それなりに。あ、そういえば、この間コロンのパパとすれ違ったよ」
 すれ違った?
 会った、じゃなくて?
「な、何かパパはいって……た?」
「何もいうわけないでしょ。無言で通り過ぎただけ。そりゃ、お互いに……、ね。あんたのいう、畑仕事の産物であるお野菜をたくさん持ってたし」
「『お』野菜って、……君がいうとなんか……」
「あ?」
「ひっ」
 こいつの「あ?」は本当に怖い。
 そうして僕は同じ印象をほかの誰かに抱いたことがあったのを思い出したのだけれど、それが誰であるのかまでは探り当てることができなかった。(※管理人注/この「あ?」はクルルーの養親レフィナの口癖。それをなぜニゲルが踏襲しているのか? なんとなく思いを馳せてみてくださると嬉しいです)
 そんな余裕はない。
「だから尊敬してるんだって。僕なりに……ね」
「……」
 こいつにしては消え入るような優しい口調に、ふいに肩の力が抜けた。あてがわれていた牙もいつの間になくなっている。
「ふ、ふ、振り返ってもいい」
 一応確認を取る。
「好きにすれば」
 以前会ったときは昼間だった。そのときのこいつは、肌の白さがやけに目立って酷薄な印象が際立っていたものだけれど、今日のこいつはどうだ。
 夕日のせいか少しだけ寂しげに見える。濃く落ちた陰影がこいつの無表情を思わせぶりなものに見せている。
 まったく、美貌の雄は何をしていても「はまる」。狡いな、と思った。
「ねえ、訊いていい、どこに行ってたの」
 サリーが心配するよ、そんなんじゃ、とお節介をかく勇気は僕にはない。
「ねえ、訊いていい」
 オウム返しにされる。まったく、いちいち嫌味な奴だ!
「なんでコロネを喰わないの」
 僕はぽかんとする。
 畑に立てられた鳥除けのかかしに今ならなれる。
「く、く、く、くくくくくくっ」
「何、その『く』の連続は、自分の名前のことなわけ」
 わかっているくせにわざとそんなことをいう。
「喰うって、喰うって!」
 そりゃ、意味はわかるけど! さすがに鈍感な僕でも!
「こんな千載一遇のチャンスもないのに」
「あのねえ、チャンスも何も、僕は唯一無二を貫き通していたいんだ!」
「は?」
「唯一無二だよ! 知らないの?」
「いや、そんな得意そうな顔でいわれてもさ……、わかるよ、で、その唯一無二がなんだって?」
「元はといえば君がいってたんじゃないか。……君、本当はコロンのことが……大好きだったんだろう?」
 先ほどのこいつの一瞬の優しげな口調もあいまってつい滑り出るように口に出していた。
「……は?」
 その後ニゲルが急にけたたましく笑い出した。あまりに禍々しい哄笑に鳥たちがバサバサと飛び去ってく。
 やっぱりいけすかない奴だ!
「何、何それ、どこが出所なわけ」
「だって、君の妹のサリーがそういって……」
「ああ、あの雌」
 と、まったくサリーに似ていない切れ長の瞳を空に向けながらいう。「あいつ意外といい身体してるんだよ」
 まったく脈絡のないせりふだった。それに何よりその内容が聞くに耐えないものだった。それにしてもいくら兄だからといって、妹の身体をして「いい身体」なんていうものだろうか。どういう意味でいったのだろうか。
 ……僕はその意味を知っているんじゃないのか……。
 夕暮れの陰は、長く、濃く、そして、しつこい。
 ニゲルが唇を変な角度に、にっ、とあげる。
「僕だったら、すぐにコロンのお願いごとに応えてあげるけどね」
「……!」
 それは僕が実は一番訊きたくて堪らなかったことなのだ。
 きっとサリー経由で兄であるニゲルにも僕の事情は筒抜けだったに違いない。コロンはなんでもサリーに相談するから。
「パパもママも認めてくれているんだろう? 公認じゃないか。それならほかの雄の干渉を受ける確率もぐっと減る」
 といって、親指と人差し指を近づける。「減る」を暗に表現しているのだろう。小さな豆粒を押し潰したふうにも受け取れる。
「繁殖成績を上げる絶好の機会じゃないか。なんでコロネと交配に及ばない?」
 こいつとの数少ない一緒に過ごした時間の中で、おそらく初めて見るこいつの真摯な眼差しだった。眉を顰めながらも、瞳は真っ直ぐに僕を見据えている。
「は、はんしょくせいせきって……」
 難しい言葉はよくわからない。
「一匹の雌が産める仔キトゥンには限界がある。そうそう簡単にキトゥンは着床するものでもない。だけどコロネがそこに加わるだけで、繁殖成績は格段に上がる。おまけにコロンの身体にかかる負担も少なくなる」
「あ……」
 それは考えつきもしない発想だった。
 僕は毎晩、コロンを相手に何をしていた……?
 苦痛に表情を曇らせていたこともなかったか。
 今日は調子が悪いの、と交配を断る回数も増えていたのではなかったか。
 それもこれも、僕の欲望を、全部コロンが一匹で受け止めて……。
「とまあ、そういう可能性もあるかもしれないというだけで、あんたの愛を独占できてるコロンは幸せだとは思うよ」
 と、着地点があっさり「僕の理寄り」になる。
 僕は唖然として立ちすくむ。こいつの思考回路についていけなかった。
「あんた真面目すぎるんだよ。雄にとってはこれ以上都合のいい展開もないのにさ、って思って」「……都合がいいとか、悪いとかの話じゃないんじゃないかな」
「あ?」
 真っ向からニゲルを否定するようないいかたになったことは否めない。ニゲルは気を悪くしたふうだった。
 だけど僕は冷静だった。
 いい返そうとか、何か一矢報いてやろうとか思っていたわけじゃない。
 僕はこれまでにないくらいに、気持ちが凪いでいた。
 場所が、慣れ親しんだ畑であったことも幸いしていたのかもしれない。
 夕暮れに沈む畑はまた一段と美しい。
 雨期特有の、瑞々しさに満ちている。
 僕はあらためて僕の周りに広がる畑を見渡す。
 そこには僕たちキトゥンの「命の縮図」が広がっていた。
 たしかに育ちゆく豊穣の象徴。パパと僕が丹精込めて育て上げてきた作物たち、……何か特段に面白いことや刺激的な事柄があるわけじゃない。けれど、たしかに続いて、キトゥンたちの命を繋いでいくもの。たとえ多少効率が悪くとも。
「繁殖成績……、とか、そういうんでもなくてさ」
「……」
 ニゲルはその端正な顔をじっと僕に見据えている。
「僕にとってコロンは初めて交配した雌で、初めて出会った雌であったにも拘らず、僕をずっと昔から惹きつけて止まない存在なんだ」
 ずっと昔から?
 それは、家馴染みでもあるニゲルがいうべきせりふなんじゃないか?
 喉に小骨が刺さったような違和感は、けれどすぐに流されていった。それ以上に僕の想いの奔流のほうが強かったからだ。
 たしかな想いを。
「そりゃ、妹のコロネには、……コロンとそっくりなコロネの身体に興味がないかといえば、嘘になるよ。欲望はある、たしかに、……でも」
「でも?」
 怒っているのだろうか。剣呑な眼差しだ。
 怯んではいけない。
 でも、いうんだ!
「でも、その欲望すら上回る想いがあるってことだよ! コロンの笑顔、コロンのちょっと勝ち気なとこ、わがままなとこ、……内気な僕と正反対の魅力を兼ね備えた……、僕を補完する存在」
 補完する存在。
 ああ、それだ。
 僕がずっとずっと昔から、コロンを好きな理由。
 顔のよく似たコロネでもなくて、個性的なサリーでもなくて。
 コロンを産んだママですらなくて。
 涙が溢れてきた。
 それが真実の想いだったからだ。
 それが僕の、たった一粒の、そこにしか存在し得ない宝石の形だったからだ。
「欠けた僕とまったく同じ形をしている欠片をもっているのがコロンなんだ。それは、ほかの誰かで補えるものじゃないし、数で埋め合わせするものでもない、……どんなに相手を変えても、コロンじゃなきゃ、僕のその空洞はぴったりはまることはない……」
 あとは、言葉にならなかった。
 皮肉にも、僕は一番僕が大嫌いな雄を相手に、やっと探り当てた真実を吐露していたのだった。コロンに伝えるべき言葉を。
「ぐすっ、ぐすっ……」
「気持ち悪ぃ」
 もたらされた言葉は、僕の積年の想いを根底から否定するような、悪意と蔑視に満ちたものだった。
 けれどもう僕は屈しない。
 僕なりの引導のつもりだった。
 僕はもうこいつの屁理屈なんかに抱き込まれはしない。
「ニゲル、君はなんだか間違ってるよ」
「ああそうかよ」
 ニゲルの声は吐き捨てるようなものだった。無気力な。
「どこに行くのさ。またそうやって放浪して、自分から逃げるの」
「……はぁ?」
 心底他者を見下すような、冷酷な視線だった。何をどうすれば、ここまで他者を見下すことができるのだろうか。
「チコのところだよ」
「チコ?」
 初めて聞く名だった。
「一度抱いたら忘れられない身体をもった雌」
 薄い笑みを浮かべながらいうニゲルを、僕はぐっと睨む。
 けれどニゲルは余裕の態度で僕の渾身の一撃を受け流す。
 受け止めることすらせず。
「そしてあんたの『かりそめのパパ』がお野菜を届けにいってるとこ」
 時が、停止した。
 そのすべてが。
 申し訳程度に儲けられた、一年に数度の商談の日。数日前の、あの光景。その横に選り分けられていた、売り物にならない不揃いの野菜。けれど、栄養たっぷりで、比較的大きな形をした。
「……パパが分不相応に、その昔こさえた『過ち』だ」
 夕陽が、背中を、焼く。
 心臓の裏を。
 立ち去るニゲルの陰が濃い。
「チジョウノモツレ」じゃなかった。
 コロンとコロネには、腹違いのお姉さんがいたのだ。

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コロンとコロネの腹違いの姉妹・チコ。自傷癖がある?


■次回「千年相姦」更新は3/1(水)を予定しております。

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イラストと小説でオリジナルの世界観を表現しています。時々COMITIAに出たりもします。上の画像はたらこさんが描いて下さったものを無理やり強奪してきたものです。たらこさんいつもありがとうございます。初めましての方はこちらをどうぞ。

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