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『千年相姦』五章 最後のサフラン(8/11)

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サフランはクルルーの実母だった。けれどその記憶は永遠に戻ることはない。
サフランとの接触により、赤ちゃんのときの記憶を呼び覚まされてしまったクルルー。
時間軸は再び「授乳ごっこ」に耽溺する現在の二匹に戻ります。
彼等は一年もの間、もうずっとこんなことをしていたのですね。
けれどクルルーは、このままではいけない、と思い始めているようです。
そうして「コロンのパパ」の過去の浮気相手の正体も明らかに。
それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
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クルルー(18歳)サフラン(?)


五章 最後のサフラン(8/11)


「クルルー、気持ちがいい?」
「はい……」
 僕の頭を膝に乗せたサフランが、右手で僕の昂りを包んでいる。僕の唇は枕元に垂れ下がる彼女の乳房で塞がれている。
 治りかけの右脚は寝台に縫いつけられたまま、僕はなすすべもない。サフランの指使いが僕の先端を籠絡する。何度目になるかわからない追精へ僕は一気に導かれていく。視界の隅に、白い飛沫が無残に散ったのが映った。
「うっ、くっ……っ」
「うふふ、おいしい」
 サフランが僕の吐き出した白濁液を拾い上げて舐めている。無邪気な顔で指に絡み付いた体液を美味しそうにすくい取っている。
 もうずっと、サフランに身を任せたままだった。
 僕は寝そべったまま、サフランの乳房を存分に味わった。
 この閉ざされた暗い揺りかごの中で。
 雨は止まない。
 まるで僕たちを森という森、世界という世界から隔絶するように。
 社会的な関わりから完全に断絶された僕たちの獣穴。
 僕たち二匹だけの思考に沈み、僕たち二匹だけの精神の湖に沈み込む。
 ……もはやそこしか、行き着く世界を見いだせないから……。
 快復するに従って、僕の授乳は凶暴なものになっていった。
 サフランの乳房を下から揉みしだき、かき混ぜ、その突起を噛み千切る。
 授乳はやがて補食のそれへと変異していき甘く優しい時間は喪われていった。
 雄と雌のそれへと。
 それでもサフランはなんとかママキトゥン気分に浸ろうと、あらゆる手段を使って僕をなだめすかそうと策を講じた。けれど僕の雄の欲求がそれを許さなかった。
 ママキトゥンが僕の頭を撫でながら、僕に乳房をあてがう。あてがった隙に、僕の欲望をもう片方の手で処理する。大量の白濁液を確認して、ママはいつも微笑んでいた。
 そうして僕の勢いを一旦殺いだ後、僕に跨がり、「坊や」といいながら僕を味わう。僕をあくまで仔キトゥンへと見立てながら。
 だけどそれももうそろそろ終わりだ、と思う。
 サフランだってきっと、そのことに気付きかけている。
 ずっと一緒にいればわかる……。
 彼女は、狂っているわけでも精神が侵されているわけでもない。
 サフランはもう一人のレフィナだ……。
 そう、信じざる者にとってはお伽噺の住人、信じる者にとっては……。
 その簡単な一言、概念上の存在を僕は封じる。
 いずれ、彼女を雌として犯さなければ。
 彼女に意趣返しをするためじゃなかった。
 僕は彼女の身体の中で清算を果たし、そうして行かなければならない。
〈千年森〉に。
 僕は右脚の包帯をほどいた。
 脚は、とっくに完治していたのである。
 僕は十八歳になっていた。

※※※


「サフラン」
「クルルー、すっかり脚はよくなったのね」
 寂しくなります、とサフランが目を伏せた。
 長い黒髪が寂しげに揺れている。よく見ると、純粋な黒髪じゃないのだ。暗がりなのでずっと気付かなかった。彼女の髪は所々、灰色がかっていたところがあったのである。
「黒トラ柄、だ」
 サフランの髪をかきあげる。
「まあ、貴方と一緒」
「あのときのナイフはどこにあるの」(※レフィナの顔に傷をつけたナイフのこと)
 サフランが婉然と微笑んだ。
 けれど微笑みでかき消すことができるのだ。この雌キトゥンは。
 その過去のすべてを。情愛も『愛おしい』という感情も。体感したことのある経験すらなかったものにしてすべて呑み込んで。
「わたくし、いろいろなことが忘れっぽくて、わからなくて、いろいろのことをどんどんどんどん、忘れていきますの」
「そう、それは賢い生き方だね。賢明だよ」
「うふふ、毎日、楽しくって仕方なくてってよ」
 そう、楽しくなるためには、嫌なことをどんどん忘れていくよりほかない。都合の悪いことすべてから目を逸らして。
 でも。
「僕も貴女と一緒にいると毎日が楽しかったよ。けど……」
「出ていくのね」
「〈千年森〉に帰らなきゃ」
「まあ素敵! あすこの存在を信じているキトゥンにはほとんど出会えなくてってよ」
「みんなに馬鹿にされる?」
「はい、疑われます。嘘をついているって。狂っているって。それでも信じてくださる殿方も少なからずいらっしゃいました」
「ほら、やっぱり、豊かな恋をしたことがあったんじゃないか」
「はい、わたくし、よく覚えていないけれど、遠い過去にそんな殿方もいたような気が致しました」
 サフランの口調はあくまで柔和だ。一目みただけではそこに壮絶な過去を想像することはとても難しい。
 けれど、あったのだ。
 サフランにも。
 たとえその精神構造が余人には想像できないものであったとしても、たしかにサフランにもたった一匹の雌として誰かと恋をした瞬間があったのだ。
「その殿方はとても美しい方でした。太陽のような金色の被毛が眩しかった……」

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(※コロンのパパのことですね。パパが過去に浮気していたのは、チコのお母さん、つまりサフランです。相手悪過ぎィ!)

「──」(※クルルー、ここでチコが実姉だということに気付きました汗)
「クルルー、……本当にお帰りになられるのね」
「あ、ああ、うん。けど、もうちょっと……」
「なあに?」
「サフラン、ごめん……」
「あ……」
 僕は荷物を今一度ほどき、サフランを湿った寝台に押し倒していった。


次の更新は4/15(日)を予定しております。
2018-04-01 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 20 :
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ライブ配信的な

pixivのライブ配信見てたらやってみたくなったのでこっちで実験的にやってみました。
全部一分前後の動画なのでよかったらお暇潰しにでもちょろっとのぞいてみてください。

①線画

②パーツ分け

③塗り(目)

④塗り(ハイライトとか?)
⑤仕上げ

完成したケイは後日upしたいと思います。
ご試聴ありがとうございました。
2018-04-12 : ■ご挨拶/連絡事項/雑感 : コメント : 8 :
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『千年相姦』五章 最後のサフラン(9/11)

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サフランに拾われてからというもの、骨折を大義名分にもうずっと授乳ごっこに耽溺していたクルルー。
けれど仔どもはいつまでも仔どものままではいられない……望むと望まざるとにかかわらず。
できることならクルルーも、本当は自我なんて捨て去ってサフランの手のうちで眠りをむさぼっていたかったのかもしれません。
けれどクルルーにはレフィナがいるから、レフィナと再会するためにも、クルルーは自らの母親に清算を果たす必要を感じたようです。
クルルーにとってそれは仔ではなく雄としてサフランを犯すというものでした(どうしてそうなった)
クルルーの自立という名の怒濤の18禁展開の開幕、三回に分けてお送りします。
猫の交尾を参考にした、ちょっと痛々しいエロを楽しんでいただくというのもありですし、所々入るクルルーの台詞にも注目していただけたら嬉しいです。彼のサフランに対する複雑な気持ちを感じ取っていただければと。
それでは、18禁につき追記よりどうぞ。


【今回登場する登場人物】
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クルルー(18歳)サフラン(?)

五章 最後のサフラン(9/11)


 サフランの身体は全身が乳白色だった。青く浮いた血管に、サフランが「赤い血をもつ生き物」であることをようやく認識する。霧が肉体をまとったように、どこもかしこもふわふわとしていて、流動的で、つまりはつかみ所がなかった。
 あんなに幾度も交わったのに。
 いや、あんなの、一方的に「処理」されていただけか。仔キトゥンとしてママキトゥンに。
「ん……、坊、や」
「クルルーって呼ばないと、ここで止めちゃうよ」
「クルルー……」
 サフランは従順だった。元から素直というかなんでもいいなりになる雌だったけれど、今日は格別に御しやすかった。
 サフランはすぐに深い発情状態に入っていった。そう、サフランは発情状態に浅い、深いといったようなムラがあった。今日は今まで見たどの交配時よりも、深い発情状態、……深いせん妄状態に入っているように見えた。
 僕の脚の経過を定期的に診てくれた薬師との交配時よりも。僕を担いでここまでやってきたあの雄キトゥンとの交配時よりも。その他多種多様の、有象無象のどの雄共との交配時よりも。
「……あっ、ん……」
「甘いよ、サフラン……」
 僕はサフランの唇に自分の唇を重ねる。そのまま舌を差し込む。慣れた舌使いですぐさまサフランも舌を絡めてきた。しばし互いの舌使いの感触を愉しむ。下腹部に熱が蒸留していくのがわかった。
「はぁ……っ」
 サフランが息をつく。しばし、空気を摂取するように、胸を上下させた。舌がだらりと唇の中央でこぼれている。唇の端には唾液が滞留していた。
「はしたないよ、サフラン」
「そんなこと仰らないで……」
 抗議するように、今度は逆に舌を絡め取られる。その舌使いは僕などよりも遙かに粘着質なもので、彼女の手業の多さを思い起こさせた。僕のような若輩者の雄キトゥンなど彼女にとっては取るに足らないものなのだろう。すぐに僕は籠絡される。
「ちょっ、んっ……」
 首を傾け彼女の攻勢からできるだけ逃れようともがくも、そのたびに舌を捕えられる。あらゆる角度から待ち受ける、僕の舌のためだけに設けられた罠のようだった。
「ほら、貴方だってだらしなくなっていますわ、いけない仔……」
 なぜかその「いけない仔」という一言に背中がぞくりとする。まったく、僕も大概、歪んだ嗜癖をもっている。
 僕は唾液を拭うのももどかしく、彼女の身体に覆い被さっていった。襟元の大きく開けたサフランの衣装の隙間から牙を忍び込ませる。そのまま首筋を緩く噛んだ。
「ぁっ……」
 サフランが艶めいた喘ぎを漏らす。サフランの嬌声は癖になる。雨に濡れて初めて輝く花のように、彼女の声はいつもしっとりと濡れている。
「ねえ、痕をつけていい?」
「ああ、もっとつけてくださいな。貴方の痕跡が欲しい……」
「ほかの顧客たちの手前、差し障りは出ない?」
「わたくし、先のことなんて考えられませんの! 今だけ! だから早くっ、もどかしいわっ、もっと強く噛んで! 牙を……」
 僕は牙を喰い込ませていく。
「ああっ、い、いぃっ……」
 苦悶に歪む表情を見ていると変な気分になってくる。狩りの本能にまで伝播して、交配欲と合わさって凶暴なものに変容していく。
 角度を変え、深さを変え、間断なく牙や歯を喰い込ませていく。
「あっ、あっ、いっ、うっ……んっ」
 サフランが身をよじる。振り乱れた髪が僕の視界を塞いだ。サフランの髪束が僕の口に進入する。甘い匂いがした。それに、血の匂いもする。「ああっ、よくってよ、クルルー、血が出ている、貴方の牙が、喰い込んで……」
 止めとばかりに首元の一番柔らかい所に噛みつく。間髪入れず、頭を左右に振った。獲物を仕留めるときの動きだった。
「あああああああっ」
 サフランらしからぬ絶叫だった。
 けれど関係なかった。
 サフランにとっては痛みも命のやり取りさえも、そのすべてが快楽に還元されていくのだった。
 サフランが雌よりももっと下位に属する、獣の感受性をもった存在だったからだ。性差すら凌駕したところで彼女は快楽だけをむさぼる。雌としての悦び、というのを、それは超越していた。
「はあっ、いいわっ、このまま、殺しておしまいなさいな」
「それは、できないよ、僕が愉しむことができなくなる」
「……それなら、わたくしの命を間際まで弄んで……」
「貴女いつか殺されるよ」
 けれどそれは僕の望みでもあった。僕の嗜虐癖のようなものが増幅して僕の欲望をどす黒いものへと変質させていく。
 僕はサフランの薄い衣装を牙で切り裂いた。亀裂が入ったところから一気に縦に引き裂いていく。
「うふふ、皮を剥がされた獣のよう」
「獣のよう、じゃなくて、あんたは獣だろ」
「……そうよ」
 薄い衣装の下は、全裸だった。サフランにとって衣装はサフランの良識の皮膚に過ぎなかった。雄に良識を剥がされるためだけに、彼女は衣装を身にまとっている。
 胸の中心には、彼女の身体の中の唯一の欠点ともいえる、疵があった。(※過去、赤ちゃんクルルーを巡って〈千年森〉でレフィナと対峙したときについてしまった傷だと思われます。崖から落ちたとか、レフィナによって〈千年森〉から強制退出させられた反動でついた傷とかそういう解釈で)
 けれど彼女と相対してしまった雄は、それすらも情欲の材料として取り込んでしまう。サフランの存在感がその疵すらももう一つの性具として仕立て上げてしまうからだった。
 僕はその性具を舌を使って丹念に辿っていく。
「ああ、感じます、とても……」
「喪った罪業に震えて?」
「ええ」
「じゃあ、おしおきしなきゃ」
「ええ、ええ……」
 走った疵に爪を立てた。血がじんわりと滲む。
「足りません、もっと……」
「だけど、流血が過ぎると、僕が愉しめなくなるから」
「まあ、血はお嫌い?」
「好きだけど、今日はもっとほかにしたいことがあるんだ」
 それにチコとこういうことは散々やってきた。血を流しながらの交配はどうしてもチコを連想させる。
「……癒してあげたいんだよ」
「え……」
「ありがとう、って」
「……」
 僕はその疵にそっと舌をあてがっていった。愛撫をするというよりは、あくまで血を拭うように、傷口を舌で縫い止めるようにして。
「この疵が開いたとき、痛くなかった?」
「よく覚えておりませんの」
「そうだったね……、嫌なことはすぐに忘れてしまうんだものね」
 サフランがころころと笑った。「だから交配は大好き」「愉しいから?」「ええ、そう……」
 引き裂いた勢いで中途半端に絡み付いたサフランの衣がもどかしかった。僕は性急にそれらを剥いでいき、自らも忙しなく上半身の衣服を剥いでいった。
 素早くサフランが手を伸ばす気配があったけれど、僕はサフランの手をつかみ、それを制した。「だめ」
「どうしてっ」
 サフランが彼女にしては鋭い口調で咎めた。
「この手は僕を翻弄するから」
「……それがわたくしの愉しみなのに」
「手癖が悪いのは嫌いなんだよ」
「酷いわ、そんなふうに思っていただなんて……」
「よくいうよ、動けない僕の身体をさんざ弄っておいて」
 腕ごと脚で塞いで僕はサフランの乳房へ向かって腰を折り曲げていった。そのまま量感を味わうように手の平で揉みしだき、彼女の突起を指先で弄る。
「んっ……」
「ふふ、声が変わったね。そんなに感じる」
「あぁ……ふぁ……」
 サフランが忘我の境地に沈んでいっているのは間違いないようだった。「授乳」しているときとは明らかに反応が違う。
 思えばこうして全身を使って彼女に愛撫を施していくのは初めてのことだった。
 今のようなサフランの表情を見るのも……。
 湿ったサフランの嬌声が得もいえぬ媚薬となり、僕の耳を冒していく。
「あぁっ、ああんっ、ああんっ、あぁっ」
 サフランが首を大きく仰け反らせる。鬱血した幾つもの痕が視界に飛び込んできた。ほかの雄共がこれを見たらなんと彼女を詰るのか、想像するだけで奮い立った。
 僕はサフランの先端を口腔に含んだ。始め舌先で柔らかく転がし、次いで隙を突いた拍子に噛み付いた。
「……ぃっ」
 サフランの流動的な胸は僕の手の平には余り、僕が揉みしだくたびにこぼれ、すべてを把握するのは困難を伴った。だから溢れるたびにすくい、拾い上げ、隙間から舌や歯を使って嗜め、いさめていった。
 ちゅぷ、ちゅぷ、と信じがたいほど卑猥な音が鳴り響く。僕の唾液でサフランの乳房は濡れそぼり、ぬらぬらとした淫らな光を放ち、薄暗い部屋をいっそううらぶれたものへと仕立て上げていた。
 僕は自らの下衣にそれとなく手を掛けた。サフランが再び腕を伸ばす気配があったけれど、僕はそれを視線で制した。彼女が望んでいることはわかっていたけれど、それよりも僕の指の欲求のほうが強かった。僕の指は、ほとんど彼女の内部には疎かったのだ。
 僕は彼女を裏返し、膝に抱き抱えた。彼女の背が僕の胸に当たるような姿勢になっている。
 背後から申し訳程度に乳房をつかみ、サフランがピクリと反応するのを目の端でしっかり見届けてから、隙を突いて唐突に頸椎を噛んだ。
「グルルルルッッ!」
 サフランがらしくなく、おそらく僕も初めて聞く唸り声を上げた。
 頸椎はキトゥンの最も敏感な箇所でありそうして最も弱い箇所、急所でもあるのだ。そこを牙でくわえられると、雄雌問わずキトゥンは本能的に身をすくめてしまう。相手の行動すべてを御する行動でもあり、それを受け入れることは相手に完全に屈するということでもあるのだ。サフランのキトゥンとしての本能がそれを拒むのだろう。
 僕はサフランの初めて見せる「本物の拒絶」に、本能が奇妙な力をもっていくのを自覚した。
 この雌を、完全に屈服させてしまいたい……!


次の更新は5/1(火)を予定しております。

2018-04-15 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 11 :
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いろいろお知らせ

皆さんこんにちは。
今日はいろいろお知らせです。

まず一つ目ですが、絵を二枚描きました。
侵蝕恋愛よりケイとセイレンです。
HPとブログのトップ絵用に描きました。
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二つ目のお知らせですが、HPプチリニューアルしました。
2014年の開設当時とは活動内容も考えも大きく変わったためです。
これまでは雑多な情報すべて網羅していましたが、カテゴリを見直し、画像中心のシンプルな構成にしてみました。小説本編で語られていることをHPで語り直すのも蛇足かと思いまして。
今後は、小説世界では語られることのないビジュアル面の強化に務めていこうと思います。
なお、有料枠から無料枠に移動したため、広告が出るようになった&アドレスが微妙に変わったため、一応新しいアドレスも記載しておきます。
https://lunefleurage.wixsite.com/fleurage

三つ目、こちらがメインのお知らせになるのですが、実は目下水面下で新しいことに挑戦中です。これは、自分の世界だけに固執していた自分にとっては新しい試みで、その活動をすることで風通しがよくなっているような気がします。
といっても別に大したことではないのですが、何ぶん飽きやすい性格のため、ある程度軌道に乗ってから正式にお知らせしたいと思います。

以上です。
ここから先は最近思ったことです。

最近あちらこちらでダウンの声が聞こえてきて、ちょっと心配だったりします。季節的なものもあるのかもしれませんね。無理せずごゆっくりご静養を……と言いたいところですが、皆さんにとってきっと作品を発表することは、単なる趣味という枠を超えてライフワークに近い位置づけになっているかとも思われますので、安易にそうした考えを受け入れるのもためらわれるのですよね。
自分もそうなのでよくわかります。別に誰に強制されてるわけでもないのに、作品を作っていないと自分が自分でなくなってしまうような心許なさ。
でも、年中低空飛行の自分ですら何とかかんとか繋ぎ繋ぎやっていけてるので、皆さんだったらなおさらすぐに復活できると思うんですよね。
なんで、やっぱり繰り返しになってしまいますが、どうか今はご無理なさらずごゆっくりご静養なさって欲しいなあと思うのです。

ここまでお読みくださりありがとうございました。
2018-04-20 : ■ご挨拶/連絡事項/雑感 : コメント : 14 :
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紫蓮

掌編強化月間と称して、四月と五月の掌編は、前後編の二本仕立てでお送りさせていただきます。
これは、ブログ主が中学生の頃に考えた兄と妹の悲恋もので、近親相姦がテーマになっています。とはいっても、近親相姦ものにありがちな、性愛や禁忌に力点を置くのではなく、なぜに「家族」という共同体において兄と妹が惹かれ合ったのか、という、理由付けのほうに焦点を当てていきたいと思っております。
例によって妄想の域を出ていないのですが、書いてみると思いのほか構想が膨らんでしまったので、近日中に長編で書き下ろせたらな、と思っております。
前編は兄の紫蓮しれん視点で綴られていきます。ちなみに18歳です。
それでは、どうぞ。


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フォト/沢/足成
 
 紫蓮しれんは腰を上げ、白い息をはいた。
 蛇のようにくねくねと折れ曲がった沢が、規則正しい流れをたたえて、横たわっている。
 年中寒冷な空気に覆われた『北のむら』だが、早朝は一段と冷え込む。肌を突き刺すような冷気に手はかじかみ、血の滞留した耳は、早くも苦痛を訴えかけてきている。
 それでも水は生活の基盤になるものだから、これしきのことで弱音を吐くわけにはいかない。長に連なる家の者といえど、男子である以上、その責務から逃れることはできない。その長も急逝して久しい。母も後を追うようにして死んだ。
 紫蓮しれんに残された家族は祖母と妹だけである。
 残りの桶にもたっぷり水を張ると、紫蓮は肩荷棒かたにぼうの前後に桶を通し、肩に担いだ。
 紫蓮の足取りは重い。
 肩に掲げた桶のせいなどでは無論、ない。
 邑には妹がいるからである。
 あれと顔を合わせるのかと思うと、気が重くなる。
 皆が忌避する水汲みを、紫蓮がむしろ率先して請け負うのは、自らに責務を課すことで、内に巣食う罪状が少しでも薄まるような気がするからである。
『北のむら』の全戸に、未だ井戸が行き渡っていないことに見られるように、『北の邑』は、昔ながらの素朴な生活を実直に守り抜いている。
 それは、『北の邑』の住人が、自然の運行を大事にする一族だからだ。
 風の教えに耳を澄まし、水の流れに身を委ね、火の揺らぎに未来を灯し、土の沈黙に命を還す。
 それが『北のむら』の摂理だからだ。
 摂理とは自然にほかならない。
「自然」は絶対だ。
「自然」には逆らってはならぬ。
 逆らったが最後、紫蓮は人のみちうしなってしまうことになる。
 よりによって実の妹に劣情を抱いているなどと。
 ──どうしていえるだろう?

※※※

「兄さま」
 おかえりなさい、といって妹が駆け寄ってくる。周りは、同じく水汲みから戻った男衆おとこしと、それを出迎える女衆おんなしゅうで賑わっている。
 いつも通りの、朝の広場の風景だ。
 紫蓮しれんはそれとなく周りを見渡すと、気掛かりそうに自分を見上げる妹になど目もくれず、素っ気なくいった。
「私のことは気にしなくていい。おまえは持ち場に戻りなさい」
 兄妹二人で育ったからかもしれない、妹は、女であるという理由だけで、兄の力になれない自分を、恥じているようなところがあった。
 でもそれも事実のほんの一側面に過ぎず、本当は自分のこの態度こそが、妹を必要以上に感じやすい性格にしてしまったのだと、紫蓮は思っている。
 妹は目を伏せ、「分かりました」と小さく呟くと、女たちの輪の中に戻っていった。
 兄である自分と接しているときなどよりよほど朗らかな表情で、談笑に応じている。
 紫蓮はそれを見届けると、宅への道のりを急いだ。

※※※

「ただいま戻りました」 
「お戻りになられましたか、若長殿」
 祖母の摩耶まやが火桶の向こうから紫蓮をねぎらった。祖母の周りには数名の侍従。
 先代の長である父が、思いもかけず早く亡くなったので、祖母及びむら人たちは、父と紫蓮、両名をおもんぱかって、紫蓮を「若長」と呼ぶ。紫蓮としては少々面映おもはゆくもある。
「新月の晩はとうとう婚礼ですな、若長殿」
 もう何度目かになるか分からない祖母の言葉に、紫蓮はよどみのない口調で「ええ」といい切った。高齢の祖母が、そのことだけを生きがいにしているのを、紫蓮は承知している。むげにはできない。
桃姫とうき殿と祝儀を挙げれば紫蓮殿も無事、長じゃ。若長、などとはもう呼べなくなりますなぁ」
 ほほほ、と祖母がしわだらけの顔をさらにくしゃくしゃにして笑った。
 周りの侍従たちも続く。
「これで子を為せば『北のむら』も安泰じゃ」
「おばば様も気の早いことですこと」
 心中穏やかでない紫蓮の内心を読み取って、というわけでもないのだろうが、侍従の一人である蘇摩そうまが口を挟んだ。「若様もたじたじになっておられるではないですか」
 そのように映っているのならむしろありがたい、と、紫蓮は蘇摩そうまから汁碗を受け取った。蘇摩は兄妹二人の乳母でもある。母にも等しい、というほどではないが、幼い時分より何かと世話になっているので、敬うべき大事な人間だ、とは思う。
「ときに華漣かれん様はどちらに?」
桃姫とうき殿と一緒におるのじゃろうて」
 婚約者の桃姫とうきと、妹は友人同士でもある。
 紫蓮の顔が憂慮に曇ったが、それも火桶からもくもくと立ち上がる煙に、かき消されてしまった。
「ほら噂をすれば」
 途端、すすけた屋内に月明かりが射すようだった。
 身慣れたはずの女衆おんなしゅうですら、ほう、と息を漏らす。
『北の邑』の住人は、銀髪に紫の瞳が特徴だが、その中にあっても華漣かれんは群を抜いている。髪は月光を縫い止めたかのようなけぶった銀、瞳は紫蓮の青みを帯びたそれとは対照的に、赤みを帯びた瑠璃の紫である。
「さぁさぁ、朝餉をいただきましょうぞ」
 妹の視線を頬に感じたが、紫蓮はいつも通り何気ないふうを装って、汁碗を唇に押し当てた。

※※※

「紫蓮!」
 小動物を思わせる俊敏な動きで飛び込んできたのは、婚約者の桃姫とうきである。紫蓮は桃姫とうきを脇から抱え上げると、軸足を使って旋回した。桃姫が歓声を上げる。桃姫は小柄で軽いから、腕力かいなぢからに自信のある紫蓮にとって、このくらい、なんてことなかった。
「婚礼の衣装が届いたの!」
 地面に着地した途端、桃姫がぱっと顔を輝かせた。
「そう、よかったね」
「あまりうれしくなさそう」
「男だもの、男がそんなことで表情を崩したらみっともないだろう?」
 本当は誰よりも早く君の婚礼姿が見たいんだ、と告げると、桃姫が打ち明け話をするように、紫蓮の耳に唇を寄せた。
「見に来てくれる?」
「もちろん」
 連れ立って桃姫の宅に向かっていると、ばったりと華漣かれんに出くわした。
「華漣!」
 親友の姿を認めた途端、桃姫が華漣の元へ駆け寄っていく。年齢以上に大人びた華漣と、どうかすると年齢以上に幼く見える桃姫がそうやって寄り添っていると、母子のように見える。
「婚礼衣装が届いたの!」
 先ほどと同じせりふを妹相手にも繰り返す。続く言葉も、また同様であった。「華漣も見に来てくれる!?」
「ええ、もちろん」といって、首を縦に振りかけた華漣だったが、ふと兄の存在に気付いたように、紫蓮をうかがった。紫蓮が目顔でうなずくと、華漣はほっとしたような表情を浮かべた。「それじゃあ、お言葉に甘えようかしら」
 衣紋掛えもんかけに吊るされた婚礼衣装は、まるで白い巨鳥を思わせた。
 白地に銀糸の縫い取りが、豪華ではあるが清楚な印象を与える。鳥の翼に見立てた両袖には、羽根を模した精緻な刺繍。桃姫の、十字に腕を開いた荘厳な姿が、目に浮かぶようだった。
「きっと似合うだろうね」
 紫蓮としては桃姫に向けていったもりだったのだが、妹が横で「そうね」と同意を示した。
「そうかしら」
 当の本人はというと、気難しい顔で着物をにらんでいる。
 婚約者の異変を察知した紫蓮は、またか、と内心で息をついた。
 天真爛漫な桃姫だが、彼女は時折、妙に意固地になることころがある。
 華漣も、親友の悪癖がまたぞろ顔を出したのを感じ取ったのだろう、「何をいっているの」、それとなく桃姫をたしなめた。桃姫が頬を膨らませた。
「だってわたし、チビでしょ。チビがこんな衣装着て、衣装に着られているみたいにならないかしら。儀式のここぞ! って場面で、足を取られたりしないかしら」
「変なこと心配するのね。誰もそんなことは思わないし、儀式のときだって、きっと兄があなたにうまく付き添ってくれるわ」
 華漣が同意を求めるようにじっと見据えたので、紫蓮は仕方なく、小さくうなずいてみせた。
「それに、チビ、だなんていうけれど、あなたはむら一番の美しい女よ」
 まるで母親だ。
 おおよそ、十六歳の娘が浮かべる表情ではない。
 自分が華漣を、必要以上に聡い娘にしてしまったのだと思う。
 だが当然ながら思慮は外に出さない。
「邑一番の美人はいい過ぎよ。それに真に美しい女とはあなたのような人のことをいうのだわ、華漣。……ねえ、あなたもそう思うでしょう、紫蓮?」
 思いもかけず水を向けられた紫蓮は、とっさに桃姫を慰める言葉を持たなかった。
 二人きりのときだったら、いくらでも歯の浮くようなせりふで、桃姫をなだめてやることができる。
 だが今は、妹がいた。
 紫蓮は苦慮した末、ようよう口にした。
「今期の『雪の乙女』は君だった、桃姫」
「前期は華漣よ。それはともかく……」
 恋人の言葉に納得しかねるように、桃姫がなおも着物から目を離さずにいった。
「こういうのは、華漣のほうが似合うような気がするのよね」
「まだそんなことを……」
 華漣が眉をひそめたが、桃姫は親友の言葉には耳も貸さない。
「わたしが着ても、『ちょっといいな』で終わっちゃうのよ、きっと」
「そんなことはないよ」
 突如割って入った紫蓮に、女二人が同時に顔を向けた。
 桃姫にいい聞かせるように、というよりは、紫蓮はむしろ華漣を排斥するようにいい放った。
「この衣装は君にこそふさわしい。君は私の花嫁になる女なのだから」
 桃姫が、いつものように歓声を上げてくれたなら、言葉も宙に浮くことはなかったのかもしれない。けれど桃姫が押し黙ってしまったので、変な空気になってしまった。桃姫は照れているのだった。
 人目もはばからずやり過ぎたか、と紫蓮は後悔したが、紫蓮としてはこういうよりほかなかった。人目とはもちろん妹のことであるが、こうでもしなければ、桃姫はいつまでたっても駄々をこね続けるような気がしたのだ。
 華漣は微笑んでいた。
 兄とその恋人の、不器用なやりとりを優しく見守る、「妹」の顔に見えた。

※※※

 何度目かになるか分からない寝返りを打った紫蓮は、とうとう眠りを放棄し、表に飛び出した。
 夜気は一段と冷え込んでいた。
 だが煮詰まった思考を解きほぐすには、むしろこのくらいがいい。
 雲間の隙間から、あえかな月が顔をのぞかせている。
 あの月が闇にのまれる晩、紫蓮と桃姫は夫婦になる。
 だが、浮き足立つ周囲とは裏腹に、紫蓮の心は日に日に重くなっていく一方である。
 桃姫はああいうが、桃姫は自分が思うほど器量の悪い女ではない。
 というより、桃姫は誰の目に見ても、はっきりと美しい女であるといえた。
 肌は透けるように白く、桃姫の好奇心をそのまま写し取ったかのような紫の瞳は、生き生きと輝いている。そのくせして唇は、雪中から顔をのぞかせた毒芽のごとく、蟲惑的で妖しい。
 何より桃姫の魅力は、その肉体にある。邑の男衆おとこし共がさんざ卑猥な言葉で語り尽くしてくれた。さすがに本人にそれを伝えるのははばかられるが、それだけに、彼女を早く妻に迎え入れてやらなければならぬという、焦りも募る。
 そう、紫蓮だとて、あの美貌と肉体とを独り占めできる悦びと無縁というわけではないのだ。
 何より、自分に全幅の信頼を寄せてくれる桃姫は、愛らしくかわいい、と思う。
 それは、桃姫を何よりも「愛している」、ということにほかならないのではないだろうか。
 妹にはただの一度もそのように感じたことはないので、自分が妹に抱いている感情は、「愛している」というのとはやはり少し違うのだと思う。どだい、妹にはかわいげというものが欠けている。
 にもかかわらず、妹の何がこうも自分を惹き付けるのか。
 皮だ。
 肉だ。
 妹の心と外界とを隔てる、肉のほろに、紫蓮は魅せられている。
 紫蓮は、妹の内面になぞ一切興味がなかった。
 妹への想いが、例えば繊細な情緒の入り込む余地のあるものならば、まだしもだったかもしれない。
 紫蓮が妹への秘めたる想いに苦しんでいるのは、ただ一点、その想いが肉親に抱かざるべき、下卑たものだからだ。
 紫蓮が桃姫との婚姻に臆する一方、一方では積極的でもあったのは、桃姫と夫婦になれば、この劣情も消え去るのではないかという、淡い期待があったからだ。
『北の邑』では、婚前交渉は固く禁じられている。
「兄さま」
 獣欲が、皮膚の内側を食い破ってきたようだった。
「どうされたのですか」
 淫情が、形を伴って目の前に現れたからである。
 後ろめたさに紫蓮は、とっさに目を反らせた。
「……どう、とは……、ただ、眠れなくて、夜風に当たっていただけだ。おまえこそどうした、女がこんな夜更けに」
 妹は、気を悪くしたようだった。
「女にだって眠れない夜というものはあるのです」
 珍しくいい張る妹に、紫蓮は意表を突かれた。紫蓮同様、華漣もまた、自分一人の胸だけに想いをとどめ置くことができなくなったものらしい。こういうところは、よく似た兄妹といえた。解き放たれた矢のように、今宵の華漣は開けっ広げだった。
「昼間のことを、思い出していました。……とても見事な婚礼衣装でしたね」
 華漣がまるでそこに婚礼衣装があるかのように、闇をのぞむ。
「わたしも早く着てみたい……」
 あまりに予想外の言葉に、紫蓮もまた驚きを隠せない。
「おまえが?」
 兄の反応など先刻承知だというように、華漣が諦観染みた一瞥いちべつを兄にちらとくれた。
「興味なぞないのだと、自分でもずっとそう思っていました。外面を飾ることよりも、沢の流れに心遊ばせるほうが安らぐというような、そんな女ですから。けれどあれは別格です。花嫁になる女のためだけにあつらえられた神の衣……、まさにその言葉こそふさわしい。桃姫が胸躍らせるのもよく分かります。あれは女の本能です。わたしでも袖を通してみたくなる」
 おまえの一番美しい姿は、おまえのその裸身にこそある。
 三人で衣装を囲んでいたときから、ずっと思っていたことだった。だが紫蓮は、自分の浅はかな想いを、耳あたりのよい言葉で空虚にねじ伏せる。
「おまえもじき、その日が来る。それまで女を磨き、自己研鑽に励みなさい。良き伴侶に巡り会える、その日まで」
「伴侶……。わたしにも、そのような方に巡り会えるときが来るのでしょうか。兄さまにとっての桃姫のような、良きひとに」
 紫蓮の言葉尻を捉えるように、華漣がささやいた。もの問いたげな瞳が、紫蓮の紫の瞳を貫く。
「それは、ここで問答しても仕方ないことだろう。今日はもうお休み。夜気は身体に響く」
 息苦しさを振り払うように、紫蓮が足を返したときだった。
「兄さま」
 兄の背中を妹が捉えた。
「兄さまは寂しくないのですか」
 紫蓮の無言の問いかけに、華漣が同じ言葉を別の側面から繰り返す。
「……わたしたちが離ればなれになってしまうことです」
「大げさだな、宅を移るとはいえ、同じ邑内だ、いつだって会える」
 華漣の静かな勢いに気圧されるように、紫蓮が早口で説き伏せると、華漣が余計意地になったように、首を激しく横に振った。
「……そういう、ことではなく……、いえ……なんと申し上げればよいのか……」
 そうすれば答えが落ちてくるのではないかというように、しきりに頭を振りかぶる。紫蓮の目の前で、銀色の髪が闇に溶けて、さやさやと音を立てた。
「桃姫に、兄さまを盗られてしまうような……」
 華漣の言葉に、紫蓮は息を詰めた。なぜか自分の気持ちの一側面をいい当てられたような気がして、心がざわついた。だがそう感じたも束の間、続く言葉は、紫蓮を闇に失墜させるに十分なものだった。「桃姫に、兄を、たった一人の家族を、と……、盗られてしまうのではないか、と……。おかしいですわね、今日のわたしは……」
 つかみかけていた手を、一方的に振り離されたようだった。足元も定かではない闇に、紫蓮は一人取り残される。
 紫蓮は込み上げてくる憤りとも怒りともつかぬ感情を飲み下すように、喉を震わせた。
「不安に思うことはないよ。私たちは離ればなれになっても、血で繋がっている。私たちは」
 最後は半ばやけだった。
「私たちは、兄妹なのだから」
「ええ、ええ……、兄さま」
 涙目の妹に、笑顔が咲いた。
 紫蓮にとっての戒めが、華漣には慰めとして響く残酷。
 華漣の心なぞ欲しくないと思っていた。
 それなのに今、華漣の心が自分とは違う事実に、打ちのめされている。
 紫蓮は手が白くなるほど、拳を強く握り締めた。
 消えてしまえ。
 早く月と共に、自分のこの矛盾も、闇にのまれてしまえ。
 弧を描く月が、紫蓮をあざ笑っていた。
 婚姻の日は、着々と迫りつつある。
(2018年1月 書き下ろし/後編に続く)
2018-04-25 : ■掌編/短編 : コメント : 16 :
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