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『千年相姦』二章 『クルルー様の冒険譚』 第二夜 ニゲル(2)

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これまでちょこちょこ存在感だけ匂わせていた雄猫・ニゲルがついに姿を現したようです。しかも背後からの突然の不意打です。
大好きな果実を前にクルルー、油断していたのですね。へたれです。
ところでニゲルの顔がシルエットなのはなぜでしょう?(謎かけ)
雄同士のちょっとした諍いの回、長いので二回に切りました。前半戦、それでは、どうぞ。

【今回登場する登場人物】
   
         クルルー(11歳)     ニゲル(12〜3歳)


二章 『クルルー様の冒険譚』 第二夜 ニゲル(2)


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「ねえ、こんにちは」
「わわっ」
「ははっ、びっくりしすぎだって。こっち向きなよ」
「む、無理、む……無理」
「そりゃ、無理だよねぇ……」
 それもそのはずだった。
 僕はどこの誰とも知れぬキトゥンに後ろを取られ、牙を立てられていたのだった。急所を攻め立てられた僕は全身が硬直して、まったく身動きが取れない。
「あんたさあ」おどけたような口調の後、「調子に乗ってんじゃねーよ」
「……」
 ぞくりとした。
 それだけじゃない、頸椎にあてがわれた牙が、いっそう深く喰い込んできて、僕は息を呑む。
 キトゥンの牙は鋭く尖っている。
 本気を出せば、柔らかいところだったら一気に貫通してしまえる。
 僕は冷や汗を流しながら、それでも残されたぎりぎりの余白でこの事態をどう収集しようか必死に頭を巡らせていた。
 えっと、どうしてこんなことになってるんだっけ。
 交配を終えた僕は、疲労で横たわるコロンを残して、少し離れた場所に生るヌイの実の低木の前まで赴いたのだった。コロンに甘い果実を補給してあげようと思ったのだ。ヌイの実は、森ならどこにでも生っている平凡な果実の一つだったけれど、僕は腐れかけのヌイの実が好きだったので、選別するべく低木をじっと眺めていたところなのだった。
 あらかた獣にやられたのか、極端に若い実しか残っていない。
 僕は意気消沈して、コロンの分だけ持ち帰ることにしたのだ。大抵のキトゥンは、若い実のほうを好むだろうと思ったから。
 ふいに養親の声がよみがえった。
『おまえは腐りかけのヌイの実が好きな、変わったキトゥンだから』
「……」
〈千年森〉に、腐りかけのヌイの実があれほど豊富だったのは、もしかしたら……。
 養親の横顔が思い浮かぶ。
 その横顔は、微笑みの形に刻まれてはいなかったか。
〈千年森〉で獣を見かけることは少ない。絶対数が少ない、というよりは、獣のほうがおそらく姿を現すのを避けているのだ。
 レフィナの前に。
 僕は頭を思い切り振る。
 それが何を意味するのか考えるのは今はよそう。
 こうやってすぐに、何かあれば〈千年森〉とあの人のことを追想してしまう。
 そんなとき僕はいつも現実感覚が希薄になってしまって、意識が〈千年森〉に浮遊してしまうのだった。
 背後に迫っていた危機に気付くべくもなく。
 それが、今のこの事態に繋がっているのだ。
 くそっ、それもこれも、全部全部レフィナのせいだ!
 僕は瞼をぎゅっと閉じて、あてがわれた牙のひんやりとした感覚から逃れるように、意識を逸らした。
「ねえねえ、何かいったらどう? 黒トラさん」
「ひっ……」
「うっわ、『ひっ』だって。あんた本当に雄なわけ?」
「き、き、君は雄なの?」「俺がきーてんだよ」
 俺、という呼称と落ち着いた声音からも、背後に控えるキトゥンが雄であるのは疑いようのない事実のようだった。
 どうしよう、どうしよう。
 明らかに僕より強そうな雄だ……!
「あんたさあ、あれだけ派手に音鳴らしてたら誰だって気付くって」
 僕は咄嗟にコロンの鈴を思い浮かべた。
「あれ、コロンでしょ」
 あれ、と、僕のかけがえのない大事な大事なコロンのことをなんでもないようにいう。
 宝物を汚されたような屈辱に怒りが逆流してくる。
「あれっていうな!」
「うわっ」
 僕は振り返りざまその雄に飛びかかった。


次の更新は8/13(土)を予定しております。
2016-08-06 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 24 :
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『千年相姦』二章 『クルルー様の冒険譚』 第二夜 ニゲル(3)

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雄キトゥン・ニゲルに後ろを取られてしまったへたれクルルーですが、コロンのことを「あれ」といわれて一転、果敢にもニゲルに飛び掛かかっていきました。
初めてニゲルの顔を拝むことになるクルルーですが、しかし今回もニゲルの姿はシルエットのようです。それはなぜなのでしょう。
不自然な語りがいつにも増して多いニゲルの章三回目、それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
   
         クルルー(11歳)     ニゲル(12〜3歳)


二章 『クルルー様の冒険譚』 第二夜 ニゲル(3)


「ちょっ、ムキになりすぎだって、黒トラさん」
 その「黒トラさん」といういい方がまた勘にさわるのだ。コロンがいう、ちょっと甘ったるい「黒トラさん」とはまったく違う。
 こいつは僕のことを見下しているのだ。
 実際、格下なんだけれど……。
 それにしても。
 それにしても、なんだろう、この雄の美しさは。
 僕は思わず事態も忘れて、その雄の美貌にまじまじと魅入ってしまう。
 コロンに対して見とれていたのと違って……。
 本当にこれが、自分と同じ「雄」なのかと、目を疑ってしまったのだった。

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 切れ長の瞳、すっ、と通った鼻筋、酷薄そうに歪められた唇……。
 身体つきは僕と同じくらいだったけれど、幼なキトゥン時代を抜け出したばかりのしなやかな身体は、これから美しい雄に成長していくであろうことが容易に予想された。
 僕、そういえば、僕以外の「雄」を見るのなんて、こいつが初めてだ……。
〈千年森〉外周に点在する森には、こんなに美しい雄が存在するのか! それは、〈千年森〉しか知らなかった僕が初めて受けた衝撃であり、……劣等意識のようなものだった。
 レフィーも、僕がこんなふうに美しいキトゥンだったら、僕を手放さなかったのかな……。
 あの人は、僕を追い出す直前、なんていっていたっけか。
『貴様のその薄汚い中途半端な色の被毛を見ているだけで苛々する』
「……」
 つまり、文字通り本当にその通りの意味だったのだ。
「君、きれいな雄だね……、こんなにきれいな雄は、僕、見たことも聞いたこともないよ」
 というより、初めて見る雄だったんだけれど。
 それは一月前に出会ったコロンにしてもそうだったんだけれど、コロンは雌で、前提からして僕とは違う性をもつキトゥンだという先入観があったから。
 だから手放しでその美しさを受け入れることができたのだ。
 だけどこのキトゥンは……。
 でも、なぜだろう、僕は決まって、この雄のことを思い出すとき、彼の被毛の色を詳しく「再現することができない」。
 えっと、えっと……。
 うーん、どういうことなんだろう、だけどきっと、こういうことなんだろう。
 あまりに衝撃的すぎて細かなことがふっ飛んでしまったのだろう。
 うん、きっとそうに違いない。

 そんなふうにして、僕たちは出会ったのだった。
「何かあんた見てると、どうでもよくなった……」
 と、途端その雄が無気力そうな様子で身を起こした。そのまま落ち着いた仕草で衣服についた枝葉を払い落としていく。
「あんた、名前は」
「え」
「えっ、じゃねーよ。僕はニゲル」
 と、自ら名乗った。あんたは、と再度促され「クルルー……」
 と、今度こそは僕も自分の名を名乗ったのだった。
「お近づきの印に」
 ヌイの実を手の平にパタパタと落とされた。
 僕はそれを呆然と眺めていることしかできなかった。
「何がお近づきの印に、だよ」
 いつの間にか出会ったばかりの雄キトゥン、ニゲルの姿は消えていた。
 僕はヌイの実を地面に打ち捨てようと腕を振り上げ、それから思いのほか、良質な若い実ばかりであることに気付いて、振り上げていた腕を収めた。
 僕には早急にやらなければいけないことがあった。


次の更新(8/20/土)をしたら、引越の荷造りに入るためしばらくブログお休みします。
訪問と応援ポチだけはできるだけしたいと思っております! ご迷惑おかけしますがよろしくお願いします!

2016-08-13 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 25 :
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『千年相姦』二章 『クルルー様の冒険譚』 第二夜 ニゲル(4)

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今回でニゲルの回終わりです。
前回雄キトゥン・ニゲルと邂逅したクルルーですが、彼は情けないことに「逃げる」という選択肢を採ったようです。つくづくへたれです。
しかしコロンとクルルーの会話がどうも噛み合わないよう。一体、これはどういうことなのでしょう。それでは、どうぞ。


※管理人の引越のため更新は今回でいったんストップして、再開は9月上旬〜中旬からになります。(応援ポチと訪問だけはできるだけしたいと思います)ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いいたしますm(__)m

【今回登場する登場人物】
   
         クルルー(11歳)     コロン(11〜2歳)


二章 『クルルー様の冒険譚』 第二夜 ニゲル(4)


「コロン、逃げよう」
「わあ、うれしい、ヌイの実じゃない」
「うん、それ、全部コロンのだよ。それよりコロン、ヌイの実を食べながらでいいからさ、ここから逃げよう」
 と、ほかの雄に譲り受けた(形になってしまった)ヌイの実を僕は最愛の雌に捧げつつ、そんな情けない提案をしていたのだった。(※管理人注:前回のラストでからかい半分、ニゲルに渡されたヌイの実のことですね)
 まったく、意気地のない。
 だけど仕方ない。これが「格下の」雄の命運なのだ。本能で、僕は自分がどう身の振りを振るべきか、格下なりに心得ていたのだった。
「近くに、えっと、とにかく、あの、怖い雄がいるから!」
 魅力的な雄、といってしまえばコロンが興味をもってしまうと思った。だから、あえて遠回しにニゲルをそう評した。
 事実、得体がしれないことに違いはない。
「ああ、ニゲルのことでしょ」
「そう! ニゲルのことだよ!」
 って。
「えっ」
 どういうこと。
 ……どういうことなのコロン。
「まさか……」
 まさか。
 最悪の事態が僕の頭の中で妄想逞しく繰り広げられる。
 まさか、まさか。
 コロン、とっくに、ニゲルに盗られて……。
「だ、だめっ、絶対、だめっ!」
「きゃんっ、クルルー、どうし……」
 僕は咄嗟にコロンを抱きすくめていた。涙すら浮かべながら。
「やだどうしたのクルルー、突然……」
 コロンの優しい声に心がほぐされていく。だけど迫り来る「危機」が回避されたわけではない。
「だめだよ、コロン、絶対に、絶対に、絶対に、……渡さない」
 自分でも、ぞっとしてしまうような粘着質で執念深い声だった。グルルルル……と、唸り声さえ漏れ出ている。
「うふふ、ねえ、クルルー、それってもしかして独占欲?」
「あたりまえだよっ、コロンはとっても美しくってかわいくって、いやらしいんだからっ、あ、あいつにかどわかされたが最後っ、コロンは……っ」
 僕はなりふり構わず訴える。「近くにいる怖い雄」が、コロンのいう「ニゲル」と同じキトゥンであると自分で認めているようなものだった。
「いやらしいは余計だけど、でも多分、あんたが心配してるようなことは一切ないと思うわ」
 ずいぶん余裕のある話しぶりだった。僕はそのいやに落ち着いた様子に、逆に怪訝な物思いを覚える。
「ねえ、コロン、もしかして、もしかするとだけど、そのニゲルって雄とコロンは知り合いなの?」
「知り合いも何も、ニゲルはサリーのお兄さんだもの」
 匂いでとっくに気付いていたの、ととんでもないことをいう。
「えぇ!?」
「お隣なのよ」
 頭をなぜか撫でられる。なんだかうまくあしらわれているような気がしないでもなかったんだけれど、気のせいだろうか。
「パパとママとニゲルとサリーの四匹で棲んでるのよ」
「……ずいぶん、たくさんのキトゥンと一カ所に固まって棲んでるんだね」
「そりゃ、そうよ。だって家族だもの」
 だって家族だもの。
 当然のようにいう。けれど僕はコロンの言葉を咀嚼するのに少々の時間を要した。
 どうやら「家族」というのは、一つの単位であるらしかった。〈千年森〉を追い出されて、僕が学んだことの一つだった。レフィナがパパでもママでもない不可解な存在であることがわかったのと同様に。
「だ、だけど、それならなおさら、危ないよ、あんな、おっかない雄……」
 僕はあくまで「魅力的な雄」とはいわない。コロンがニゲルのその美しい容貌を既に把握していることは確定事項であったにも拘らず。
「おっかない?」
 コロンが小首を傾げる。退化しかけている三角形の耳が項垂れていた。心底疑問に思っていることが容易にうかがえるような反応だった。
「おっかないって、あんたのほうがよっぽどおっかないじゃない」
 それをおっかないだなんて、あんたって本当に見た目と中身が違うのねえ……。

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 軽やかに笑ったコロンに併せてコロロンコロロンと鈴も連動して軽快な音を立てる。
「えっ、なんて」
「だから」
 鼻先に人差し指をあてがわれる。
「あんたのほうがよっぽど怖くって……魅力的で、ぞくぞくするほど美しい……、ってことよ」
「え……」

 どういうことだろう、訊き返す間もなく、コロンに押し倒された。
 空は、夕暮れになっていた。
 夕日が僕の瞳を刺し貫く。
 コロンの橙色の髪の毛が、いっそう美しく燃え立つ。
「ね、クルルー、……もう一度……」
 ヌイの実を食べてすっかり復調したコロンが、幾度目かになるかわからない交配をせがんでくる。
 僕にそれを拒む分別なんてあるわけはなく、僕はコロンの腰を性急につかんで、身体をほぐすのももどかしく、衣服をまとったまま彼女を下から貫いていった。


次の更新は9月上旬〜中旬を予定しております。
2016-08-20 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 30 :
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【お知らせ】webアンソロジー季刊誌「carat!」vol.3 秋号 締切三週間前です

※この記事は予約投稿です。

というわけでwebアンソロジー季刊誌「carat!」vol.3 秋号、締切約三週間前ということで再度募集のお知らせです。


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webアンソロジー季刊誌「carat!」
vol.3 秋号 募集要項

【締 切】9月14日(水)
【発行日】9月24日(土)



詳しい募集要項及び応募フォームはこちらになります。
皆様ふるってのご参加をお待ち申し上げております。
ちなみに今回(も)管理人はネタ路線で参加してみることにしました。
皆様もご自分を振り返る節目として「carat! 」、いかがでしょ。
それでは、よろしくお願い申し上げます。
2016-08-27 : web季刊誌「carat!」 : コメント : 14 :
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canaria

Author:canaria

イラストと小説でオリジナルの世界観を表現しています。上の画像はたらこさんが描いて下さったものです。元ネタは最近あった某結婚します発言だと思います。もはや他力本願のプロフ欄、たらこさんいつも楽しいイラストありがとうございます。初めましての方はこちらをどうぞ。

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Nymphe(ニンフェ)名義の本家HPです。ここを見て興味を持って頂けたらこちらも覗いて頂けると嬉しいです。

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この世に居場所のない二人は、互いに何を求め、何を互いに見出したのか。
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『侵蝕恋愛Ⅱ蜜月』
ケイは路地裏で出逢った両性具有の少女の「片割れの性」に溺れ込むーー。
『侵蝕恋愛Ⅲ孤児院日誌』
ファーンは明け方の海で亡き母に瓜二つの少女セイレンに出会うーー。
『侵蝕恋愛Ⅳ恋人たちの契約』
一冊の手記がケイを過去へとからめ取るーー。
hyoshi_7.jpg『侵蝕恋愛Ⅴ歴史の花冠』『太陽の家』でケイが見たものとは。

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webアンソロジー季刊誌「carat!」(※休刊中)

素敵な作品をありがとうございました。
20160320.jpgwebアンソロジー季刊誌「carat!」Vol.1 創刊号
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20160924_2.jpgwebアンソロジー季刊誌「carat!」Vol.4 冬号

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