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『千年相姦』八章 七年前 親仔喧嘩の始まり(2/12)

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七年前の十一歳クルルー視点の第2回目です。
誰しもがあることだと思うのですが、人間の世界でも両親の「あは〜ん」な場面を目撃してしまったら気まずいものなのだと思います。
それが血の繋がった父母だったならともかく、血の繋がりのない「美しい(若い)」養親だったら……?
そして相手が血の繋がりがない上に得体のしれない「バケモノ(クルルー視点)」だったら……?
心理学的に男の子は母に性愛感情を抱き無意識に父親を敵視するのだそうです。ただ、それらの衝動は無意識に押さえ込まれ、かわりに男の子は父親と同じ立場に立とうと父親をモデルに「男らしさ」を獲得していくようになるのだそうです。そして「男らしさ」を獲得した頃には母はもう老い、代わりに周りには魅力的な若い女の子がわんさかむらがっていると。そうして人は「家」を飛び出し「外」に向かっていくものなのかもしれません。
クルルーも一応「外」に飛び出していったのですが、ご存知の通り彼は相当旅先でこじらせてましたし、あろうことか片親違いの姉とそうとうは知らず同衾、母、サフランにいたっては相手が母とわかった上で意図的に交配しています。(これは彼なりの清算のためでしたが)。
いかんともしがたい因縁、外に飛び出そうとしても飛び出せないクルルーの歪みというか因縁? を題名の「相姦」に込めていたりするのですが、そんなこんなで彼は結局〈千年森〉に「還って(帰、ではない)」きてしまっています。
……とまあいろいろ書いてしまいましたが、こうしたことを踏まえてお読みいただくと、canariaさんが伝えたいことがより理解していただけるのかな、と。
あと、八章は基本的に下の動画↓みたいな流れを汲んでいるのでもしお手すきでしたらお暇つぶしにでもご覧になってみてください。

さて前回キャトルミューテーションのごとく空に吸い込まれていったレフィナですが、なんてことはない、巨大樹に持ち上げられていたのでした。
それでは、どうぞ。



【今回登場する登場人物】
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クルルー(11歳)レフィナ(年齢不詳)


八章 七年前 親仔喧嘩の始まり(2/12)


「……樹?」
 なぜ、それが視えたのか。
 それはレフィナをずっと注意深く見つめていたからなのか。レフィナの身体を、本体を、本体たる淡い色をした桃色の肉を、狩りの本能でもって注意深く観察していたからなのか。
 レフィナは空に吸い込まれていったのではなかった。
 レフィナは圧倒的質量をもった一本の巨大樹に持ち上げられていたのだった。
 ぽっかり空いていた平野の穴は、ちょうど巨大樹の幹と同じ太さだった。野太い根を頑健に地に張っている。若い木々たちが恐れをなしたようにさわさわと幹を泳がせた。
 ぬらぬらと、巨大樹が湿り気を帯びてくる。遠目にも明らかだった。巨大樹が樹液を内側から送り込んでいたのだった。その表皮に。
 あんなの、昆虫たちに一気に群がわれてしまうぞ……!
 僕はこんな場面でなぜか日常的な光景を思い描いてしまう。目の前で繰り広げられている光景は、こんなにも非日常的な光景だったにも拘らず。
 違う、日常離れしているから、日常しか知らない僕の頭がついていけず、語るべき言葉をもたずこんな平凡な発想になってしまったんだ。
 心はこんなにも目の前の光景に捕われているっていうのに。
 それをうまく表現できる術がないのだ。
 レフィナの身体は巨大樹の中腹辺りにあった。異様な白さなのですぐに気付いたんだ。そこに、繭みたくひっそり座っている。
 座っている……?
 僕は目を凝らす。
 違う、跨がっているんだ。
 跨がる、と反芻した途端、脚の付け根に違和感を覚えた。レフィナの身体と自分の身体を重ね合わせて見ていたからかな。なぜか感じたことのない、痛覚とも掻痒感ともいえない奇妙な感触を覚えたんだ。
 そうだよね、ちゃんと身体を固定しないと、落ちちゃうもんな……。だけどどこかで、あんな座り方なんてしなくても落ちずに済む方法はあるのに、とか、あんなに大きく脚を開かなくても座る方法はあるのに、とか思っている自分がいる。
 それも、裸で。
 あんな固い幹に柔らかそうな肉体を押し当てて、レフィーは身体が痛くないのかな。
 ……固い幹と、柔らかい肉。
 あれ、なんだ、これ。
 なんだか、すっごくすっごく嫌な感じがした。
 なんだろう、吐き気がする。
 うっ。
 僕は思わず口元を抑える。
 せり上がってくる嘔吐感をなんとか抑え、目の前の光景を見届けようと必死になって目を見開く。
 これで、レフィナの裸の身体が、まだしも固そう、とか逞しそう、とかだったら、ここまで変な感じにはならなかったと思う。逆に、巨大樹がもっと細くてしなやかな幹だったら、それもなかったと思う。
 巨大樹とレフィナが、拮抗するかのように、正反対の外見を有していたことが『赦せなかったんだ』。
 許せない。
 そうか、僕は目の前の光景を許していないのか。
 こそこそ覗き見ているくせに。
 こそこそしているのはそれは、えーっと、僕なんかがしゃしゃり出ていい場面じゃないと思ったからだ。
 そうか、これは邪魔しちゃいけない光景なんだ。
 でも、許せない。
 でも、見てたら許容してることになるし。
 どうすればいいかわからなくなってきた。
 だけどどうしても引き返すことだけは嫌だった。
 嫌だけど、引き返すよりはましだ。
 ……ずっと、まし。
 だからこの光景を目に焼き付けよう。
 そうして「終わった」ら、すぐ一目散に帰るんだ。
 あの日常に。
 こんな桃色の表皮をした養親じゃなく、トカゲみたく鎧った養親の元へ。
 なんだか悲しいな、僕の養親は殻を被っていたのか、僕の前で。
 そんなことを思いながら、僕は殻を破った養親を食い入るように見つめた。
 ぬらぬらとぬめっていた巨大樹が、これまたぬらぬらとぬめった腕をレフィナの胴体に伸ばした。レフィナの胴くらい、いや、それ以上の太さの腕だ。それがすぐさま分かたれて、細い枝みたく幾筋にも分かれていく。
 細い枝が寄り集まって卵みたくなってレフィナを覆った。そうしてすぐにその枝でできた卵は割り開かれた。
「……!」
 次の瞬間、レフィナは全身をその枝に拘束された姿で出てきた。手首を、足首を、首を、腰を、脚の付け根を、レフィナの身体の、とにかくなんていうか「へっこんでる」ところに巻き付けられていたんだ。そのぬらぬらした触手を。
 捕らわれた蝶みたいじゃないか!
 その普段〈千年森〉で見る、自然界の掟を模倣したみたいな光景に、服の下の申し訳程度の被毛が逆立つのを自覚した。これって、これって、とってもとっても危機的状況ってやつじゃないか!
 ということは、巨大樹は大きな巨大蜘蛛だったのか。そう思って見てみると、あの触手は八本の禍々しい脚に見えなくもない。そうやって美しい蝶をあいつら補食するんだ。あんなにきれいな織物を作る昆虫のくせして、あいつらやることがえげつないんだ。
 けど、レフィナだって相当……。
「レフィナだって、相当、えげつないよ……」
 ぽそり、と思わず口に出して呟いていた。


次の更新は12/1(土)を予定しております。

2018-11-15 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 8 :
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『千年相姦』八章 七年前 親仔喧嘩の始まり(1/12)

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「そこで……見た。〈千年森〉の『本体』と交わる、あなたの姿を……」
新章突入です。
謎の多い「自称ニンゲン」の養親とキトゥンの少年の確執は七年前から始まった。
八章の前半は七年前の十一歳クルルー視点で語られていくことになります。
十一歳のクルルー少年はずっと疑問に思っていました。
養親はいつも夜明け前にベッドを抜け出すのです。
そこで彼は幼いなりに策を講じます。
睡眠前の水差し(レフィナの特製スイミンヤク入り^^;)を飲まず養親の後を尾けてくことにしたのです。
なんとか養親に追いついた彼がそこで見たものは……。
拙い描写ではありますが、幼い少年のそこはかとない「性の目覚め」を感じ取っていただければ幸いです。
それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
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クルルー(11歳)レフィナ(年齢不詳)


八章 七年前 親仔喧嘩の始まり(1/12)


 僕はいつも僕より先に目覚める養親に不満を覚えていた。
 もっと一緒に寝ていたいのに。
 大好きな養親と、一緒に朝を迎えたいのに。
 なのに、あの人は、いつもいつも何をするでもなく僕より先に起きている。そうして涼しい顔をして「起きたか」と離れから僕に声をかけてくるのだ。
 僕はレフィナの寝ぼけた顔を見たことがない。
 レフィナのまどろむ姿を見たいのに。
 レフィナの弱みのようなものが欲しい。
 そんなことを思う日々が続いた。
 見上げるだけじゃなくて、もっともっとレフィナをいろいろな角度から見てみたい。
 たとえば俯瞰することで、レフィナの全容をその目に納めてみたいというような。
 だから、ある日、僕はいつも儀式みたく飲まされていた就寝前の「水分補給」の最中にずるをした。飲み込んだふりをして、寝台の下に隠しておいた水桶に戻しておいたんだ。あとはその水桶をまた寝台の下に隠しておけばいい。
 レフィナが身を起こす気配は、ある刻限になると突如訪れた。
 まだ、朝にもなっていないのに……。
 緊張していたのが幸いしたのか、僕は深い眠りに落ちることもなく、レフィナの気配を捉えることに成功した。
 襤褸を用心深そうにまとって出て行く養親の後を尾けていく。僕のほうが気配を忍ばせるのはうまいはずだ。だって僕は森を棲処にするキトゥンなんだから。
 とことことこ。
 歩いてく。
 すたすたすた。
 レフィナの歩みは淀みがない。
 しゅっとしててかっこいい。そういう所も大好きだよ、レフィナ。だけど完璧すぎてちょっと怖い。もっとレフィナの優しい顔をたくさん見たいよ。
 レフィナともっと親しくなりたいよ。
 僕ははやる気持ちを抑えて慎重にレフィナの後をついていった。
 そこはなんの特徴もないいつもの〈千年森〉の光景だった。
 ただ、苔蒸したところと違って、そこだけ平原に近くなっている。木々も比較的細くて、見通しがいい感じ。そこだけ穴がぽっかり開いてる感じ。森が、そこだけ丸く切り抜かれていたみたいなんだ。
 ざっ……。
 風が吹く。
 レフィナの森色の襤褸が脱ぎ払われた。
 襤褸が風で捲られて僕の視界を防ぐ。
 次に森色のカーテンが捲られたとき、そこには羽化したばかりの蛹のような、半透明の生き物が佇んでいた。
(※以下、レフィナの裸の描写が続くのですが、当時の文章が分かりづらすぎてすみません。とにかくレフィナの裸の後ろ姿を見てるんだ! と想像していただければと思います笑)
「……」
 僕は目を見張った。
 あれはなんだろう。
 あの、透明で、向こうが透き通って見えてしまいそうなほどに薄い桃色をした物体は。
 ぼうと光って見えているのは、それが光を放っているからではない。そうじゃなくて、周りの無彩色に比較して、あまりにその物体が白すぎたからだ。だから光っているように見えたんだ。何かの目印になるみたく。
 何の目印?
 何に対しての?
 その半透明の物体が両腕をかざす。それにつられて、それに付随していた「被毛」が揺れた。(※髪の毛のことですね!)
 あ、これ、レフィーの髪だ。
 先っぽだけ色素が申し訳程度についているんだ。膝の辺りまで伸びている。レフィーの髪って、こんなに長かったんだ。
「え……」
 口を塞ぐのも忘れて思わず声を放っていた。
 レフィナの脚の付け根、つまり、お尻が見えたからなんだ。
 わわわっ。
 僕はなぜか視界を防ぐ。
 べ、別に見てもいいじゃないか。
 親の身体なんだし。
 親の……。
 親、なのかな、あれって。
 僕は再び指の隙間からレフィナの身体を盗み見た。
 なんだか懐かしい気もするけれど、けど、懐かしさと同時にその身体に緊張感も覚えた。
 懐かしいって、もっと穏やかで手放しで受け入れられる感じじゃないか、温かくて。
 けど、目の前に広がるレフィナの後ろ姿は。
 風に舞う隙間から見える腰、腰から続くお尻、そこを見たときまた僕は、わわっ、となって視界を塞ぐ。けれど、きっちり指の隙間から見るんだ、その盛り上がった白い肉を。
 肉。
 そう、肉、みたいなんだ。
 時々、本当に時々、申し訳程度に食卓に上がる、僕の好物の肉。僕が耐えきれず、自分で狩りをしてきて「焼いて」ってお願いするんだ。生のほうが好きだったけど、レフィナと一緒に食べたかったから。レフィナはニンゲンだから生肉がだめなんだ。
 肉が、ある。
 食べたいな。
 タベタイタベタイタベタイ。
 僕は身を乗り出すようになっている自分に気付く。距離を測って、下半身をもじもじさせている自分に気付く。
 もじもじ。
 そう、さっきから両脚ががくがくして落ち着かない感じ。震えて、頼りなくて、でも奇妙な緊張感だけが僕をしっかり支えてくれている感じ。
 タベタイ。
 けど、我慢しなきゃ……。
 そうしないと見つかってしまうから。
 でも、見つかってしまうからだけ、なのかな。もっと大きな理由があるんじゃないかな。なんでそんなことを思うのかな。今夜の僕はやけに頭が回るぞ。思考の階層がどんどんどんどん、沈んでいく感じ。ぶくぶくぶくぶく、沈んでく。プリムラ湖にいつも顔を埋めているときみたく、ぶくぶくぶく。そこには見慣れている風景の「根っこ」が見えるから、だから、好きだ。だから僕はプリムラ湖に沈む。その本体を見たくて。
 今目の前にいるレフィナの本体はなんなのかな。
 ああ、このお尻でもって、それでいて肉全体なんだ。
 この白い肉体がレフィナの本体だったんだ。
 そっか、だから、森色の襤褸をまとってるんだ。
 トカゲみたく変装してたんだ、あれって。
 そんなことを唐突に思いついた。
 擬態だったんだ。
 擬態、だなんて、難しい言葉、どうしてすらすら出てくるのかな。だけど根っこを引き寄せるとどんどん次の根っこが引き寄せられてくる。いつしかその根本、土と茎の境界線に辿り着くときも近い。
 レフィナの中心から、ずん……と地響きのような音がする。でも、鳥たちが騒いだり獣たちが走り出す気配は皆無だ。ただ、レフィナの髪だけが揺れている。竪琴みたいに風を奏でている。
 レフィナの身体が空に吸い込まれていく。
「えっ」
 レフィナが神様に攫われちゃう、どうしよう、と、咄嗟に思った。ニンゲンがいるという空の上へ。
 だ、だめだよだめだよだめだよ、レフィナ!
 空へ行かないで!
 僕を見捨てないで!


次の更新は11/15(木)を予定しております。
2018-11-01 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 16 :
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『千年相姦番外編/前編』

十回目となる掌編は、すみません、『千年相姦番外編/前編』です。しかも前編とある通り十二月まで前中後と三回に分けてお送りします。ただでさえ本編がややこしいのに並行して外伝もプチ続き物とかすみません。
言い訳すると、九月分までは一月にまとめて書いていたのでストックがあったのですが十月から十二月分までのストックがなかったのでした。
で、イラスト本を並行して作ってることもあって小説に時間をかけることができなくて(精神的にも物理的にも)、でもここまで皆さんに付き合ってもらったのにそれを十月で辞めるのも嫌だったので、苦肉の策で一つの話を三回に分けたのでした。題材は、前々からぼんやり考えていた千年相姦のとある人物のサイドストーリーで。
覚えていらっしゃるでしょうか、外伝の主人公は「コロンのパパ」です。
そうです、妖艶な美女、サフランと浮気した挙句チコという娘までもうけてしまったあの「パパ」のことです。
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コロンのパパサフランコロンチコ
本編では「コロンのパパ」という極めて記号的な符号としてしか登場しませんでした。
また、それは意図的なものでした。
三回に分けたこの外伝ではその「パパ」がその昔、なぜサフランと浮気してしまったのか、ということに焦点が当たっていくことになります。
正直、あまり掘り下げをしてないので内容すっかすかなのですが、男の人(雄)あるあるが描けていたらいいなと思います。
時系列としてはコロンやクルルーが生まれるずっと前、パパの奥さんはコロンを妊娠中で幸せの絶頂期かと思いきや、内情はどうやらそうではないようです。ママは、マタニティブルーがひどくてどうやらあまりパパを構ってあげられてないようです。
お話はそんな日常からスタートします。
それでは、どうぞ。


「やあ、●●さんのところのパパじゃないか。おなかの仔の調子はどうだね」
「おかげさまで、順調です」
「そうかそうか、よかったよかった」
 仔は村の宝だからな……。
 老キトゥンの後ろ姿が見えなくなるやいなや、『パパ』はため息をついた。
 まただ。
 また『パパ』と呼ばれた。
 ──という名前があるのに。
 ちなみに●●というのは妻の名だ。
 最近は妻を●●と呼ぶこともなくなった。
 もっぱら「ママ」とか「お母さん」と呼んでいる。
 人のことはいえないな、と『パパ』は自嘲気味に唇を歪めた。
 いつの頃からだろうか、●●があまり笑わなくなったのは。
 理不尽な怒りを『パパ』に一方的にぶつけるようになったのは。
 そして何より。
「おいしいご飯が食べたい……」
 妊娠してからというもの、つわりを理由に妻は流しに立つことすらままならなくなっていたのだった。

※※※

 とぼとぼと帰路をたどっていると、憂鬱な『パパ』の気分に追い打ちをかけるかのように、突如背後から雨足が迫ってきた。
『パパ』は急いで足を走らせた。
 足を運ぶたびに泥が跳ねて、いっそう『パパ』をげんなりさせた。
 ろくに前も見ずに駆けていたからなのか、雨で視界が遮られていたからなのか。
 気付けば『パパ』は今まで見たこともないような森に迷い込んでいた。
「いつのまに村の外に出ちゃったかな……」
 村の境界線を越えた感覚はなかったのだが。
 ひたすら突き進んでいたら、知らぬうちに大路を外れていたということもあるのかもしれない。
『パパ』は目を凝らした。
 視界の先に何かがたたずんでいるのが目についたからだった。
 じり、後ずさる。
 幾分警戒もしていた。
 こんな森に出没するのは凶暴な獣か山賊と相場が決まっている。
 だが。
『パパ』は目を見張った。
 そこにいたのは、一匹の黒髪の雌キトゥンだった。
 見慣れぬ異国風の着物を身にまとった、しかもとびきり美しい。
 雨を吸いながらしっとりとそこにたたずんでいる……。

※※※

 どうしてこんなことになったのか。
「濡れた服をお脱ぎになって」
『パパ』は黒髪の雌キトゥン──名をサフランといった──の宅に招き寄せられていたのだった。
「すぐにおいとましますから」
「けれど風邪をひいてしまいますわ」
 ね。
 気遣い以外何も感じられない声音に、『パパ』は半ば成り行きで上着をサフランに預けていた。
 代わりにサフランが与えてくれた毛布に身体を包む。
 温かい。
 久しく感じることのなった「雌の優しさ」に、『パパ』は一抹の安らぎを感じていた。
 サフランの宅は、『パパ』がこれまで見たこともないような調度品で固められていた。
『ママ』は白と自然素材を基調とした家具で居間を彩っていたが、サフランは……。
 ちぐはくで、強引で、それでいてその主張の強い一つ一つが奇妙な調和を保っているような、不可思議な空間を作り上げているのだった。
「顧客の一匹の殿方がくだすったものなの」
 怪しげな石像をサフランが示した。『パパ』がずっと眺めていたものだ。「繁栄を願って作られたものなのですって」
『パパ』はさっと顔を伏せた。
 よく見ると石像は雄の生殖器を模していたのだった。
『パパ』はなぜ自分がとっさに少年のような反応をしてしまったのか、その理由に薄々感づいていた。
「あなた、どこからいらして?」
 サフランが『パパ』の頰を包み込む。
 このキトゥンだ。
 このキトゥンから感じるむせるような雌の匂い。
 有無をいわせぬこの雌の強引な誘引力に、『パパ』は当初から危機感を抱いていたのだった。
『パパ』はこの雌がどういった種類のキトゥンであるかを薄々察していた。おそらく雄キトゥンに依拠することで生計を立てているのだ。(このいい方はひどく婉曲な表現であるといわざるを得なかった)
『パパ』はそうした雌に特段差別意識を持っているというわけではなかったが、『パパ』の倫理観がここに長居することを許さなかった。
『パパ』はキトゥンの中ではとりわけ「堅物」で通っていて、妻以外の雌とどうこうなるというようなことなどさっぱり考えられなかったのだった。
「あの、やっぱり、さっきの服返していただけますか、妻が、待ってるんです、……身重の」
 案の定、場は水を打ったように静まり返った。
 自分の立場をはっきり示すためにもそう伝えたのだが、親切をむげにしている気がしないでもなく、心が痛む。
 しかし次の瞬間サフランの口からこぼれ出たのは予想だにしない言葉だった。
「まあっ、すてきっ!」
 少女のようとすらいえる無邪気さでサフランがはしゃいだ。
 仔は宝だわ、と村の老キトゥンとまったく同じことをいいおいて続ける。「わたくしも何度も何度もそうやって命を繋いできたの。でもわたくし、数年前に赤ちゃんを産んだきり、最近はずっと産んでないの」
『パパ』はそれとなく後じさった。
 この部屋に「赤ちゃん」がいる気配なぞ微塵もない。
 嫌な予感はやはり的中していた。
 この雌は危険だ。
 ……もしかすると狂っているのかもしれない。
「ねぇ、あなた」
 サフランがシュッと着物の帯をはだける。
「わたくしに赤ちゃんをくださいな」
 仔を身ごもっていない雌だけが持ちうる、すんだ色の胸の突起とくびれた腰がそこにあった。
 思考が急速な勢いで渦を巻く。
「妊娠中のママ」ときたら乳房も黒ずんでいて腹も突き出ていてへっこんでいるところなんて一つもなくてそのくせ怒りっぽくておまけに畑作業で疲れた『パパ』のためにおいしいご飯すら作ってくれなくて野豚のような身体の今の妻の利点ときたらその家事能力しか取り柄はないというのにそれすらままならないなんて。
「きゃあっ」
 ここで少し遊んでいくのもいいかもしれない。

 幼女のように無邪気な声をサフランが上げたのと、『パパ』がサフランを寝台に押しやったのは同時だった。
 もやがかかったように思考がかすみがかっていた。
 こんなどう猛な雄が未だ自分の中に潜んでいたことに、『パパ』自身が一番驚いていた。
 穴を掘り進めるように『パパ』は無我夢中でサフランの身体をむさぼっていった。
(2018年9月 書き下ろし/中編に続く)

2018-10-25 : ■掌編/短編 : コメント : 14 :
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イラスト本進捗 弱音吐いてるのでちょっとご注意ください(;;)

今回は周辺機器の話と、ちょっと弱音です。

九月から取り組み始めたイラスト本製作ですが、いざ取り掛かってみるといろいろ不備があることが分かり、画材を始めデスクライト、果てはスキャナやプリンタの購入に追われていました。
そういう意味で九月はイラスト製作というよりは主に準備に追われていたことになるのですが、その分十月は遅れを取り戻すように作品製作に集中し、おかげでほぼほぼ、予定通りに進行しているといえそうです。

さて周辺機器の話ですが、以前はスキャンはCanonの複合機で行っておりました。
その複合機がだいぶ前に壊れていたので買い替えを検討していたのですが、次もスキャンは複合機で行おうと思っていたのです。
でもいろいろ調べていくうちに、スキャンには「スキャナー」という専用の機器があることを知りました(そこか……)。
なんでもスキャナーの読み取り方式には「CIS」と「CCD」というのがあって、「CCD」というのが段違いにきれいにスキャンできるとか。
というわけで、複合機を買うのは辞めて、「スキャナー」と「プリンタ」と分けて買うことにしました。
わたしの場合、重要なのはスキャン機能のほうで、プリントの質はあまり問わなかったので(原寸大確認とか下絵のプリントに使うくらいなので)、スキャナーにお金をかけてその分プリンタは安いものを買おうと思いました。

その結果買ったスキャナーが「CanoScan 9000F MarkII キヤノン フラットベッドスキャナ」で、プリンターが「EPSON A4ビジネスインクジェットプリンター PX-105」というものです。

で、スキャナーなのですが、これが複合機で行うスキャンと段違いで驚かされました。

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↑昔の複合機で行ったスキャン↑今の専用のスキャナーで
行ったスキャン

顕著なのは背景のアジサイの紫、人物の頰及び猫の肉球のピンクで、複合機でのスキャンでは沈んでいるそれらの色彩を今の専用のスキャナーではばっちり拾っています。
もちろん、段違いで今のスキャナーのほうが原画に近い色合いです。
思うに、以前の複合機のスキャン機能はピンク〜紫を拾う能力が低いのかなと。

また、今回のイラスト本製作にあたって、アナログで作業することが増えたので、デスクライトも購入。
それが「パナソニック LEDデスクスタンド 置き型 ダークグレー SQ-LD515-K」で、これも高かったですが手元を明るく照らしてくれて作業効率が上がりました。
そんなわけで十月は快適な環境で作品製作に取り組めていた……はずなのですが、ここにきてなぜか? 急にダウンしてしまいました……。
以下、ちょっと(いやかなり)弱音を吐いているので、気にならない方のみ追記よりお進みください……。

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2018-10-22 : ■ご挨拶/連絡事項/雑感 :
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『千年相姦』七章 七年後 親仔喧嘩の終わり(4/4)

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私は今でもおまえと初めて出会ったときのことを思い出すのに……!
クルルーとレフィナのガチバトルラストです。
前回とうとう自分の本心を明かしたレフィナ。
レフィナはクルルーが勝手に「交配の旅」に出たことにそれはショックを受けていたようです。
さて今回はわたしのいろんな(隠れ)メッセージがこもっています。
一つは作中のレフィナの「言葉はむなしい」というせりふ。これはわたし自身の「だからこそわたしは生の言葉ではなく創作で自分の気持ちを語るのだ」という気持ちにスライドしていきますし、壮大で美しい〈千年森〉を「創作物」の象徴としてレフィナの背後に配置しています。
その前で小さくうずくまるのは生の感情に打ち震えるレフィナで、これは、創作とはまったく関係のないところにある、また違った生canaria自身の「女」としての情感だったり弱さだったりの象徴ですかね。当時ちょっと女性としていろいろ悩んでいたのでそうなってしまったのだと思います。
で、クルルーというのは、どっちかっていうとレフィナが万感の思いを込めた創造物である〈千年森〉を通してというよりレフィナに直接ぶつかって彼女の心を手繰り寄せたい、という考えをもってる人です。
レフィナにとってクルルーはまさに「異物」「破壊者」なんですね。
「いつか、おまえが私を、──と」レフィナが口をつぐむシーン。これは、「いつかお前がわたしを求めてくれる思っていた」とか「いつかおまえが私を壊してくれると思っていた」とか、まあその手のせりふと思っていただいて相違ないです。それ以外の解釈などございましたらご遠慮なくお言葉寄せてくださると嬉しいです。
とはいえ、基本的には閲覧者様のご自由な解釈の元読んでいただければ嬉しいです。
あくまで(隠れ)メッセージで、行われていることは二人の喧嘩ですしね笑
それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
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クルルー(18歳)レフィナ(年齢不詳)


七章 七年後 親仔喧嘩の終わり(4/4)


 レフィナの瞳から滂沱の涙が溢れ出す。それはやがてプリムラ湖と一つになり、僕たちの足元にレフィナの隠れざる過去が次から次に映し出されていく。
 あらゆる光、想い、慈しみ、レフィナの心を万華鏡のように取り込んで。
「幼なキトゥンだったころの、おまえの温もり、おまえのふわふわの被毛、後ろに垂れ下がった三角形の耳、ぷっくりとふくらんだ口元、そこから何本も飛び出た細く白いひげ……、それを浮き立たせるように、黒とも灰色ともいえぬ、優しい色合いをしたおまえのその被毛……。色素の抜けきった、生命の躍動なぞ微塵も感じられぬ私の被毛とは違う、おまえのその、艶々とした……それでいて産毛みたいにふわふわした、かわいいかわいいその被毛……、わたしの、かわいいかわいい、鉤尻尾……」
「──、レフィー、そ、れは……」
 かわいい鉤尻尾。
 それは。
 その一小節は。
「わたしのかわいい鉤尻尾、わたしだけを、わたしだけを見つめていて、わたしだけを、ただ、わたしだけを、与えるから、捧げるから、庇護するから、だからあなたもわたしだけを見つめていてと、幾夜も幾夜もおまえに語りかけていたのに」
 子守唄を。
「……あ……」
 明らかになっていく真実。
 いつもサフランの棲処で聴いていた子守唄。
 ……サフランと邂逅したときに、彼女が唄っていた。
 ……、『サフランの子守唄』だと思っていたのだ。
 違う、……。
「おまえをこの胸に抱き、……与えた、与えたつもりだった、命を、温もりを、生を……。私の生と性から乖離してしまったこの身体に、よみがえるようだった、生の温もりが。けれど、私は……」
 レフィナが顔を離した。レフィナの涙が僕の胸に染みを作った。
「私はやはり、おまえの母親足り得なかった」
 レフィナが悔恨の表情を形作るように眉を寄せる。
「いつか、おまえが私を、──と」
「……」
 一瞬途絶えたその言葉を、けれど僕は問い質さなかった。その答えを僕は既に識っていたからだ。
「けれどおまえは、私が思っていた以上に、健やかで、健全で、健康な若い雄だった。私ではなく、……外の雌を求めた。自らの世界を新たに構築するために、いとも軽やかに、閉じた〈千年森〉を突破して……」
「……閉じ、た、〈千年森〉? ……」
 突破した、というような手応えのようなものはあのとき一切感じなかった。扉を潜るように簡単に外の世界と接続することができたからだ。
 けれど僕はレフィナによって閉じこめられていたのだ。〈千年森〉は入ることは困難でも、出ることは比較的容易であると勝手に思い込んでいたのだ。
 僕自身があっさり、〈千年森〉から抜け出ることができたから。
 けれどそれこそが容易じゃなかったことだったのだ。
「決定的だった。『鍵』はおまえの前ではなんの効力も奏しなかった。それだけおまえの雌を求める欲望が強かったからだ。おまえは力強く、若く、生きる希望に満ちた、つまりはありきたりな健全な雄の一匹にしか過ぎなかった。あれほど毎晩、私の歪んだ想いが投影された子守唄を唄って聴かせていたにも拘らず、健やかに成長してしまった、ただのつまらない雄の一匹にしか過ぎなかった。歪んだ私を目指すことなく、健全な外の雌を求めた。襤褸をまとい、醜くねじ曲がった心をもった私に愛想を尽かして!」
「違う!」
「何が違う! 今さらだ! おまえは身体だけでなく、剰え一匹の雌に心奪われ恋をした! チコとかいう美しい娘に!」
「違う、チコは!」
「何が違う、おまえはたしかにあのチコとかいう雌にだけは特別な想いを抱いていた。聴いていればそれは容易にわかる。登場することはほとんどないのに、あの雌の件になるとおまえは妙に語りが情緒的感情的感傷的になった。……本当はあの雌の元へ留まっていたかったのではないか、『ニゲル』のことがなければ……」
「……」
「ニゲルはどこにいった」
「さあ……」
 僕は咄嗟に目を逸らす。
「ほら、それが答えだ。ニゲルのことになるとおまえはそうやって口を閉ざす。『ニゲル』こそおまえが私に隠蔽してきた、おまえの雄としての本来の姿だったからだろう!」
 それは正確にいうと正解でもあり、半分は間違いでもあった。物語は受け手の状態によってその真意がねじ曲げられることがある。そうしてそれは、たとえ事実ではなかったとしても、受け手がそう思ったのなら、それが真実になる。
「ああ、言葉はむなしい、……」
 レフィナが僕の想いを代弁するように言葉をこぼす。
「私の十八年間の葛藤も、拘泥も、すべて、すべて、言葉にかかると、すべて陳腐な想いに還元されていってしまう……。言葉にすると、こんなにも安っぽいものだったのか、軽いものだったのか、私の想いは」
 レフィナの背後には〈千年森〉が広がっていた。言葉では決して代替できない、邂逅した者を一瞬でその『境地』に導く絶対的答えが。
 逆らうことのできない、万全にして完全の存在。それだけで完結している緑の摂理の導き手、支配者。
 その絶対的存在の前で、緑の血に選ばれたニンゲンが、『よりしろ』としての位置すら危うく、一人赤い血の摂理に怯えて震えながら泣いている……。
「ねえ、レフィー、僕も陳腐な話をしていい?」
「……『クルルー様の冒険譚』で存分に聴いた。おまえの安っぽい想いも、おまえの雄としての猛々しい一面も、一匹の雌に心奪われたその瞬間までをも、そのすべて私は見届けた。……私のかわいい鉤尻尾は、もう、そこには存在していなかった……」
「そのかわいい鉤尻尾は、七年前、誰に発情していたと思う?」
「まだ見ぬ雌に想いを馳せてだ」
「雌たちの総体に僕は発情していたの?」
「そうだ。おまえはいつも訴えていた、私を見つめながら。苦しい、身体が熱い、苦しいのにこの苦しみをどこにもっていけばいいかわからない……と。雌の不在に苦しむ姿を露骨に私に晒してきたんだ。私はいい道化だった。仔が、私以外の雌を求めて苦しむ姿を、無様に見せつけられて……」
「……本気でそう思っているの?」
「それでしかあり得ない。〈千年森〉に雌は存在しないからだ」
「……それ、本気でいってる?」
 レフィー、僕の身体を辿ってみて。
 僕はレフィナと身体を密着させる。
「……!」
 レフィナが後ずさる気配があった。僕は恐怖に怯えたような表情のレフィナを、けれど逃さぬよう、さらに引き寄せた。
 僕たちの身体が、ごまかしようのないほど分かちがたく重なり合った。
「……僕、今、とっても欲情してるみたい」
「……なんにだ」
 レフィナの唇がわなわなと震えていた。
「……ねえ、レフィナは本当は、ニンゲンなんかじゃないんだよね」
「──」
「雄でも雌でもないっていうのも嘘なんだよね」
「──」
「僕の理性や知性が及ぶところの話じゃないんだ」
 レフィーは……レフィナは。
 僕はレフィナの顔に向かって微笑んでみせた。
「レフィナは、キトゥンの雌なんだよね」
「……ち、違っ」
 身体を離そうともがくレフィナを僕は封じた。
「嘘。それならどうして僕の身体はあのとき目覚めたの。あのときあの瞬間あなたの姿を見て僕は目覚めたのに」
「あのとき……、なんの、話だ」
「僕がたった一晩だけ、水を飲んだふりをして眠ったあの日の明け方のこと」
「……な、に」
「今と同じだよ。レフィナの後を尾けていった。そこで……見た」
「ま……さか……」
 レフィナの顔が恐怖で引き攣る。
「〈千年森〉の『本体』と交わる、あなたの姿を……」


次の更新は11/1(木)を予定しております。
2018-10-15 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 12 :
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感動はその日のうちに

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もしここをご覧になられている作家さんで
ご本のアップは避けて欲しいという方おられましたらお申し付けくださいませ><

書き留めておきたいと思うので書いておきます。
今日10月8日に関西COMITIAに行ってきました。
先週の台風からの順延の影響か多少サークル参加者の欠席が目立つような感じがしましたが、思っていた以上に人が多く、東京のコミティアとまったく引けを取らない盛況ぶりでした。

前々からファンだった作家さんとお話しをさせていただいたりと(とてもお優しい方で長居しているわたしに嫌な顔せずいろいろ話しかけてくださったのです……)素敵なひとときを過ごさせていただきました。

また、今回、純粋に一般参加者として会場を回ることで今まで見えてこなかったものも見えてきました。
自分がCOMITIAに求めているものは「技巧」とか「巧みさ」ではなくて、「その作家さん独自の世界観」なんだなぁ、ということにも気付かされました。
そう思うと、自分がこれまでマイナス要因だと思っていた自分の絵の「一般受けしなさ」とか「pixivの主流から外れた絵柄」というものをもっと前面に押し出してもいいのかなぁ、と思いました。
また、「両性具有」とか「無性」というものに心血注いでいることももっとアピールしてもいいのかなぁ、と思いました。(実は小4の頃から追求してます)

帰りに大阪のデパートで「りくろーおじさんのチーズケーキ」を並んで買って帰りました。
その日のうちに全部食べ終わりました(笑)
2018-10-08 : ■ご挨拶/連絡事項/雑感 : コメント : 8 :
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画材が届きました(イラスト本進捗)

Twitterのほうでは先駆けて書いたのですがさる9月28日画材が届きました。
頼んだお店はこちら→額縁画材ドットコム
格安! と銘打ってるだけあってお安い、常時25%引きくらいのお安さです(;゜0゜)
最近考えが変わって買い物はできるだけ地元で済ませようと前回頑張って隣町の文具屋さんまで電車で行ったのですがそこは絵の具が定価価格なのですよ……人はこうしてネットに帰っていくのね。
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ダンボールを開けると、わー入っています、テンションが上がります。
買った画材はこちら。





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コピックマルチライナーのクールグレーとウォームグレー、 0.03と 0.05です。
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またもや同じものを二個買ってるというね。前回のコバルトブルーの絵の具を二本買ったことといいもはや病気としか思えません。






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マクソン コミックインク 耐水性グレイとセピア、ホルベインのドローイングインク。
ホルベインのほうは、いわゆる「カラーインク」と呼ばれるものですね。現在は廃盤で在庫限りのようです……時代の変遷を感じますね。昔は漫画家さんのカラー原稿といえばカラーインクのイメージがあったのですが。





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A6(ハガキサイズ)の木製パネル。わたしは紙がべこるのがあまり好きじゃないので小さいサイズのものも水張りしたいなと思って購入しました。





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真打ち、水彩の単色です。厳選に厳選を重ねた上で取り寄せた精鋭揃いです、多分。(トライアルセットで試し塗りした上で三日くらい悩んだ)
単色で頼んだのに丁寧に箱に入れて下さってる……ありがとうありがとうございます額縁画材ドットコム様。(お礼の宣伝)





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A4ケント紙。普通水彩描きさんは「水彩紙」というのを使うのがツウみたいらしいのですが、わたしには高級過ぎて肌に合わず……、これは、いわゆる普通の「ハガキ」の紙を想像していただけると分かりやすいかと思います。せっかちなので水を吸う高級な紙よりさらさらっと塗れる紙のほうが合ってるみたいです。






180928_10.jpg
さっそくケント紙に試し描きをしてみたいと思います。
せっかくなのでもし検索でたどり着いた方がおられたら参考になればと思います。





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コピックマルチライナーのクールグレーとウォームグレー、 0.03と 0.05
ウォームグレーはその名の通りやや茶色がかったグレー、でも茶色! って感じではなくてしっかりグレーしてます。(お蕎麦みたいな色?)わたしはあまり「茶色」という色が好きでないのでこれは嬉しいです。理想の色です。
クールグレーは若干青みがかったグレーですね。クールグレーよりウォームグレーのほうが汎用性が高そうです。クールグレーは使いどころが限定されそうですね。でも好きな感じの色です。





180928_12.jpg
マクソン コミックインク 耐水性グレイ
思った以上にしっかり「グレイ」していてテンションが上がります!
グレイといっても漫画原稿用ということで普通の黒かな〜と思っていたのですが揺らぎのある薄い黒という感じで理想的です。これで小林智美さんとか天野絵みたいなあの揺らぎのある主線が描けるのかと思うとテンションが上がります。(描けるのか?)





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180928_14.jpg
上/マクソンコミックインク 耐水性セピア
下/ホルベイン ドローイングインク 耐水性セピア

同じセピアでもマクソンのほうはややカーキがかった印象、ホルベインのほうはいわゆる一般的にイメージされる「セピア」に近い感じがしました。伸びもややホルベインのほうがいいような。どっちも好きな感じでテンションが上がります。

ちなみにインク系は丸ペンでペン入れ予定です。
これですね。
180928_19.jpeg
さて主線に使うペンやインクが乾くのを待つ間に水張りをしましょう。
後で耐水性チェックをするためです。
180928_15.jpg
準備をしながらそういえば専門行ってるとき「紙の表と裏が分かる」と定評の先生がいるのを思い出しました。地味に重宝する特技ですよね。
ちな、水入れはぶどうの入っていたプラケースを使ってます。専門の道具より使いやすいんですよね。(自分は)




180928_16.jpg
さて水張りが完了しました。
水張りのコツは「大雑把」に尽きると思います。あまり丁寧にやりすぎると逆に失敗するような。
昔これもまた専門時代の思い出なのですが、乾いてないときはベコベコのすごい大雑把な水張りをする子がいたんですが乾くと誰よりもきれいという。わたしはご覧のように変なところで神経質()な性格なのできちきちやりすぎて逆に端がべこっていたりしてあまり水張りが上手じゃありませんでした。




180928_18.jpg
さて主線の耐水性チェックですがばっちりです。
結構びしょにしょに塗りたくってますが問題なしです。

ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
皆さまの応援がやる気の元です(^^)/
また進捗アップしまーす。

10/4追記
新たにデスクライトと追加の画材が到着したのですがそれはまた次の機会に譲りたいと思います。

2018-10-07 : ■ご挨拶/連絡事項/雑感 :
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『千年相姦』七章 七年後 親仔喧嘩の終わり(3/4)

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「……だが、だがなクルルー、勘違いするなよ。それらの感情的起伏は、感情的経験は、私の心を豊かにした」
クルルーが関わってきた雌たちへの嫉妬や醜い感情すらも〈千年森〉創造のための材料にすぎないとうそぶくレフィナ。
けれどレフィナはもう限界のようです。
今回レフィナはクルルーの目の前でプリムラの花が咲き誇る湖を「創造」します。
けれどそこにたたずむのは精彩を欠いた養親の姿……。
その姿を見てクルルーは唐突に悟ります。
これはレフィナの「強がり」だったのだと……。
クルルーとレフィナのガチバトル三回目、とうとうクルルーがレフィナの本当の気持ちをつかまえます。
七年前のクルルーの旅立ち(家出、出奔)にレフィナは思った以上にショックを受けていたようですよ。そしてそこはなとない歪んだ愛情を感じ取っていただければと思います。
それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
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クルルー(18歳)レフィナ(年齢不詳)


七章 七年後 親仔喧嘩の終わり(3/4)


 レフィナの襤褸がいつになくくすんで見える。中途半端な夜の薄明るい色に染まって、森色すらも剥奪されたように、そこに無彩色に佇んでいる。
「そう、親として初めて経験した激しい相克すらも、自らの糧としそのすべてを私は注ぐ、〈千年森〉の創造に!」
 レフィナが腕をかざす。
 そこに花が咲いた、プリムラの花が。水場にしか咲かないその鮮紅色の花が、色を失ったレフィナの周りで咲き誇る!
「……」

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 事態を忘れて目を見張ってしまうほどの鮮やかさだった。薄らぼんやりとした天に、冴えた色をした花の絨毯が地上に映えて、得もいえぬほど美しい。
 レフィナの足場がぬかるんでくる。土が水気を含んだものに変質していき、中央にいるレフィナを中心に水が満ちていく。
 湖が形作られていく。
 生まれたばかりの若い湖の中央で、灰色のレフィナが佇んでいる。黒でも白でもない、主張しない存在感でレフィナが佇んでいる。〈千年森〉にそのすべてを注ぎ込み、すべてを〈千年森〉に捧げたレフィナが、痩せ細った心で、枯れ木のように侘しく、ただ一人寂しく孤独に震えて佇んでいる。
「……レフィナ」
 プリムラが鮮やかにレフィナの周りを囲っている。月明かりを吸収して燐光のように光る花粉が、レフィナの周りをふわふわと漂っている。レフィナの指先が燐光をそっと手繰り寄せる。そこからまた、新たなプリムラが創造を始めていく。
 僕は湖の中央へ足を踏み入れていく。その過程で、僕が先ほど投げ捨てたいわく付きのナイフは、あっさりと湖の底に吸い込まれていった。(※管理人注/前前話で登場した、サフランが元々持っていたレフィナの顔を傷つけたナイフ)生まれたばかりの湖は浅かった。僕の足元辺りで静かに水量を重ねていっている。一歩、二歩、レフィナに近づいていく。
「邪魔をするな。これとない作品を創っている最中なんだ。おまえがいると作品が曇る」
 曇るのは、それは、僕があなたの感情を振り乱すから。
 あなたがそこまで僕を拒絶するのは。
「……そうしないともう、〈千年森〉を保てないほど、……あなたが最初から、墜ちていたから……」
 レフィナに腕を伸ばす。「僕に……」
「……は、離せ!」
 レフィナを抱きすくめる。
 プリムラの燐光が輪舞する。あがくレフィナに呼応して鱗粉が跳ねるのだ。
「レフィー……」
 レフィナの襤褸をそっと剥がす。
 それはあっけないほど容易に開かれた。
 そこには両の瞳に涙をたたえた養親の顔があった。
 金色の瞳と水色の瞳が、孤独に震えて冷たく光っている。夜露のように、朝方になれば消えてしまう儚さをたたえて、その寄辺なさに怯えて一人寂しく震えて泣いている。
「……見るな」
 レフィナが顔を伏せる。「見るな見るな見るな見るな!」
「レフィナ」
「触るな!」
 けれど涙に触れようとした僕の指は無下に振り払われる。
「私をキトゥンの雌共と同列に測ろうとするな! なんだ、今の仕草は、今の声は……、聞いたこともないような、甘い声で……。そうやって雌たちの涙を何度拭ってきた、何度そうやって雌共の名を呼び、包容し……、愛を囁いてきた」
 金色と水色の瞳を憎悪に燃やしながらレフィナが睨みつける。
「だけど、それは全部レフィナのものなんでしょう」
 燐光がレフィナの顔を照らす。桃色の疵が白々と浮き彫りになる。
「そうだ、それも全部、私のものだ。おまえが経験してきたことすべて、雌たちがおまえの言葉や身体に触れ、感じ、体験したことすべても、私の、もの……」
 違う……。
 レフィナの頬を大粒の涙が伝っていった。
 けれどレフィナはその美しい真珠を自らの手で無残に覆い潰す。
「それは雌たちの感情だ。私じゃない、私のものでは、……。私はおまえで、おまえは私なのに、私はおまえが雌たちに与えてきたその一点だけを、唯一共有することができない。おまえが関わっていることなのに、そこに雌たちが介在してくるだけで、……私はおまえと共有できなくなる。……世界を……」
「……快楽も?」
「……違う」
 レフィナの肩が震えていた。
 いつしかの、コロンを思い出す。
 もうずっとはるか昔、何十年も前も昔のことのように思われる。大好きな妹と快楽を共有したいのに、ニゲルがそれに応えてくれないと嘆いていた。あのときは、コロンのその気持ちの本質に気付いていなかった。
 今なら、よくわかる……。
 きっとコロンは、妹のコロネと自分を同一視していたのだ。
 レフィナが実はそうであったように。
 ……僕も実はそうであったように。
 レフィナも僕も、似た者同士だったのだ。
 僕がレフィナに似たのか、レフィナが僕に似たのか。
 それはわからない。
 だから、ずっとずっと、交錯することがなかった。
 その想いが。
 だから、喧嘩をした。
 あの日だって。
 あんまり似た者同士で、互いの感情が平行線を辿る一方だったから。
 どっちとも、頑固だったから。
 だから、互いの感情がどこを向いているのなんて、そんな簡単なことがわからなかった。
 ……どっちとも、自分のことが大嫌いだったから。
 まさかその感情が自分に向かっていたものだなんて、想像することすらできないほどに、自分のことが大嫌いだったから。
 ……自分自身の生の形がわからなかったから。
 自分で自分のことを嫌いなのに、自分を求めてくれる存在などなおさら素直に愛せるはずもない……。
 ……だから僕は、まがりなりにも自分を愛し、求めてきてくれた雌たちに対して、いつも侮蔑を前提に恋を重ねることしかできなかった。
 歪んだ交配を交わすことしかできなかったのかもしれない。
 チコ……。
 彼女に恋をしたのは、彼女が自分を否定していたからだ。彼女は端から僕のことなんて求めていなかった。だから僕は彼女を手放しで求めることができた。僕を求めていないから、無批判に身体の快楽にだけ溺れきることができたのだ。
 ……快楽でごまかして、駆け引きを大義名分に、その傷みやすい心にふたをした。
 ……互いに。
 引き合った、のかもしれない。
 互いを慰めるために。
 だってチコと僕は、この世にたった二匹しかいない、同じ形の空洞を共有した者同士だったから。
 チコはパパの空洞に怯え、そうして僕は……。
「……おまえはあの日、七年前に初めて発情期を迎えたあの日……、雌たちを求めて私の元を去っていった。なんのためらいもなく、ある日突然……」
 僕の「空洞」そのものであるその人が、初めてあの日のことを露にする。僕がずっと訊きたくて、けれどずっと怖くて訊けなかったあの日のレフィナの心を……。
 僕はレフィナの身体に手を回しながら、レフィナの述懐をただただ黙って聴いた。レフィナは僕の言葉を求めていなかった。僕も僕の言葉を求めていなかった。
 僕はレフィナの想いを聴きたかった。レフィナの初めて開かれた想いを、溢れ出る想いを、聞き逃したくなかった。
「私は〈千年森〉を犠牲にしておまえを引き入れたのに!」
 レフィナが僕の胸を殴打する。
「おまえは私を裏切って勝手に成長していき、意志をもつようになり、剰え発情期になった途端、私をあっさり切り捨てた!」
 レフィナが再び僕の胸を叩いた。僕に抗議しているようでもあり、七年前の僕に憤りをぶつけているようでもあった。なぜ、なぜ……と、その拳からは聞こえる気がした。
「そのときの私の惨めな気持ちがおまえにわかるか! 見渡せばおまえに邪魔されたおかげでみすぼらしく縮小した〈千年森〉だ。私は唐突に悟った。感情は例えそのときは熱く燃えさかり生物の心を満たしはしても、いずれ消え去っていくものなのだと、いずれ流転していくものなのだと」
 おまえがそれを突き付けたんだ! レフィナが過去を映すように大粒の涙を浮かべる。
「私がおまえを育てていたときに感じていた情愛も、そのときに感じた温かな温もりも、私の独りよがりだった! おまえは私から吸収するだけ吸収した挙げ句、そのすべてを雌たちに注ぎ込むべくあっさり交配の旅に出た! そのときの私のむなしさ、侘しさがおまえに想像できるか!」
 血を吐くような迸りにけれど僕もやんわり頭を振る。苦しかったのはレフィナだけじゃない。
「けれどレフィーが自分で追い出したんだよ。『おまえなんか用済みだ』って」
「それでおまえは、私が出ていけといえば出ていくのか! あっさりと! なんの断りもなく! 雌たちの魅惑の前では私と共に過ごしてきた十一年間など霞むべくものだったと! おまえにとっては!」
 私は今でもおまえと初めて出会ったときのことを思い出すのに……!
「……!」


次の更新は10/15(月)を予定しております。
2018-10-01 : 小説・「千年相姦」 : コメント : 12 :
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色見本作ってました(イラスト本進捗)

Twitterのほうでも少し書いたのですが、ホルベインの水彩108色セットトライアルセットというのを使って色見本を作ってました。
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現在は終売品らしいですがフリマアプリで譲っていただきました。いい時代になりました。

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これをこうして……

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こんな風に一マスずつ塗っていきます。

180924_7.jpg

バーミリオンとバーミリオンヒューに至っては違いがまったく分かりません。
しかも値段も倍違う……おそらく使ってる材料が違うのな?

塗りながら時間を無駄にしてるんじゃないかと考えがよぎることもあったのですがやってみて良かったです。
同じ色でも使ってる材料によって絵の具の伸びが違うような気がしました。
個人的に、「カドミウム」と銘打っているものは仕上がりが粉っぽくなるような気がしました。そしてお値段が少し高い。

なぜ全色色見本を作ったかというと、これを元に絵の具を単色で取り寄せようと思ったからです。
12色セットとか18色セットとかもあるのですが、以前60色セットを買ったときもそうだったのですが、結構使わない色とかもあるんですよね。

60色セットを買ったときにその色の多さから色を把握しきれず三原色法に走ったという経緯があるのですが、今回もいざ三原色だけで色を塗ろうと思ったら思いのほか面倒臭い難しいことが分かりました。
それで、三原色だけで作るなんてことはやめて美しい色は美しい色のまま取り寄せようと思ったのでした。

ただいまネット通販で上記の水彩絵具始め画材を取り寄せ中で作業が進められないのでラフ(下書き)だけ進めてます。
今トップ絵に使ってる絵は、その経緯で生まれたものですね。(ちなみにこの絵は三原色法で塗ってます)

画材が届いたらまた進捗アップします。
いつもお読みくださりありがとうございます。
皆様の応援がやる気の元です(^^)/
2018-09-28 : ■ご挨拶/連絡事項/雑感 :
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新説・ジャンヌダルクとジル・ド・レ〈後編〉

掌編九月分はジャンヌダルクとジル・ド・レのお話の後編です。
前回までのあらすじは、ジル・ド・レの協力のもと、神のお告げ通りジャンヌがシャルル七世を即位させたところで終わりました。戦いを通して絆を深め合った二人は公私ともに栄華を極めたかに見えましたが、事態は急変します。
後編では、ジャンヌが敵の捕虜となってしまうところから物語が始まります。
敵はジャンヌを異端の魔女にでっち上げることで、彼女の功績により国王となったシャルル七世の権威をも失墜させんというのが狙いのようです。ジャンヌ処刑の裏には多分に政治的な思惑が絡んでいたようなのですね。
史実ではジャンヌもジルも火刑に処されることになりますが、なぜ二人がそのような最期を迎えることになるのか、canariaフィルターのもとご覧ください。
長いので適当にしおりを作ってゆっくりお読みくださいね。次回からはもっと短くしようと思います、すみません(^^;)
それでは、どうぞ。


「なんだって……!? ジャンヌが捕虜に……!?」
 部下の第一声にジルは耳を疑った。
「はい、コンピエーニュに援軍に出向かれた際、ジャンヌ様はブルゴーニュ公の配下の者に生け捕りに……」
「くそっ」
 ジルは声を荒らげた。ブルゴーニュ公フィリップ三世はシャルル七世を推すアルマニャック派の対抗勢だ。このままではジャンヌがイングランド軍に売り渡されるのは必定だった。
「シャルルは……」
 王を呼び捨てにするジルに、使者がいいにくそうに顔を見合わせる。
「……それが国王はジャンヌ様引き渡しに積極的に介入する気はないようで……」
 ジルは昨年戴冠したばかりの王の凡庸な顔を思い出した。思わぬ形で表舞台に引きずり出された彼は、政治に疎い。ジャンヌを快く思わぬ側近たちに阻まれ、自由に身動きが取れぬであろうことは容易に想像がついた。
 ジルが手をこまねいている間にもジャンヌを取り巻く状況はどんどん悪化する一方である。
 翌年、ついにジャンヌの異端裁判開始。裁判は異例尽くしで、すべてがジャンヌにとって不利になるよう仕向けられているのは明らかだった。その背景には多分に政治的な思惑が絡んでいるのだった。
 ジャンヌを異端の魔女にでっち上げることで、彼女の功績により国王となったシャルル七世の権威をも失墜させんというのが敵の狙いなのだった。
 このままではジャンヌは異端の罪で火刑に処されてしまう。
 いつしかジルが戯れにいい放った言葉が、まさかこんな形で跳ね返ってくるのは夢思わず、彼は己の軽率さを激しく悔いた。
「ジャンヌを我々の手で救出するぞ!」
 ジルはジャンヌの捕らえられているルーアンの地目指し一路馬を走らせた。
 だが時すでに遅し、ジャンヌは火あぶりに処された後だった。
 周りの制止の声を振り切って、ジルは火刑台に駆け寄った。
「ああ、ジャンヌ、ジャンヌ……!」
「ジャンヌだったもの」の遺灰をかき集めて狂乱する男の姿に、誰もが目を覆い、顔を背けた。
 灰色の空が、慟哭する男の背中をいつまでも見下ろしていた。

※※※

 ジャンヌを失い抜け殻のような日々を送っていたジルだったが、祖父の死により状況は一変する。
 自分の人生に大きな影を落としていた祖父が死んだことでたがが外れたからなのか。莫大な遺産金を手にした彼は一転、享楽的な日々を送るようになるのである。
 サン・ジノサン礼拝堂を建設し、聖歌隊を結成した。オルレアンの地には劇場を建立し、在りし日のジャンヌを偲ぶように、彼女の活躍を題材に取った演劇を繰り返し上演させた。
 そこには少なからずジャンヌへ対する追悼の意もあったが、大半はジルの現実逃避によるものだった。
 宮廷にも出仕せずひたすら所領にこもって芸術に耽溺する彼を、周りはこぞって非難した。なかには訳知り顔で同情の声を寄せる者もあったが、ジルはこれも全部退けた。
 彼は周りの心配をよそに、ますます自分の殻に閉じこもるようになっていった。
 だが散財の日々は、一時の気休めにはなっても、安逸をもたらすことはなかった。どころか、歌声も演劇も次第に彼の心をむしばむようになっていった。演劇に至っては、甲冑をまとった演者が舞台に上がるたびに、期待を寄せては失望するというありさまである。
 少女ではだめだ。
 少女ではあの高邁にして高潔な魂に迫ることはできぬのだ──。
 なぜなら彼女の肉体は──。(※管理人注/canariaジャンヌは両性具有者設定)
「おや、我らがご領主殿は何を苦悩なさっておいでなのかな」
「フランチェスコ・プレラティ──」
 数年前から出入りしている「自称」錬金術師を名乗る男にジルはうさんくさいものを感じていたが、彼だけはジルを非難せず、むしろ理解を示すような言動を見せることもあったので、好きにさせておいたのだった。だが、その男がなぜ地下室に?
「あなた様が手にされた灰です」
「何?」
「あなた様が火刑場でかき集められたジャンヌ様の遺灰を媒介にすればあるいはジャンヌ様は──」
「よみがえるとでもいうのか!」
 プレラティの後を引き取ってジルが吠えた。
 不適な笑みをたたえる男にジルは目をらんらんと輝かせながらいい放った。
「金ならいくらでも出すっ! それで彼女が生き返るのならば──!」
 その目にはもはや狂気以外、何ものも映っていなかった。

※※※

「領主様ぁ、早く来てぇ……」
 少女が女陰を自ら指先で開いてみせた。
『……私の『女』は、閉ざされているのです』
 突如あの晩のジャンヌ声が脳裏によみがえり、ジルは衝動的に懐剣を振り下ろしていた。
 血しぶきが飛び散りジルの頬を赤く染め上げる。
「おお、ジル殿、何も命まで奪うことはありますまい。私はただ、清らかな乙女を犯しせしめ、ジャンヌ様の遺灰をかければその身体にジャンヌ様の魂が宿ると──」
「ほざけ! この女のどこが生娘だというのだっ、このような下郎の輩、ジャンヌの魂を宿すまでもないっ! どだい貴様の黒魔術は一向に効かぬではないかっ、貴様もしや私をたばかって──」
「とんでもない」
 内心冷や汗をかきながら、彼は平静を装っていい繕った。
「依りしろを少女から少年へと変えるのです」
「少年に?」
「はい。ジャンヌ様は何やらそのお身体に秘密を抱えていたご様子。ジャンヌ様の魂を宿すには、おそらく少女の肉体では不足なのです」
「おお、そうか、そうなのだ、さすがはおまえだ、そうなのだジャンヌは──」
「ならば一刻も早く少年をこの場に連れてくることです。幸い、あなたの元には大勢の清らかな少年がおられるではないですか」
 ジルに躊躇はなかった。
 ジルはさっそく手下に命じて聖歌隊の少年の一人をかどわかすと、地下室に連れ込んだ。
 だが、少年もジャンヌの魂を宿すには至らなかっった。
 少年もまた、その美しい声で痛烈にジルを非難してみせたからである。
「この神をも恐れぬ所行、神は男色を固く禁じておられるのですっ、僕はおまえなんかに決して屈しない、僕は聖なる調べを神に捧げるために入隊しっ──」
 やはり、喉笛を切り裂くことで少年の口を塞いだジルは、膝を突くとさめざめと顔を覆った。
「違う、違う──。なぜ、なぜだ、なぜ誰も分かってくれぬ。私はおまえたちを苦しめたいのでも殺めたいのでもない。ジャンヌの魂を宿すにふさわしい肉体を見いだし、彼女をよみがえらせたいだけなのだ。それをなぜ、この者たちはこうも理解してくれぬ──」
 もう何度目かになるか分からない酸鼻を極める光景に、さしものプレラティも顔をしかめた。彼が引き時を画策しているのは明らかだった。
 そしてとうとうプレラティも姿をくらました。
 唯一の頼みの綱であった錬金術師すらも失い、もはやジルは自暴自棄だった。
 ままよとばかりに、ジルはありとあらゆる手段を講じて少年たちをさらい、殺戮に明け暮れていった。
『女……、将軍は私を女にすることができるのですか?』
「やめて、やめてくださいっ」
『……私の『女』は、閉ざされているのです』
「この被虐趣味者っ」
『だから、うれしかったんです。あなたが私のことを聖女でも伝説の乙女ラ・ピュセルでもなく、ただの『女』として扱ってくださったことが』
「おまえなど地獄に落ちてしまえ──!」
 ジャンヌの声がこだましては少年たちの悲痛な叫び声が飛び交う。ジルはジャンヌの声以外なにものも受け付けぬとばかりに、少年たちの命を肩っ端から奪っていった。
 祖父も、カトリーヌも、少女たちも少年たちも。
 誰も誰も誰も。
 誰も皆、ジルを理解してくれぬ。
 父母を失って以来、ずっと煉獄れんごくをさまよっていたジルの魂を、初めてこの世に呼び戻してくれたのがジャンヌだった。
 ジャンヌだけが、自分の魂をその魂ごと受け入れてくれたのだ。
 ジャンヌだけが──。
 そのとき、ふいに光が満ちた。
 数ヶ月ぶりに目にする陽光に、彼は瞳をすがめた。
「ジル・ド・レ国家元帥! 拉致監禁の容疑につき出頭を命ず!」
 ──ああ、ジャンヌ。
 彼は微笑んだ。
 私もようやく、このいつ終わるとも知れぬ苦しみから解放されるときがきたのだ。

※※※

 裁判の間、彼は支離滅裂な供述で傍聴者たちを戸惑わせた。
 そこには『救国の英雄』の姿はもはやなかった。
 彼の中にはジャンヌを求めて止まぬ唯一無二の正気しかなかったのだから。
 それを人は狂気という。
 ジルは皮肉にもジャンヌと同じ異端の罪で火刑に処されることとなった。
 彼女と同じ炎に焼かれる恍惚にジルは陶然となった。
 炎がジルをなめ尽くす。
 荒々しい愛撫でもってジルの身体中を奪い尽くす──。
 すべてを浄化する炎によって私たちを隔てる肉体は消滅し、二人は今結ばれる。
 君と私を隔てていた肉体は焼き尽くされ、ようやく私たちは一つになれるのだ。
 今、私が君の魂をくぐる。
 私たちは肉体を失うため、二人世界の異端となり、今ようやく天の業火に召されたのだ。

※※※

 ……数百年後、ジャンヌは聖人の一人になり、列聖されることとなる。
 聖人となったジャンヌは、天の国からフランスを永劫に見守るだろう。
 だが男でも女でもない、聖人ですらない彼女の真の魂は、たった一つの魂だけをその腕に抱き続けるのだ。
 ジルの魂を。
(2018年1月 書き下ろし)

2018-09-25 : ■掌編/短編 : コメント : 12 :
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Author:canaria

オリジナルの世界観を絵や物語(小説)で表現しております。 千年相姦/ブログにて毎月1日と15日に連載中。 侵蝕恋愛/BOOTHにて随時刊行中。 空の終焉/未発表作品。

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