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『千年相姦』三章 クルルーの手紙 シロツメクサの花冠(3/4)

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前回に引き続きチコへ宛てたクルルーの手紙3/4です。
前回パパのことをメタクソに言っていたクルルーですが、なんでパパの内情にここまで詳しいのかその理由が語られています。クルルー、影でこんなことしてたんか……。覚えていらっしゃるかどうかわかりませんが、二章『クルルー様の冒険譚』でママとクルルーが家事を終えた後、二匹で沐浴に行くシーンがあったかと思うんですが、その裏にはこんなカラクリがありました。
それから、クルルーの「初めての相手」ですね。そのことについても触れてます。クルルーの初体験の相手はコロンじゃなくてこの人でした。
この二匹が築いていた、そこはかとない「共依存」の匂いを感じ取っていただければと。
クズ……クルルーの語りを引き続きご覧ください。それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
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クルルー(17歳)


三章 クルルーの手紙 シロツメクサの花冠(3/4)


 ああ、なんでこんな詳細を知っているのかっていうと、それはまあ、毎晩折に触れて話をしていたとは思うんだけれど、「月夜の散歩」中に、コロンのママが自分からぺらぺら喋りだすからなんだよ。あの時間帯に一匹で入浴に来るのはわかっていたからさ、興味もあって近づいてみたわけ、まあ、それなりに時間をかけて、ではあったけれど。コロンのママは一見柔和そうだったけど、警戒心が半端なく強かったから。けれど、ああいうところが逆に雄の心を駆り立てるんだ。『背後』からそういったら、コロンのママ、頬を羞恥に染めていたっけ。わかりやすい雌だった。そうして仔キトゥンを産んだ雌の身体って、癖になるんだよね。この感覚を君にも教えてやりたいよ。教えたか。間接的な方法で。君の指を口に含んでやってたあれ、コロンのママを再現していたつもりなんだ。いうのを忘れてた。
 ここの村のキトゥンは、ほんと、よそ者に対して護りが甘いんだよね。ニゲルも、……あいつ、お喋りなんだよ。のべつまくなし、会うたびに聞いてないことまで話してくるからさ、適当に相手してやっていたわけ。「君みたいな美しいキトゥンは見たことがない」っていわれるたびに、苛々させられていたものだ。
 ……誰がなんといおうと、僕は美しくも優れてなんかもいない。
 それは、今回の事態(※管理人注/ニゲル大木壁ドン突き落とし事件)だって、そのことを証明している……。
 僕は、醜い。
 中途半端な被毛の色も、僕のひねくれた根性をそのまま体現しているかのような折れ曲がった鉤尻尾も……、すべて、すべて。
 君のような、完全な黒色をしたキトゥンになりたかった。
 だから、僕の理想を体現したような、黒い髪をした君にこんなにも心惹かれてしまったのかもしれないね。初めて見たときから、初めて会った気がしなかった。まるで何年も前から知り合いだったみたいに、僕たちはすぐに気心が通じ合ったね。
 って、身体のほうが先だったけど。
 あのときは驚いたなあ。
 何せ、伏せっている僕の上にいきなり跨がってきたんだから。おかげで僕の『病気』が治ったわけなんだけれど。けれど、あんな強制的な形で自分の病気の正体を悟らされてしまうなんて、君も相当意地が悪い。
 交配に慣れてきたころに、君を極限まで追い込むような交配をするようになったのは、君に仕返しをする意図もあったんだ。
 だけど、僕の下で喘ぐ君を見ながら、ああ、君もなんだかんだで雌なんだな、って思わされたものだったよ。
 君にあんな一面があったなんて。
 ほどけた包帯から血が滲み出ていた。
 あんなの、僕じゃなきゃ興奮しないと思う。
 それは、多くの「お友達」に「引かれていた」わけだよね。だけど僕には自負があったよ。君のそうした「傷」を受け入れてあげられるのは僕しかいないって。なんでかな、手に取るように、君の求めていること、表面的な事象に隠されて埋もれていることの本質のようなものが、わかってしまうんだ。君が交配中に腕をかきむしるのが好きだったのは、それくらい激しく自分だけを見てほしい、っていう心の声だったんだよね。決して、多くの「お友達」がいっていたように「嫌がらせ」だったわけでも「あてつけ」だったわけでもない。ただ、その表現方法がねじ曲がっていただけで。
 〈千年森〉には年月を重ねすぎてねじれた樹木がいっぱいあったから、そのせいもあったのかな、君のねじれなんてそれに比べたら大したことないよ。上には上がいるものだ、例えば、〈千年森〉を創った人、とかね。
 そうそう、君がいうように、よく聞くお伽噺の一つだよ。『千年森の主』。有名なお伽噺だよね。神様たる「ニンゲン」が一人で住んでいるっていう。そう、僕はその「ニンゲン」に育てられたんだ。
『あんた孤独すぎてとうとうそっちの方向にいったのね』
っていう君の言葉は、あながち外れていないかも。
 そうだよ、チコがそういうならそういうことにしておいていいかなって僕は思ったんだ。あまりむきになって君の機嫌を損ねるのは嫌だったし。交配中は、お互いに余計なことはもち込まない、っていうのが、暗黙のルールだったしね。
 僕たちは互いが互いに、お互いにないものを与え合っていたんだ。生まれてから今まで、長い年数をかけて生成されていった大きな形をした空洞を必死に埋め合っていた。
 もっとも、僕たちの空洞は貪欲で、埋めても埋めても今度は空洞のほうが膨張していく一方だったんだけどね。
 ホント、難儀だよね。カゾクに恵まれていないキトゥンっていうのはさ。


次の更新は8/15(火)を予定しております。

2017-08-01 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 24 :
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『千年相姦』三章 クルルーの手紙 シロツメクサの花冠(4/4)

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四回に分けてお送りしてきたクルルーの手紙ラストです。
パパをめたくそ言っていたり、これでもかとばかりに自虐と皮肉のオンパレードだったクルルーですが、彼が結局この手紙で伝えたいのはこのことでした。
クルルーがチコへの想いに答えを出しています。
四章『レフィナの感想』に移行するその前に、クルルーの手紙をお納めください。
それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
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クルルー(17歳)


三章 クルルーの手紙 シロツメクサの花冠(4/4)


 ねえ、チコ。
 僕、正直いうと、あのとき、あのとき、っていうのは、君とコロンのパパが抱き合っていたときのことなんだけど、ちょっと、いや、かなり昂揚していた。
 実は……、ってやっぱりいいや。
 こんな尾籠なこと、わざわざ書き残すことないね。君にばれないように物置から出てくるのが大変だった。ま、そういうこと。
 僕の切望していることが再現されている、って思ったんだ。血の繋がった親キトゥンと、仔キトゥンが、抱擁し合っている、それも、危うい形で……。君にしては、おとなしかった、あのときの様子、……。それは、君自身が本当の意味で苛まれていたからなんじゃないかな。パパの物いわぬ「求め」に対して。もっというなら心が犯されてしまいそうな恐怖っていうか。僕は雄だから、雌の気持ちは想像することしかできないけれど、コロンのママがコロンのパパだけにすべてを捧げていたように、実は君にもそうしたいと思う一面があったんじゃないか。
 僕はそんなふうに思ったんだ。
 そうして僕は、あのとき初めて、どんなに君が振り乱れていようと、僕は一度だって君の心に僕の欲望を注ぎ込むことなんてできていなかった、っていうことに気付かされてしまったんだ。
 そう、君は、本当の意味で僕に心を傾けていなかった。
 あれは、身体の快楽に火を注いでいただけの交配に過ぎなかった。だけどいくら昂揚していたとはいっても、僕が君のパパ役を努めていた時点で、僕の直接的な影響力なんて高が知れているよね。君の頭の中ではあの「パパ」が再現されていたんだろうし、僕だって……。
 だけどあのとき、コロンのパパと君が抱擁しているときに初めて気付かされてしまったように、今また初めて気付かされたことがある。
 一度あることは二度ある、って、本当だね。
 チコ、君のことが好きだった。
 君に、恋をしていた。
 いつのころからか、僕は君の喘ぐ姿の中に「君自身」を見いだしていた。君自身に欲情していたんだよ。
 今さらだね、こんなこと。
 だけどこんなこと、らしくないというのもわかっている。
 君だってこんなのは受け入れがたいと思っていることだろう。
 だけど、安心して。
 僕、本当の本当の本当にいいたくないことは、徹底していわない主義なんだ。
 まあ、この手紙に端々にでも、それは感じられたでしょ。
 だから、君に恋してはいたけれど、「文字に残す」程度には、秘めたるべき思いでもなかったってこと。
 けど、直接君にいうのは気が引けたから。
 っていうか、矜持が許さなかったから。
 僕みたいな根性のひねくれた雄が矜持も何もないけどさ、「駆け引き」に負けた気がしたみたいなのが、嫌だったんだ。
 だけど、君の勝ち。
 今までありがとう。
 それからこれ。
 頑張って作ってみたんだよ。
 シロツメクサの花冠。
 君の黒髪に映えると思ってさ。
 で、本当はこれで「ユビワ」を作っていようとしていたことは、ここだけの秘密。失敗したんだ。つまりその程度の思いってこと。
 ユビワって知ってる?
 神様であるニンゲンが創ったものとだけ記しておく。
 今までありがとう。
 じゃあ。

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僕が恋したチコへ クルルーより


次の更新は9/1(金)を予定しております。

2017-08-15 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 20 :
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Author:canaria

オリジナルの世界観を絵や物語(小説)で表現しております。 千年相姦/ブログにて毎月1日と15日に連載中。 侵蝕恋愛/BOOTHにて随時刊行中。 空の終焉/未発表作品。

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