Information
new_01_red.gif①pixivBOOTHにて「fourteen years old 侵蝕恋愛 side storyⅠ」ダウンロード頒布開始いたしました。②pixivBOOTHにて「侵蝕恋愛Ⅴ 歴史の花冠」ダウンロード頒布開始いたしました。
③ご用のある方はこちらからどうぞ→mail_02_bla.gif

「千年相姦」登場人物とあらすじ

千 年 相 姦
「レフィー、僕たち越えよう」

養親とその仔による、
越えられざる「愛」を問う生と性のお伽噺。
160415_1.jpg


【Story】
が赤いから世界は色なのかもしれない」

そこは鬱蒼とした緑に覆われた、どこにあるともしれない〈千年森〉。
キトゥンと呼ばれる種族の少年・クルルーは、
『交配の旅』を終え、
故郷である〈千年森〉に帰ってきた。

「ただいま、レフィナ」

大人になった仔どもと、歳を取らない養親との、奇妙な共同生活が再び始まる……。




【Characters】

■クルルー
(18歳)
主人公。
「キトゥン」という私たちの世界でいうところの「猫」によく似た習性をもつ種族の少年。
〈千年森〉に捨てられていたところ、レフィナに拾われた。






■レフィナ
(年齢不詳)
クルルーの養い親。
自称「ニンゲン」。〈千年森〉の主とも。
いつも森色の襤褸に身を包んでいる。







【キトゥンとは】
猫耳種族のこと。
しかしずっとこのままの姿というわけではなく、成人に近づくにつれて「ニンゲン」に近い姿になっていく。上のクルルーに猫耳や被毛がないのはそのため。
生殖は「発情期」に左右され、発情を迎えたキトゥンは雄雌問わず『交配の旅』に出る。
また生殖行為は圧倒的に「雌」に主導権があり、雌が発情しない限り「交配」に及ぶことができない。(雌が発情しないと雄も交配体勢が整わないため)そのため雄は雌獲得に躍起になる。


2016-05-09 : about「千年相姦」 : コメント : 16 :
Pagetop

千年相姦PV1





2016-05-11 : about「千年相姦」 : コメント : 10 :
Pagetop

『千年相姦』プロローグ〜一章 帰途(1)

160509_1.jpg

大変長らくお待たせいたしました。
『千年相姦(せんねんそうかん)』連載開始です。
主人公は18歳になったばかりの少年クルルー。
『キトゥン』という、わたしたちの世界でいうところの「猫」にとてもよく似た習性を持つ種族の少年です。
『交配の旅』を終えた彼は故郷である〈千年森〉へ帰ってきたようです。さて、彼を待ち受けているのは一体誰なのでしょう。それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
   
         クルルー(18歳)    レフィナ(年齢不詳)


〈プロローグ〉

わたしのかわいい鉤尻尾(かぎしっぽ)
 ある日 大木のウロに 引っ掛かっていた
 わたしが見つけた 宝物
 わたし 指先に あなたの鉤尻尾 引っ掛けて
 棲処(すみか)の扉を くぐったの

 あなたの揺りかご 作ったわ
 丈夫な小枝に 温かな木の葉
 森中駆け回って 探したの

 あなたが 逃げてしまわないように
 わたしだけを 信じてくれるように
 わたしだけを 見つめてくれるように

 あなたも いつか 旅に出るのでしょう

 それでも ほんの一時
 わたしだけを 見つめていて
 わたしだけを 求めていて

 与えるわ
 捧げるわ
 庇護するわ

 だからお願い
 わたしだけを 見つめていて
 わたしが作った 揺りかごで

 あなたの旅が 始まるまでは
 せめて
 せめて
 ……せめて


※※※


一章 帰途(1)


 血が赤いから世界は緑色なのかもしれない。
 それが僕が長らく抱き続けてきた、僕の外部に広がる世界に対しての認識だった。
 繁る葉も、縦横無尽に絡み合う木の根も、厚い樹皮も。
 すべてが赤い血をもつ僕を浮き彫りにするかのように、緑色で構成されていた。
 森色の肌が僕を舐め尽くし、葉陰が僕の上を通り過ぎていく。風が運んできた残り香に、僕の鼻孔が震える。
「レフィナ……、レフィナ……」
 五感が退化して久しかった。けれどそれらに頼らずともレフィナの居場所は容易にわかった。
〈千年森〉が唄っている。
 おかえり、おかえりって、小枝を差し伸べ、枝を揺すっている。
 だけど、ごめんね。
 余裕がないんだ。
 森がレフィナを導いていく。
「レフィナ!」
 森色の襤褸(ぼろ)をまとったその人の背中に、僕は飛び込んでいった。



「レフィナ!」
「……クルルーじゃないか。……水が」
 こぼれた、といって、足元に転がった木桶を拾い上げようとする。
「あ、僕、くむよ」
「おまえにくめるわけがないだろう」
 胸の中で振り返ったレフィナの視線が僕の胸の先、「ああ……」、止まった。そこがレフィナの目線の上限だったからだ。
「くそっ」
 乱暴に岩場を蹴るレフィナの横で、僕はこれみよがしに川から水をたっぷりとくむ。レフィナの足先をかすった小石が僕の前をよぎった。
 レフィナが木桶を奪おうとする。「貸せ、私が持つ」「いいよこのくらい、僕が持つって」「……」
 レフィナの顔を覆う襤褸の暗闇が、ぎゅっ、と凝縮した気がした。
「……七年ぶりか」
「……レフィナ、発情期がやっと落ち着いたよ……」
「あのときの『病気』の正体がやっとわかったか」
「うん……、あのときは迷惑をかけてごめんね……」
「その前にいうことがあるだろう」
 私はおまえをそんな仔に育てた覚えはない、という。
 ああ……、僕は微笑した。
「ただいま、レフィナ」
「おかえり、クルルー」
 七年前の昨日が、今に接続したみたいだった。

160508_1.jpg
〈千年森〉イメージ 大きい絵はこちら
2016-05-14 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 20 :
Pagetop

『千年相姦』一章 帰途(2)

160509_4.jpg

『千年相姦(せんねんそうかん)』連載二回目です。
七年ぶりに〈千年森〉に帰郷してきたクルルーですが、早速養親と夕餉の食卓を囲んでいるよう。
しかしクルルーはレフィナの作る料理に難渋を示しているようです。レフィナは極度の家事音痴・料理音痴なのです。
今回食事風景、次週クルルーの入浴シーン(!)、翌々週二人の就寝シーン(!!)と続きます。
彼らがどういう生活を送っているのかとか、「ニンゲン」と「キトゥン」の関係はどのようなものなのか、とか、〈千年森〉とはどんな関係にあるのかとか、そういったことをこの第一章で伝えられたらと思います。
今回は、とりあえずレフィナのツンデレっぷりを楽しんでいただければと思います。それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
   
         クルルー(18歳)    レフィナ(年齢不詳)

一章 帰途(2)


「全部まんまの緑色じゃないか!」
「塩ならここにある」
「森をそのままもってきただけじゃないか!」
「そんなことはない、茹でた」
 といって、空になった木桶を顎で示す。
「おまえが大量にくんでくれたその礼だ」
「報復の間違いじゃないの……」
「あ?」
「な、なんでもない、なんでもない……」
 早速僕の「嫌がらせ」に対して借りは返したとばかりに、養親が食卓の向こうで得意げに小瓶を振ってみせる。
 この荒っぽい形をした大粒の塩は、レフィナのお気に入りの塩だ。なんでも「レフィナ特有の経由」で「ニンゲン」から仕入れてくるのだという。〈千年森〉外周に少し足を運べば、僕たちキトゥン経由の安価の塩が手に入るっていうのに、レフィナがニンゲン経由のその塩にこだわるのは、レフィナ自身がニンゲンだからなのだろうか。レフィナはどうしてもこの大粒の塩でなければだめなんだという。素材の味が引き立つとかなんとか。だけどそれはいい訳なんじゃないだろうか。

160512_1.jpg

「素材も何も、素材のまんまじゃないか……」
「あ?」
 レフィナの二度目の「あ?」に僕の退化したはずの幻の被毛が逆立つ。
「なんでもない、なんでもないったら」
 といって、僕はレフィナの視線をかいくぐるようにして、七年ぶりになる棲処(すみか)をあらためて見回した。
 切り株を利用して造られたキトゥン風の家は壁が丸い。木肌をそのまま活かした壁は、見た目にも素朴で温かだった。だけど主の性格を反映するかのように、内装には「遊び心」が皆無だった。せいぜい、部屋の隅っこに大量の本が重ねられてある程度だ。埃を被っていないのがご愛敬というか、この人にとってはこれが「仕舞う」ということなんだろうな。棚を設置するという発想というか、概念自体がないんだ。そのくせして花を飾ることだけは欠かさない。今の食卓がそうであるように。もっとも、壊れて使えなくなった木桶に花を放り込むことを「飾る」と形容するとしたらという話なんだけれど。
 変わらない。
 まったく、変わらない。
 この人も、内装も、そうして僕が今座っているこの椅子も。
 僕が追い出されたときとまったく同じ位置に配置してあるかのようだった。
「七年前が昨日みたいだ」
「……『僕は病気だー!』、……だったか」
「もう、レフィー! もういいじゃないか」
「昨日のことのようだ」
「……もう」
 結局、僕は僕自身がいった言葉に丸め込まれてしまったというわけなのだった。
「いつ出ていくんだ」
「え」
 緑の野菜が鈍い音を立てた。
「おい、クルルー、刺しっぱなしにするな」
 すかさずレフィナの不機嫌そうな声が割って入る。
 だけど僕は「……しばらく……っていうか、その……、できたら、ずっといたいんだけれど……」口ごもった。
「おい、勘違いをするなよ。何も追い出そうとしているわけじゃない」
 緑の野菜がレフィナの襤褸の暗がりに吸い込まれていく。食事中もこの人は襤褸を剥がすというようなことは決してしない。
「……、それじゃあ」
 期待を込めてレフィナを見つめる。
「私たちは親仔なのだから」
「──」
「どうしたクルルー。塩ならここにあるぞ」
 うん? レフィナが小瓶を傾ける。
 いらない、いいそうになるのを、僕は努めて封じ込めた。

2016-05-21 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 24 :
Pagetop

『千年相姦』一章 帰途(3)

160509_4.jpg

『千年相姦(せんねんそうかん)』連載三回目の今回は、クルルーの入浴シーンです。前回の食事シーンの直後のお話です。
彼らは湯船ではなく、湖畔で身を清めます。
この湖畔には「プリムラ」と呼ばれる水中花がびっしり根を張っています。
このプリムラの花はこれからもちょくちょく出てくるのでなんとなく頭の隅に置いてもらえると嬉しいです。
今回レフィナがデレてるっちゃデレてるかもしれない。略してデレフィナ。レフィナが頻りにいう「匂い」とは何を指してのことなのか、それとなく想像しながら読んでいただけると嬉しいです。それでは、どうぞ。
5/28追記 ブロ友のはづちさんのコメントに触発され、イラストをオンマウス仕様にしてみました。マウスを置くとクルルーが……?

【今回登場する登場人物】
   
         クルルー(18歳)    レフィナ(年齢不詳)


一章 帰途(3)


 プリムラ湖は今季、プリムラの花が満開だった。
 水にしか根を張らない花種であるプリムラが毎期根をはるから『プリムラ湖』。そのままだ。きっとレフィナが命名したに違いない。
 プリムラは、レフィナの唇の色に少しだけ似ていると思う。厚みのある、ふっくらとした、あの淡い桃色。眠るときだけ明らかになる養親の顔(かんばせ)。


5/28追記 ブロ友のはづちさんのコメントに触発され、イラストをオンマウス仕様にしてみました。
マウスを置くとクルルーが……?


 プリムラ湖はぐるりを花が囲んでいて、真ん中だけぽっかり穴が空いている。僕たちが毎日沐浴に利用するうちに、そこだけ根を張るのを避けるようになったからなのか。もしくは元から泉の中心部に根を張っていなかったからなのか。とにかく僕はプリムラ湖の中央で身を浸しながら、物思いに耽っていたというわけなのだった。
「……昔はレフィーに抱えられていたっけ」
 そうしないと僕が溺れてしまうからだ。
 幼な(おさな)キトゥン時代の常として、僕もふわふわの被毛に全身を覆われていたから、水に濡れるのは避けなければなかった。被毛が水を吸うと身体が冷えてしまう。
 だから、「一緒に入ろうよ、レフィー」とは、さすがにいえなかった。そんないかにも幼なキトゥン染みた言葉を今さらいうわけにはいかなかった。
 僕はもう十八歳なのだ。
 正確な年齢は皆無だったけれど、レフィナがそういうならそうなのだ。レフィナがいうのなら僕は十三歳にだって百歳の老キトゥンにだってなってみせる。
 つまり、僕にとってレフィナとはそういう人。
 プリムラ湖に来たのだって、レフィナに語気荒く命令されたからなのだ。
『おい、クルルー、……変な匂いがする』
 僕は赤面して湖に顔を沈める。プリムラが、びっしり根を貼っているのが、水越し映って見えた。
 匂うって、僕、そんなに旅臭い匂いがしたのかな。
 旅臭いっていうのは、もちろん、汗臭いとか、土臭いとか、そういった種類の匂いを一まとめにした、僕の造語だ。
『匂いが』
 あのとき、レフィナの襤褸越し、レフィナが蔑視するように僕を見つめていたような気がしたのは、僕の気のせいだったのか。
 ぶくぶくぶくぶく……。
 気泡が湖面に浮かんでいった。



「レフィー、上がったよ」
「ああ」
 すっかり片づいた食卓の上で、レフィナが本を片手に肘をついていた。すぐにつかつかと、床を蹴るようにして僕の目前に近づいてくる。
「あの、もう臭くないよね」
 いうや否や、臭い、とレフィナが背を向けた。次いで、自身を抱きすくめるようにして腕を回す。
「匂う」
「……」
 さすがにここまで来ると、たちの悪い嫌がらせのようにしか思えなかった。
 燭台に灯された火が、僕の憤りに呼応したかのようにぐらりと揺れた。
「あのさぁ、レフィー。僕、そんなに匂う?」
「だって、匂う」
 レフィナにしては仔どもっぽ口調だ。駄々をこねてるみたいだ。かすかに森色の襤褸が震えている。
「レフィー……?」
「悪い。……嫌な匂い、というわけじゃないんだ」
 だけど身が震えてしまうんだ、といってレフィナが自身を包む腕に力を込めた。
「気を悪くしないでほしい。具体的にどうこう匂いがするというわけじゃない」
 私の気のせいだな、といってレフィナが襤褸を引きずりながら扉に手を掛けた。「きっと私自身の身体の匂いだ。沐浴に行って流してくるさ」
 そういって、森色の襤褸が、夜になって久しい〈千年森〉に吸い込まれていった。
「あ……」
 早く帰ってきてね、という言葉をかける前に出ていってしまった。
 親に置き去りにされるのはなんとも心寂しい。
 ふいに、先ほど身を浸したプリムラ湖の光景が脳裏によみがえった。
 真ん中に佇むのは、森色が剥がれたあの人の姿だった。
「……」
 僕の内部で赤い血が逆流してくるようだった。
 僕は僕の身体に流れる血が、緑色ではなく、やはり赤いのだと、そのとき強く自覚した。


次週6/4(土)の更新は「carat!」用の記事をアップしますので『千年相姦』の更新はお休みです。お待ちかねの就寝シーンは6/11(土)から。と、その前に5/31(火)にも更新するのでよかったら遊びにきてね。よろしくお願いしま〜す(^∀^*)v
2016-05-28 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 23 :
Pagetop

『千年相姦』一章 帰途(4)

160509_4.jpg

【今までのおさらい】
〈千年森〉に七年ぶりに帰郷してきたクルルー。
養親・レフィナとの再会を喜ぶのも束の間、七年の月日は一人と一匹を大きく隔てる。
夕食を共にしていても沐浴をしていてもモヤモヤが拭えないクルルー。
そして入れ替わりに沐浴から帰ってきた養親・レフィナにクルルーは……?

皆さんこんにちは。二週間ぶりの『千年相姦』です。
今回はお待たせの就寝シーンです。
さて、これまでちょこちょこ折に触れてお話させていただいておりましたが、クルルーは「信頼できない語り手」です。
今後、彼の語りの中で特に「ここ怪しんでみて!」という所は太字で示していこうと思うので、物語を読み解く際の参考にしてみてください。
ドキドキの(?)就寝シーン、少し長いので二回に切りました。前半戦、それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
   
         クルルー(18歳)    レフィナ(年齢不詳)

一章 帰途(4)


「あ、レフィー」
 うれしさのあまり頬が緩んでしまう。そのままレフィナを扉の前まで出迎える。「どうだった」
「どうだったって、何がだ」
 沐浴後も特段変わった様子の感じられない様子でレフィナがいぶかしげに尋ねる。顎で僕を示すのはこの人の癖だ。
「プリムラ湖」
「毎日見ている。昨日と一緒だったよ」
「僕も『昨日』と一緒だったよ」
「……やられたな」
 レフィナが笑った感触があった。僕はレフィナの腕に自分の頬をこすりつけた。
「どうした」
「僕の匂いをつけてるんだよ」
「ああ、いかにもキトゥンらしい」
 レフィナが優しい木漏れ日を降らす。「私の愛しい愛しいキトゥン」
 レフィナの襤褸に鼻を潜りこませたまま、ふいに僕は涙ぐみそうになってしまった。
「よかっ……た……、嫌われたのかと、思ってた」
「嫌う? なぜだ」
「だって……」
 レフィナの腕から鼻を離した。
 だって、匂うって、いわれた。
 だって、いつ出て行くんだ、って、いわれた。
 だって、レフィーは、……。
「僕を、追い出した……」
「──」
 うつむいても、体格差からどうしてもレフィナの頭部が視界に映ってしまう。昔は、うつむいてしまえば完全にレフィナから逃避することができたのに。
 だけどレフィナの襤褸の暗がりは、何よりも雄弁にレフィナの感情の在りかを伝えてくる。今、レフィナは、レフィナにしては珍しくいい淀んでいる……。言葉を選んでいるかのように。
「だけどおまえは帰ってきた」
 たしかな想いに裏打ちされた、落ち着いた優しい声だった。
「帰ってきてくれたじゃないか」
「レ、フィ」
 レフィナが腰に手を当てる。「何も寂しかったのは、おまえだけじゃなかったと思うぞ?」
 尊大な態度だ。だけど伝わってくる感情は僕の心の襞(ひだ)をほぐすのには充分なものだった。
「レフィーも寂しかったの?」
「あたりまえだ」
 私たちは、といいかけたレフィナの言葉を僕は遮る。「僕たちは親仔なのだから」「……そうだ」
 すっ、と、襤褸の暗闇が希釈されたような気がした。僕はその暗闇が完全な薄墨になる前に、言葉を繋ぐ。レフィナに橋渡しをするように。「レフィー、今夜は一緒に寝ようよ」
「は」
 感情のこもらない、空気がそのまま漏れ出たような音だった。
 それは、そうだ。
 沐浴は自分一匹で行ったっていうのに、就寝は親と一緒がいいだなんて、詰めが甘いのにも程がある。
 僕はもう十八歳なのだ。
 だけど僕はレフィナの仔でもあるのだ。
「だって僕たち親仔なんだから……、だめ?」
「寝台の脚が折れてしまう」
 昔はそんな図体じゃなかった、といって、レフィナの襤褸が僕を仰ぎ見る。「それに匂う」
 急拵えだが寝床は別に用意してやる、と、独りごちる養親の背中に僕は張り付く。レフィナの襤褸が僕の形に沈み、襤褸越し僕たちの肌が密着した。

160524_1.jpg

「だから仔どもの言葉だよ。わからないならもう一度いう。『レフィナ、僕と一緒に寝て』」
「──」


次の更新は6/18(土)を予定しております。
2016-06-11 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 24 :
Pagetop

『千年相姦』一章 帰途(5)

160509_4.jpg

「だから仔どもの言葉だよ。わからないならもう一度いう。『レフィナ、僕と一緒に寝て』」「──」
前回思わせぶりな台詞と共にレフィナに迫ったクルルーですが、イラストを見る限りどうやらちゃっかりレフィナの隣に収まってしまったようです。
一体何が起こったのでしょう。
どうやらクルルーとレフィナの間である「取引」が交わされたようです。
今回で第一章は終わり、次週「二章 クルルー様の冒険譚」に移行します。
その前に、一人と一匹のドキドキ(?)の就寝シーンの顛末をどうぞ。


【今回登場する登場人物】
   
         クルルー(18歳)    レフィナ(年齢不詳)

一章 帰途(5)


160526_3.jpg

 身を退き剥がし「それともまた、匂うとか寝台がどうとか、そうやって僕をいじめるつもりなの。僕を七年前に追い出したときみたいに」
 はあ、といってレフィナが大きくため息をついた。少し、大仰な気がしないでもなかった。
「わかった、わかった……、一緒に寝てやるよ」
 降参したとばかりにひらひらと手を振る。
「そ、そのかわり、退屈はさせないよ!」
「いや、普通に静かにしていてくれるほうが助かる」
 幼なキトゥン時代に、僕が夜更けに目を覚まして「クルルー、クルルー」と、自分の名前の由来にもなった鳴き声で、レフィナの安眠を妨害した過去を指しているのだ。
「私は本を読む」
「だからだよ!」
 レフィナがいぶかしげに首を傾げる。
「僕の旅の話を聞かせてあげるよ!」
 レフィナがちら、と食卓の上に伏せられたままの本を振り返った。「おまえの旅の話か、……悪くないな」いや……、不敵そうに微笑んだ気配の後、「生意気になったから、『クルルー様の冒険譚』か」
「僕は生意気になった?」
 僕は焦点のずれた質問を投げかける。納得がいかなかったからだった。さっきからこんなに親の顔色をうかがっているっていうのに。
「本を読むよりもよほど退屈しのぎになる」
といって、僕の質問を素通りしたレフィナが食卓の上の本を閉じた。
「僕の旅の話は退屈しのぎなの?」
 つまり、レフィナは読み飽きた本の代わりとばかりに僕の旅の話に余興を見いだしたというわけなのだった。
 レフィナは無類の本好きなのだ。
 これは、失敗は許されない。
「僕の今までの七年間は、レフィーにとって暇つぶしなんだね……」
 僕は往生際悪く、なおも食い下がる。
「何をいう。余暇ほど人生を豊かにしてくれるものもない」
「……本当?」
 僕の旅の話は、レフィーを豊かにしてくれる?
 僕の旅の話は、レフィーにとってどんな書物よりも面白い……?
「……僕の『病気』の顛末も……」
 僕はもじもじしながら上目遣いで養親を見遣る。
「ふふ、それだと夜伽話になるな」
「よとぎばなし」
 レフィナの襤褸の奥が夜の湖面みたいに光る。「親は仔の話なら、どんな話だって愉しいものなんだよ」
「そういうもの?」
「そういうものさ」
「ふうん……」
 僕はレフィナの襤褸に手を掛ける。
「じゃあ、レフィナを満足させることができたら、レフィナの顔を見せてもらっていい?」
「──、それは」
 レフィナが露骨にいい澱んだ。
「帰ってきてから、まだ、一度も見せてもらってない。……レフィナの顔」
 それはおまえの話次第だ、と、レフィナが食卓と緩やかに区切られた寝室に僕を招き入れた。
「来い、クルルー」
 レフィナが掛布を捲る。僕は吸い寄せられるようにそこに潜り込んでいった。「やっぱり狭いところは落ち着くよ。……特に『ここ』は一番」といって、レフィナの脇の下に鼻を埋める。「いい匂いがする……」「ここはおまえの定位置だったから」
(※管理人注:クルルーは0〜2歳くらまではまんま「仔猫」の姿をしていました。こんな感じで)

 さあ、話せ、といってレフィナが燭台の灯りを消す。
「うん……じゃあ、『クルルー様の冒険譚』を始めるよ」
 僕はレフィナの横に身体を並べた。
「第一夜はコロンという初めての交配相手の雌の話だよ」


今回の話のポイントは、ベッドを共にしながらクルルーが雌の話をする、ということでしょうか。これってどうなの、みたいな。
次週から新章に入りレフィナはしばらく退場します。
これからエッチなシーンがたくさん出てくるので楽しみにしていてね!
とその前に、次の更新は6/22(水)の「carat !」発刊日です。よろしくお願い申し上げまーす!
2016-06-18 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 18 :
Pagetop

『千年相姦』二章 『クルルー様の冒険譚』 第一夜 コロン(1)

160524_5.jpg





さて、『千年相姦』新章突入です。
レフィナを満足させることができたらレフィナの顔を見せてもらうという条件のもと、自らの旅の話、題して『クルルー様の冒険譚』を話すことになったクルルー。
彼はこの七年間、どんな旅をしてきたのでしょう。
視点は11歳の彼に移行して語られていくことになります。
←この時期のクルルーの見た目は完全に「猫耳尻尾少年」です。ショタっぽく半ズボンにしとけばよかったよ(´・ω・`)
ちなみに、作中での『病気』とは「発情」のことを指しているのですが、クルルーは無知なので、自分の身に起こっていることを把握していません。それでは、どうぞ。







【今回登場する登場人物】
   
         クルルー(11歳)     コロン(11〜2歳)


二章 『クルルー様の冒険譚』 第一夜 コロン(1)


160531_1.jpg

『病気』になった僕は、大好きだった養親に〈千年森〉を追い出されてしまった。僕が病気になった途端、養親は僕を煙たがるようになった。おまえがいると目障りだとか、一緒の空気を吸っているだけでこっちも病気になってしまうだとか。
「おまえなんか用済みだ、だなんて……」
 そのときのことを思い出すと、今でも胸がきゅっ、と痛む。
 僕は胸の痛みをごまかすように、身体をひねった。初めて来た土地なので、自分の匂いを入念にこすりつけていたというのもある。
「なんだろう、この黄色い花……」
 僕が寝転がっているのは、黄色の花々が群生している原っぱだった。右を見ても黄色、左を見ても黄色、前を見ても後ろを見てもどこもかしこも黄色に占拠されているような平原だった。
「〈千年森〉とは全然違う……」
 どうやってここに辿り着いたのか、説明するのは難しい。何せ僕は、着の身着のままこの場所に辿り着いたのだから。
「あの人が僕を突然、追い出したりするから……」
 まん前の茎を注視する。この茎だけ、ほかの茎よりも橙色がかって鮮やかだったからだ。
「誰が追い出したの?」
「だから、レフィーだよ。僕の親。……血は繋がっていないけど」
「まあ」
「本当、まったく、って感じだよね。いきなり僕を叩き出すんだから……」
「どうして突然追い出されたのかしら」
「そりゃ、僕が『病気』になったか……」
 僕はバネ人形のように飛び起きる。
 目の前の橙色がかったきれいな茎が一瞬動いた!
「えっ、何、誰、えっ、どういうこと!」
「うふふ、やっと気付いたのね」
 コロロンコロロン、コロロンコロロン。
「コロロンコロロン、って、音が聴こえる……」
 コロロンコロロン、コロロンコロロン。
「コロロンコロロン」
「コロロンコロロン」
「コロロンコロロン」
「コロロンコロロンコロコロ、コロンコロンコロン、あれ?」
「うふふ、それはわたしの名前ね」
 あんたがいってるのはこの音のことでしょ。
 突如、耳元で高音域の音が鳴り響いた。
 コロロンコロロン!
「わあっ」
「うふふ、びっくりした?」
「え……」

160524_4.jpg
茶トラ柄の雌キトゥン コロン


 目の前に、見たこともないようなかわいらしいキトゥンが佇んでいた。首に巻き付けた鈴を上下に振ってみせている。さっきのコロロンコロロンは、その鈴の音色だったのだ。
「わあ……」
「なあに、わあっ、の次は、わあ……、なの?」
 そう、僕がそうなってしまったのも仕方がないのだった。僕はあまりに美しいキトゥンの姿に、目も、心も、その関心のすべてが奪われていたのだった。
「こんにちは。素敵な素敵な黒トラさん。わたし、コロンっていうの」
 見ての通り雌よ、といって、くるりと一回転してみせる。長くて優美な尻尾が鼻先をかすった。
 いい匂いがする……。
「こ、こん、にち、は、僕、……僕、クルルーっていいます……」
 あまりの眩しさについつい丁寧な口調になってしまう。どう見ても目前の「雌」は同世代のキトゥンにしか見えなかったのにも拘らず。
「やだ、どうしてそんな堅苦しいのよ。でも、とっても素敵な名前ね。クルルー、よろしく」
「よろしく……。ねえ、あの、黒トラ……、って何?」
「あなたみたいな毛色柄のキトゥンのことよ。サバトラよりも濃いのに、完全な黒キトゥンとも違うの。ありそうでないのよ、この被毛の色」
 といって、僕の尻尾の『鉤』部分をそっとつかむ。
(※管理人注:クルルーは鉤尻尾。先端が折れ曲がっている尻尾のことを「鉤尻尾」という)
「ひゃっ」
 尻尾から背筋にかけてビリビリと雷が走った。
「くすぐったいよ」
「くすぐったいだけ……?」
 コロンの緑色の双眸が僕を捕えた。「あ……」
 僕の中で『病気』がまた再発しそうな気配があった。だけど沈静化していた『病気』が、なぜこんな素敵な雌を前にしてぶり返しそうになってしまったのか、わからなかった。
 コロンの緑色の双眸が怪しく揺れていた。


次の更新は6/30(木)を予定しております。
2016-06-25 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 28 :
Pagetop

『千年相姦』二章 『クルルー様の冒険譚』 第一夜 コロン(2)

160524_5.jpg

新章第二回目です。
前回で雌キトゥン・コロンと出逢ったクルルーですが、二匹はすっかり仲良くなってしまったようです。
やがて二匹は本能に導かれるようにして互いの身体に触れていくことになります。
これから三回に渡って二匹の交配シーンをお送りさせていただきます。
今回はその前哨戦である「ニア18禁」回。無知であるが故の「エグさ」と「初々しさ」を感じ取っていただけると嬉しいです。
それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
   
         クルルー(11歳)     コロン(11〜2歳)


二章 『クルルー様の冒険譚』 第一夜 コロン(2)


160531_1.jpg

「うふふ、クルルーこっちこっち」
「待って、待ってよ、コロン」

 僕たちはそれからというもの、毎日その黄色の草原で戯れるようになった。お腹が空いたら近くの低木で果実をもぎ取って、必要なら時々小さな昆虫を取って食べたりもした。
「幼な(おさな)キトゥン時代の名残でまだまだこういうのが欲しくなるときがあるの」
「僕もだよ」
 といって、時にはネズミやモグラを捕まえたりすることもあった。
 置き去りにしてきたあの人とは大違いだ。
 手抜き料理とばかりに茹で野菜しか食卓に出さないどこかの誰かとは。(※管理人注:養親レフィナのことね)
「コロン、僕、君のことが大好きだよ」
「うれしいクルルー、わたしもあんたのことが大好きよ」
 そういって鼻先を擦り寄せあったりもした。
 時々唇と唇が触れそうになる。そのたびに、なぜか気恥ずかしい気分になった。それはコロンも同様だったようで、そんなとき決まってコロンは、彼女にしてはおとなしそうな様子で上目遣いで見つめてくるのだった。
「ねえクルルー」
「なあにコロン」
 幾度目かのおいかけっこの後、僕たちは黄色の草むらに寝そべって互いの話をした。
「あんた、病気なんですってね」
「……」
 正直に答えていいものかどうか迷った。
「心配しないで。わたしもそうみたいだから」
 コロンが形のいい眉を顰めた。
「君も病気ってどういうこと……」
 心配になった僕はコロンの額に自分の額をあててみた。特に熱くはない。僕と同じくらいの体温だ。つまり平常な状態であるように思ったのだった。
「時々、居ても立ってもいられなくなるの。お腹の中が痒くなるの」
「えっ」
 それは、お腹の中に毛虫がいるからなんじゃないの、と、僕は思ったままを伝えてみた。
「そうかしら。サリーがいうにはそれも『正常』の内だってことらしいのだけれど」
(※管理人注:サリーはのちに出てきます)
「サリー?」
「サリーよ。わたしの友達。とっても頭がいいの」
「ふーん……」
 僕はそのサリーとかいう友達のことよりも、コロンの身が心配でならなかった。
「どんなふうに痒いの」
「こう……」
 といって、取られた手をそのまま彼女の下腹部に導かれる。
「おへそに原因があるのかもね」
「そう、ちょうどこの辺りね。あんたがいう通り、おへその下辺り。ううん……、おへその、中」
 といって、コロンが苦しそうな、それでいて切なそうな眼差しで僕を見つめる。「助けて、クルルー」「コロン……」
 ぐったりと僕の胸に頭を預けてくる。幼なキトゥン時代の名残の三角形の耳が後ろに項垂れていた。辛そうだった。
「お腹に通じる入り口を探せばいいんだよ」
 いうや否や、僕はコロンのスカートの中に潜り込んでいった。

「もうっ、クルルー、いくら狭いからって、そんな幼なキトゥンみたいなこと……」
「……あった」
 僕は思いもがけず見つけた入り口にそっと指先をあてがった。
「ひゃんっ」
 コロンの形のいい両脚がビクリと跳ねた。
「な、何をしてるのっ、クルルー、そこは……」
「だ、だって、お腹の中に通じそうな入り口があったから……」
「入り口? そんなの、今まで見たことも聞いたこともないわよ。やんっ」
 コロンの声が跳ね上がった。いつもより一際高い声だった。
「やぁ……、なんだか、くすぐったい」
「だめだよコロン、脚を閉じちゃ……」
「だって……」
「こう、かな」
 ぐいっ、っと、閉じた入り口を指で開く。
「きゃんっ」
「ご、ごめんね、我慢して、もう少し進んでみるね」
 といって、僕はコロンのスカートの下で指を押し進める。
「いやぁ、クルルー、やめてっ、痛っ、痛いっ」
「ごごご、ごめん、で、でも、中から毛虫を取らなきゃ……」
「それはあんたの勝手な思いこみでしょ! もう、とにかく今すぐその指を抜いてよ!」
 がつんっ! 頭を蹴られてしまった。彼女の尖った形をした桃色の靴が僕の頭部をしこたま打つ。「痛いよっ」
「痛いのはわたしも一緒よ!」
 涙ぐんだコロンが僕をものすごい形相で睨んでいた。
 表情こそ勝ち気そうな様子だったけれど、緑色の双眸に浮かんだ大粒の涙に僕の心は大きく軋んだ。そのとき僕は初めて、僕がコロンの身体を痛めつけていたということを悟ったのだった。
「あ……ごめん、ごめんね」
 急いでコロンの頭部を撫でる。手の平ではなく、手の甲を使ってできるだけ優しく。養親が昔、こんなふうにしていたような気がする。
「ぐすっ……、ぐすっ……」
 嗚咽に肩が震えている。天真爛漫で明るくて勝ち気なコロンが、このときばかりは儚気そうに映って見えた。
 僕の内部でなぜか熱が点った。それは僕の『病気』(※管理人注:発情のこと。クルルーは無知なのでまだ自分の身に起こっていることを把握していません)の症状の一つだった。なぜだろう、こんなときに限って。
 だけど僕は身体の異変をなんとか脇に追いやって、泣きじゃくるコロンを慰めることに努めた。
「ごめん、ごめんね、コロン……」


次の更新は7/9(土)を予定しております。
2016-07-02 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 23 :
Pagetop

『千年相姦』二章 『クルルー様の冒険譚』 第一夜 コロン(3)

160524_5.jpg

お腹の中が痒いと訴えるコロンに、「毛虫がいるからなんじゃないの」と無邪気にスカートの中をまさぐっていたクルルー。思いもかけず見つけた「入り口」から「毛虫」をかき出すべく奮闘していたクルルーですが、コロンにしこたま怒られてしまいました。それが前回までの話。
ここが重要なとこなんですが、キトゥンの習性として「雌」が発情しなければ「交配」に及べないという厳然としたルールがあります。雌が発情しないと雄の身体が変化しないからです。(意味わかりますよね///)
そんなコロンがどうやらクルルーの優しいキスで「発情」したようです。
二匹の初々しい交配シーン中盤。それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
   
         クルルー(11歳)     コロン(11〜2歳)


二章 『クルルー様の冒険譚』 第一夜 コロン(3)


 僕はコロンの小さな鼻先に自分の鼻をあてた。
 それから、一瞬ためらった後、コロンのそのふっくらとした唇に自分の唇を重ねてみた。
「あ……」
 初めてコロンが僕と目を合わせてくれた。「クルルー……」
 わたしこそ取り乱してごめんなさい、といって、コロンがスカートの裾を丁寧に直していった。
 その内部には、腹部に繋がる不思議な入り口があったのだ。
 ……僕にもあるのかな。
 ふと、思い至ったけれど、あんな器官はどこを探しても僕の身体には備わっていないように思った。
 コロンじゃないけれど、あんな器官は見たことも聞いたこともない……。
 だけどとってもきれいだった。
 まるで花のようだった。
 プリムラの花のようなきつい色をした鮮紅色じゃなくて、もっと淡くてそれでいてプリムラの花より肉厚の花。
 ああ、そうだ、少しだけレフィナの唇に似ているんだ。
 脳裏に突如、僕がこんな所にいる元凶となった森色の襤褸をまとったあの人の姿が浮かんだ。
 僕は急いでその映像を頭から振り払った。
 思い出したくない。
 あんな人のことは。
「ね、クルルー、もう一度……」
「ん?」
「もう一度、して、キス……」
「きす?」
「こう……」
 コロンの唇が僕の唇に触れた。
「これ、キスっていうんだね」
「うん、そう。サリーが教えてくれたわ……」
 といって、またその雌の名を口に出す。物知りであるという、彼女の友達であるその雌キトゥンの名を。
「うっん、クルルー?」
 僕は、なんとなくだけど、コロンの唇に潜り込んでみたくなったのだ。狭い所につい条件反射的に身体を潜り込ませてしまうのはキトゥンの習性だけれど、さすがに身体全体をコロンの小さな唇に潜り込ませるのは無理だったから、代わりに舌を差し込んでみたんだ。
 僕の身体の中では、舌が一番唇の近くにあるからね。
「うっん、うっ……ん」
 ぴちゃぴちゃと、水浴びをするときみたいな湿った音が黄色の草原に響き渡った。風がそよそよと頬をよぎる。なぜかとってもひんやりと感じられた。
 それもそのはずだった。
 僕の体温が上昇していたからだった。
 三角系の耳の尖った所が熱を帯びているのがわかる。手の平にじんわり汗が滲んでいる……。それ以上に、僕たちの唇からは、まるで渓流から流れる水みたいにしとどに水が溢れ出ていたのだった。
 混ざり合った二匹の水が。
 僕は舌をどんどん押し込んでいく。薄目を開けてコロンをうかがってみると、彼女は瞳をぎゅっと閉じながら、息をするのも苦しそうな様子で僕の舌に押し潰されるがままになっていた。
 だけど抵抗しない……、さっきみたく、脚で蹴る、なんてこともしないし、むしろおぼつかないながらも積極的に舌を絡めてきてくれるふうだった。僕は彼女の口腔を押し遣っていった。
 僕たちはなぜかそのまま、どちらからともなく花畑の柔らかい下生えの上に倒れ込んでいった。

160603_1.jpg

 コロンの身体を覆う形になってしまった僕の膝先が、自然彼女のスカートの真ん中辺りに差し込まれてしまう。
 そこにはちょうど、彼女の腹部に繋がる入り口があったのだ。
「あうっ、あっ、うんっ」
 彼女の息遣いが小刻みなものになっていく。頬があんまり上気しているので、僕は心配になって彼女の三角形の耳に手を触れてみたくらいだ。
 熱い。
 僕なんかよりもはるかに熱くなっている。
「大丈夫コロン? 熱が出ているよ……」
 という僕の声も、なぜか上擦っていた。
 僕のほうもコロンに負けじと、身体が火照っていたのだった。
 あと少しで何かが瓦解しそうなのに、あともう一息で何かが足りない。
 何かが……。
 それはコロンの手に委ねられている「何か」じゃないのだろうか……。
「ああ、クルルー……」
 コロンの瞳からまた大粒の涙がこぼれ落ちる。それはコロンの白い頬を伝って黄色の花畑にやがて吸い込まれていった。
 僕は涙の筋を下から辿り、目尻に浮かぶ涙を口に含んだ。
「コロン、コロン……」
 聞いたこともないような甘い声に、自分自身驚いていた。僕がこんな声を出すことができるなんて……。
「う……ん」
 コロンが上半身をよじる。僕はそれを元の位置に正すようにして、彼女の身体を花畑に縫い止める。
「コロン、もう一度……」
 もう一度、と思ったのはなぜだったのか。
 なぜか沸き上がってくる確証めいた想いが僕をその行動に駆り立てのはたしかだった。
 彼女の鮮やかな色をしたスカートをたくし上げていく。蝶やら花やらが縫いつけられた、コロンの「ママ」特製の手作りのスカートだ。「ママ」は僕でいうとレフィナに該当する家族の一員であるらしい。もっとも、レフィナは雌でも、ましてや雄でもない存在だけれど。 
 レフィナがニンゲンだからだ。
 うっすらと浮かんだあの人の姿だったけれど、それは風に流れる雲のようにふんわり流れていき、やがて空中で分散していった。
 後に残るのは晴れ渡った青空だけだ。
 なんの曇りもない、たしかな想いに導かれるまま、僕は再び彼女の入り口に指を這わせていく。
「……濡れてる……」


次の更新は7/16(土)を予定しております。
2016-07-09 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 20 :
Pagetop
ホーム  次のページ »

プロフィール

canaria

Author:canaria

イラストと小説でオリジナルの世界観を表現しています。上の画像はたらこさんが描いて下さったものです。元ネタは最近あった某結婚します発言だと思います。もはや他力本願のプロフ欄、たらこさんいつも楽しいイラストありがとうございます。初めましての方はこちらをどうぞ。

twitter.pngpixiv.pngtinami.png

PIYO

HP

Nymphe(ニンフェ)名義の本家HPです。ここを見て興味を持って頂けたらこちらも覗いて頂けると嬉しいです。

電子書籍

pixivBOOTHにて
無料ダウンロード頒布中。

92181778233ecfa0143b8e8a1ef4a33fbe9b-f.jpg
『侵蝕恋愛Ⅰ紅き瞳の双花』
この世に居場所のない二人は、互いに何を求め、何を互いに見出したのか。
160704_1.jpg
『侵蝕恋愛Ⅱ蜜月』
ケイは路地裏で出逢った両性具有の少女の「片割れの性」に溺れ込むーー。
『侵蝕恋愛Ⅲ孤児院日誌』
ファーンは明け方の海で亡き母に瓜二つの少女セイレンに出会うーー。
『侵蝕恋愛Ⅳ恋人たちの契約』
一冊の手記がケイを過去へとからめ取るーー。
hyoshi_7.jpg『侵蝕恋愛Ⅴ歴史の花冠』『太陽の家』でケイが見たものとは。

外部リンク



banner_s.png
poplsbn2.gif
banner.gif

ブログパーツ

ブログ開始から

webアンソロジー季刊誌「carat!」(※休刊中)

素敵な作品をありがとうございました。
20160320.jpgwebアンソロジー季刊誌「carat!」Vol.1 創刊号
20160524.jpgwebアンソロジー季刊誌「carat!」Vol.2 夏号
20160924_1.jpgwebアンソロジー季刊誌「carat!」Vol.3 秋号
20160924_2.jpgwebアンソロジー季刊誌「carat!」Vol.4 冬号

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム