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new_01_red.gif①pixivBOOTHにて「侵蝕恋愛Ⅴ 歴史の花冠」ダウンロード頒布開始いたしました。
②pixivBOOTHにて「侵蝕恋愛Ⅳ 恋人たちの契約」ダウンロード頒布開始いたしました。
③ご用のある方はこちらからどうぞ→mail_02_bla.gif

「侵蝕恋愛Ⅴ 歴史の花冠」ダウンロード頒布開始いたしました

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〈STORY〉
『セイレン』と接触したことでケイの秘められたる過去と記憶が
急速に解き明かされていく。
彼が孤児院『太陽の家』で見たものとは。
彼はセイレンの姿に何を見るのか。
物語は最終章へ向けて加速していく。


pixivBOOTHにて「侵蝕恋愛Ⅴ 歴史の花冠」ダウンロード頒布開始いたしました。
ブログで連載していた番外編「侵蝕恋愛 side storyⅢ 双卵少女」をお読みいただきますといっそう楽しめる内容になっておりますが、そうでない方にも十分に楽しめる内容になっているかと存じます。

今巻の見所はずばり、セイレンです。
暇で暇で暇でもひとつ暇でたまらんわーって方、是非どうぞ。

A6文庫版/168p (本作品は小説作品となります)
※なお当作品はPDF作品となりますので、PDF閲覧可能なアプリやソフトを別途ご用意ください。フリーソフトがweb上で無料ダウンロードできるようです。
例:Adobe Acrobat Reader DC等

それから、例によってすぐに「侵蝕恋愛Ⅵ」の執筆に入りますので、引き続き創作モードでブログ運営させていただきます。皆様には重ね重ね不義理を重ねてしまいますが、もう少々お時間ください。申し訳ございません。
よろしくお願い申し上げます。
2017-04-23 : ■連絡事項 :
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「千年相姦」連載いったんお休みします

みなさんこんにちは。
いつもご訪問、コメント、拍手など本当にありがとうございます。

これまで1日と15日に更新させていただいていた「千年相姦」の連載ですが、「侵蝕恋愛」執筆に集中するため、いったんお休みさせていただきます。すみません。
ほとんど交流できていないにもかかわらず、自分のブログにだけ来ていただいたり、作品を読んでいただくのが申し訳ないというのもあります。

皆様に不義理を重ねてしまうこと申し訳ない限りなのですが、事が落ち着いたら必ず皆様の作品を拝読させていただきたく思っておりますので、身勝手なお願いかとも思いますが今しばらくのお時間をください。
すみません。
ご用のある方はこれまでと変わらずメールフォームをご利用くださいね。

それではしばしのお別れに入りますが、皆様におかれましてはお身体に気をつけてお過ごしくださいませ。
2017-04-14 : ■連絡事項 :
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「侵蝕恋愛Ⅳ」ダウンロードありがとうございました

皆様先日は「侵蝕恋愛Ⅳ」頒布開始にあたり、ダウンロード及び♥マークポチ及びお祝いのコメントの数々誠にありがとうございました。
わたしがこうして作品を書き続けることができているのはひとえに皆様のご声援と応援があってのことです。皆様には感謝してもしきれません。
作品を作り続けることが皆様のお心遣いへ対する最大の恩返しと信じ、これからも創作道に邁進する所存でございます。

小説頒布直後ではございますが、すぐに「侵蝕恋愛Ⅴ」の執筆に取り掛かりたいと思います。
皆様に不義理を重ねてしまうこと本当に心苦しいばかりなのですが、Ⅳからの流れを大事にしたいので、皆様のご厚意に甘えさせていただき引き続き創作モードでブログを運営させていただきたく思います。

訪問やコメントなど、今と同じように激減してしまいますが、皆様の作品や記事を追わせていただくことは自分にとってとても大切な時間なので、読み逃げになってしまうかとも思いますが、引き続きこっそりこそこそ追わせていただけますと幸いでございます。

それでは、今しばらくの間しばしのお別れに入りますが、皆様におかれましてはお身体に気をつけてお過ごし下さいませ。
ここまでお読みいただきましてありがとうございました。
2017-04-10 : ■連絡事項 :
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「侵蝕恋愛Ⅳ 恋人たちの契約」ダウンロード頒布開始いたしました

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〈STORY〉
『孤児院日誌』。
一人の男による手記が波紋を投げ掛けケイを過去へとからめ取る。
恋人たちはそれぞれの空白を埋め合うように互いを束縛し、依存し合う。
ケイの失われていた過去と記憶が徐々に明らになっていく。その前哨戦。


pixivBOOTHにて「侵蝕恋愛Ⅳ 恋人たちの契約」ダウンロード頒布開始いたしました。
COMITIA110で発行した番外編「侵蝕恋愛 side story fourteen years old」と一部リンクする内容になっております。
当作品をご存知の方には二重に、そうでない方にも存分に楽しめる内容になっているかと存じます。

今巻の見所はそれぞれの登場人物の秘めた想いが爆発するところ。
今までの流れを包括する読み応えのある内容になっているかと存じます。
暇で暇で暇でもひとつ暇でたまらんわーって方、是非どうぞ。

A6文庫版/250p (本作品は小説作品となります)
※なお当作品はPDF作品となりますので、PDF閲覧可能なアプリやソフトを別途ご用意ください。フリーソフトがweb上で無料ダウンロードできるようです。
例:Adobe Acrobat Reader DC等
2017-04-03 : ■連絡事項 :
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『千年相姦』二章 『クルルー様の冒険譚』 第八夜 ニゲル襲来(3)

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今までのクルルー像は実はニゲルだった。
衝撃の事実が明らかになった前回。
皆様お忘れかもしれませんが(管理人も忘れてた)、クルルーは養親レフィナの顔を見せてもらうべく「クルルー様の冒険譚」を語り聞かせていたのでした。同じベッドの中で。内容に満足したら見せてねって条件で。
語りが終わったので視点は現在に戻り、早速クルルーはレフィナに感想を求めているようですが果たしてその反応は……。
クルルーがなぜ執拗にレフィナの顔を見たがったのか、その謎も含めてお読みいただけますと幸いです。
二章「クルルー様の冒険譚」これにて閉幕です。
それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
クルルー(18歳)レフィナ(年齢不詳)


二章 『クルルー様の冒険譚』 第八夜 ニゲル襲来(3)


「……そうしてコロンを盗られて村にいられなくなった僕は、唯一無二の家族の元へ血相変えて帰ってきたってわけ。『クルルー様の冒険譚』は、これにて終幕」
 僕はレフィナの腕の下に潜り込んだ。声が屈もるのも構わずそのまま尋ねる。
「どうだった? レフィー」
「……迫真に富んだ『冒険譚』だったよ」
 レフィナのそういう声は、沈鬱なものだった。
 及第点に達していなかったのだろうか。不安になってしまった僕はレフィナの襤褸に包まれた顔を覗き見る。
「面白くなかった?」
「面白くなかったというわけではない」
 どうにも煮詰まらない態度だ。
 この場合、どちらを信用すればいいのだろうか。声音だけ聞く限り、とてもそう思っているようには思えない。
「今夜でもう、最後だよ。レフィナの要望通り、本にも勝る『夜伽話』こと『クルルー様の冒険譚』は話し終えたつもりだよ。……レフィナの顔を見せて」
「おまえの話次第だといっただろう」
「満足しなかったの?」
「そういうわけじゃない」
 やっぱりそうだ。
 レフィナは単に約束を遂行するつもりがないだけなのだ。
 最初からこうやってごまかすつもりだったに違いない。
「見せて」
 そう思うと俄然こちらも意地になってしまった。怒られるのを承知でレフィナの襤褸に手を掛けた。「見せてよ」「だめだ」「でも……」
 見せてよ、だめだ、という無意味な押し問答がしばらく続いた後、耐えきれなくなった僕は養親の身体に跨がり、半ば強引に顔を覆う襤褸を剥いだ。
「やめっ……」
「──」
 ──歳をまったく取っていない。
 七年前に出ていったときとまったく同じ、精彩を欠かない若い顔が、そこにあった。僕の思い過ごしじゃなかった。仔どもの目から見ても、この養親は異様に歳を取るのが遅いと思っていたのだ。
 レフィナが投げ遣りに顔を伏せる。
「……数多くの雌たちの姿を見てきた後とはわけが違う……、ほかの雌たちの顔には、こんなもの」
 レフィナは僕の沈黙を、自らの顔の中心に走る「疵」へのそれと解釈したようだった。
「違うよ、レフィー」
 記憶の中にある以上に、いや、記憶の中にあった以上に美しい姿が、そこにあった。
 金色の瞳と、水色の瞳、左右で色の違う、その希有な色の眼差し……。
 細い鼻筋、適度な厚みのある、プリムラの花より淡い、桃色の唇……。
 そうして何よりその中心にある。
「やっとこの疵に触れさせてもらえる……」
「……やめろクルルー」
「ごめん、聞けない……」
「……っ」
 レフィナが瞳をきつく閉じる。迫り来る現実から逃れるように。
 僕はレフィナの真上から、露わになったレフィナの「亀裂」に舌を運ばせた。
「っ……」
 ピクン、とレフィナの背中が仰け反る。
「痛む?」
「……ざらざらする」
 キトゥンの舌は無数の小さな突起がその表面にあるのだ。僕は苦笑した。「ざらざらするだけ?」
「クルルー、頼む、もう、やめ……」
 僕はなおも舌を這わせ続ける。
「幾晩待ったと思っているの。僕は約束を守ったよ。レフィナも約束は守らなきゃ」
「こんなことは約束に含まれていない」
「じゃあ解釈の違いだね、我慢するしかない……」
「……いい加減にしろ!」
 寝台から飛び起きるようにして養親が僕を撥ね除けた。僕は咄嗟にそれをよけ、振り仰がれた腕の隙間から養親を見遣った。
 ……本気で拒絶しているし、……本気で怒っている。
 少し、羽目を外しすぎたかもしれない。
 たしかにこれじゃ、約束違反だ。約束の中にこうした行為は含まれていなかった。
 僕はただ、レフィナの顔を見たい、といっただけだ。
 だけど、これでいい。
 天井の位置を見失ってはいけない。
 僕たちは親仔なのだから。
 僕たちはキトゥンとニンゲンなのだから。
 レフィナが寝乱れたようにも見える襤褸を直す。僕はその後ろ姿を寝台から眺めていることしかできない。
「……一度あることは二度ある、と『クルルー様の冒険譚』の中で、いつだったかいってたな」
 昨夜だったか、レフィナが背中を向けたまま独りごちた。
 ちゃんと聞いていたんだな、と思った。正直。
「歴史は繰り返す……」(※管理人注/この「歴史は繰り返す」、なんとなく頭の片隅に置いててもらえると嬉しいです。レフィナは何に対してそういったのか)
 レフィナが振り返った。疵の走ったその顔で僕を刺すように見つめながら。
「ニゲルはどこにいった」
「え」
 答えようとする前にレフィナが寝室の衝立に手を掛けた。「……ニゲルはおまえによく似ているな」
 レフィナの姿が衝立の向こうに吸い込まれていった。
 仕掛けたと思っていた罠は、実は真横に横たわっていたのだった。
 八夜もの間、ずっと。


どうやらレフィナにはクルルーのからくりもばればれだったみたいですね^^;
次の更新は4/15(土)を予定しております。

2017-04-01 : 小説・「千年相姦」 :
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前年度の反省と来期の目標とかお知らせとか

今日は春分の日。
調べによると昼と夜の長さがほぼ同じになる日だそうですが昼のほうが14分ほど長いそうです。でもまあこんな風にして春めいてくるんですね。二十四節気偉大。

前年度はブログスタイル変更に伴い皆様には多大なご迷惑とご心配をおかけしてしまいましたが、おかげさまでというかなんというか個人的には非常に快適に過ごさせていただいております。
余裕が出てくるとコメント欄の完全解放を……と思わないでもないのですが、わたしの場合ここで欲を出すと後で絶対またしっぺ返しがくるので、当分はこのスタイルを維持していこうと思います。自分にはこのくらいのほうがいいようです。皆様におかれましては読み逃げ状態が続いておりますが本当に申し訳なく……またわたしにとって交流を控え目にすることは「禁欲」の意味合いもあるのでご了承いただけますと幸いでございます。

ただいま「侵蝕恋愛Ⅳ」絶賛執筆中です、あともう一息というところまできています。世界にどっぷりつかっている最中で気が抜けないので、主人公ケイの心情を忠実になぞるためにも今しばらく「禁欲」させていただきます。ごめんなさい。
ほら、テスト期間中にウェーイするのって気が引けるじゃないですか、それと一緒……

ついでといってはなんですが、そんなこんなもあって新年に目標を掲げることができなかったので、この期に前年度の反省及び来期の目標設定です。

◆前年度の活動及び反省

【ブログ関係】
●「双卵少女」連載(完結)
●「千年相姦」連載開始(連載中)

【創作】
●「侵蝕恋愛Ⅱ」執筆/pixivBOOTHにて無料ダウンロード販売開始
●「侵蝕恋愛Ⅲ」執筆/pixivBOOTHにて無料ダウンロード販売開始
●「蛇屋敷」執筆/webアンソロジー季刊誌「carat!」発表
●他、「千年相姦」挿絵とかイラスト関係諸々

【健康面】
●持病の睡眠障害は小康状態。もうこんなもんかと半分悟りの境地。睡眠導入剤を使うのを完全に止める。(やっぱり副作用のが大きかったため)

【私生活】
●引っ越しがあったり身内に不幸があったり後半特に慌ただしかった印象だがおおむね順調。

【総括】
●わたしにしてはまずまずの活動実績なんじゃないかと思う。特にライフワークである「侵蝕恋愛」を二冊刊行できたのは大きかった。


◆来期の活動目標及び目標

【ブログ関係】
●「千年相姦」引き続き連載
●「千年相姦」の挿絵を再開する

【創作】
●「侵蝕恋愛Ⅳ」上梓
●「侵蝕恋愛Ⅴ」上梓
●一回くらいはイベントにも出たい

【総括】
「侵蝕恋愛」の執筆を軸にイベントに出つつイラストも描きつつ……というところか。
ただし小説とイラストを同時進行で進めることは自分の技量的に厳しいので当分の間は執筆に集中してイラストは諦める。できたら「千年相姦」を書籍化してイベントで頒布したいがこちらは予算と自分の健康状態次第。

こんなところでしょうか。
表に発表できることは少ないんですけれど、水面下ではいろいろやってる感じですかね。
皆さんの作品も追わせていただきたいのですが、「侵蝕恋愛Ⅳ」校了までしばらく……今しばらくおまちくださいませ。本当にへたれで申し訳ありません。
あと、最後、ものっそいどうでもいいお知らせなんですが、アリスブックス様にて委託させていただいておりました書籍の通販が終了しました。こちらもご了承下さい。
皆様も新生活や来期に向けていろいろ目標を掲げてみてはいかがでしょうか。
ここまでおつきあいくださりありがとうございました。
2017-03-20 : ■連絡事項 :
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『千年相姦』二章 『クルルー様の冒険譚』 第八夜 ニゲル襲来(2)

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「コロンと交配した」
ニゲルの口から衝撃の事実を打ち明けられたクルルー。
そのことによってクルルーの世界は崩壊してしまったようです。
代わりに今回はニゲルが独白してくれているようです。
ん……? ニゲル?
皆さん薄々勘付いておられたかと思いますがニゲルこと「彼」の独白をお楽しみいただければと思います。
それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
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ニゲル?


二章 『クルルー様の冒険譚』 第八夜 ニゲル襲来(2)


 コロンの身体は、最高だったよ。
 少し、幼いんだね、彼女の身体は。淡い胸に、緩やかな腰、そう、あまり細くないんだ。これからもっと細くなるのかな。よくわかんないけど、そういう身体も魅力的だよね。
 コロンはさ、胸が淡いのに、胸の頂きを含まれるのが大好きなんだよね、あ、あんたなら知ってるよね、それともあんたがそんなふうに手懐けたのかな、うわっ、気持ち悪ぃ、けどコロンに罪はないか、コロンごめん、って、ここにはいないか。
 はははっ。
 コロンってさ、好奇心旺盛で、交配を始める前からなんとなく予想はつく感じだったんだけど、その好奇心の多さが災いしたのかな、どんどんどんどん、のめりこんでいって。最後には、……これはいわないでおこうか。君には残酷すぎるだろうからね。
 来期の春ごろ、答えが出るんじゃないかな。
 コロン自身の頑張り次第でさ、なんて。(※管理人注/コロンが「ニゲル」の仔どもを身籠っていることを暗に示唆している)
 ははっ。
 話を戻そうか。
 あんまり敏感なものだから、何度も何度も胸の突起を啄んでやった。そうするとコロンはかわいい声を出すね。甘ったるいさ。何度も何度も「……ルー、……ルー」って、僕の名前を呼ぶんだ。
 ……正直、愛しい、と思ったよ。そんなに誰かに求められたことはなかったから。
 僕の親、……ああ、『君と一緒で』僕も『養親』に育てられたんだけどね、ほら、君はサリーのパパとかママを一度も見たことがないだろう? (※管理人注/本物のニゲルとサリーは兄妹)それにはそういった理由があったっていうわけ。……うん、きっとそう。なんだろう、よくわかんないな、とにかくそういうものだって納得してよ。
 で、あんまり僕を求めてやまないから、僕も本当に彼女のことが好きになってしまったんだ。……チコとはまた違う意味でさ。見ただろう、あの短い黒髪の、雌キトゥンのこと。彼女のことは、自分と似た境遇に共鳴を覚えたって感じ。コロンは……、正直、憎しみすらあったよ。あまりにもてるもの特有の思考回路を振りかざしていたからね。彼女は、僕に。
 だから「僕の側」に引きずり込んででやりたいと思ったのかもしれない。おまえの幸福はそうであるから「そう」であるだけなのであって、本質じゃない、ってね。見方を変えればこういうこともあるんだよって、そういうことを教えてあげたつもりなんだ。
 チコのことを話すことによって。
 ……身体に刻み込むことによって。
 ……チコのことだけどさ、僕、この前彼女のこと『過ち』っていったよね。それは、チコ自身が自分のことをそういっていたからなんだ。自分の存在を『過ち』だって……。じゃあ、何が『正しい』なのかって、反対に訊き返してやったよ。そうしたら彼女、なんていったと思う。
 コロンとコロネが正しいって。
 そうしてこうもいっていた。
 コロンのお母さんに申し訳ないって。(※管理人注/チコはパパの隠し子)
 彼女、左腕に包帯巻いてたでしょ、え、気付かなかった?まあとにかく今度見てみてよ、って、「今度」があったらの話なんだけどさ。

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 だから彼女、自分の存在が申し訳なくて、そう思うたびに「じしょうこうい」をしていたみたいなんだ。
「じしょうこうい」の意味はわかる?
 自傷行為。
 自分で自分を傷つける……、おおよそ、キトゥンの本能とは真逆をいくような行為だ。
 けれど彼女はそうすることによって、キトゥンである自分自身を越えたところへ行こうと思っていたんだ。
 キトゥンらしい幸せの在り方を自ら放棄することによって、コロンとコロネ、そうしてコロンのお母さんに贖罪してるつもりなんだ。……これは僕の推測。チコはそんなこと、いわない。彼女、ああしていて、押し付けがましさとは無縁のキトゥンだから。あんたのかりそめのママみたく、毎日毎日これみよがしにごってごてした料理をこさえるばかりが脳の雌に比べると、なんとも控えめな生き方だと思わない?
 ……けど、さ、そこにはもう一つ裏があるんだ。
 つまりチコは、そうすることによって、コロン姉妹とママを攻撃していたってわけ。
 あの傷つけられた腕は、彼女にとって自分の外部に広がる世界の象徴でもあるんだね……、彼女は、世界を憎んでいる。
 ……僕にはよくわかる。
 僕も、……そうだから。
 えっ? チコのことになると、妙に冗長になるねって? うるさいな。そりゃ、迷い込んできた僕を招き入れてくれた存在じゃないか、それはまあ、それなりに、情めいたものは、ね……。
 え? 恋?
 ……違うよ。
 ……違う、と思う。
 だって、チコは……。
 ああ、あんたが変なこというから、何を話していたのか忘れてしまったじゃないか。そもそも僕は調子に乗ったあんたを諫めるために話をしていたっていうのに。これじゃまるで、反対に僕があんたに諫められてるみたいだ。
 それよりあんたさあ、さっきから一歩も動かないね。
 それ、なんで?
 演技にしても堂に入りすぎてない?
 え? それよりも話を続けてよって?
 うるさいな、なら、動けよ、喋ろよ。
 コロンとは幾度も交わったよ。何度も何度も何度も……。
 場所は、まあ、いろんなとこ。
 チコの目には触れないとこでやった。
 嫉妬? 違うよ、チコはさ、その辺りの感覚がぶっ壊れてるんだ。何しろ僕の目の前でほかの雄を自ら連れ込むような雌だからさ。まあ、そういうところも興奮するんだけどね。そう、そういうところも、僕、好きなんだ。
 背後から、横から、時には向かい合って、時間をかけてコロンを籠絡していったよ。
 コロン、もう、最近はわけがわからなくなっていたんじゃないかな。
 何が正しくて、何が間違っているのか。
 自分たちの幸福の陰で、泣いている存在がいるっていうことを、彼女は最も残酷な形で突き付けられてしまったんだ。……「チコ姉さん」のことを。
 けれど僕はこうもいった。君の罪じゃないよ、って。ましてやパパの罪でもないって。けれどコロンは、「チコさんは自分のことを『過ち』って思い込んでいるのでしょう? それ自体が罪なのよ……」
 僕はそれに対して反論することができなかった。
 どうしてだろう。
 コロンから天真爛漫なところが失われていけばいくほど、コロンの顔から笑顔が消えれば消えていくほど、僕はコロンのことが好きになっていった。コロンが涙を流せば流すほど、愛しくって堪らない気持ちになっていった。
 コロンが欠ければ欠けるほど、僕は満たされていったんだ……。
 きっと僕は、コロンの「破片」を、僕自身が抱えもつ「空洞」と同じ形にしたかったのかもしれないね。
 元々、あんたのためだけに用意されていた「破片」を、僕の側の「空洞の形」に引き寄せてしまったんだ。
 ……どこかに忘れてきた、あの人と同じ形に、……近づけたかったんだ、僕が、……僕自身が。
 え? それは誰って? あんたには関係ないだろ。それに僕だってもう覚えていない。
 もうずっと昔、……六年くらい前だから。
 六年。
 もう、六年。
 まだ、六年。
 どうかな。
 よく、わからない。
 いまだに、どうすればよかったのか。
 だけどもう最近は……。
 ここいらにいる雌たちの破片の形を、僕の空洞と同じ形に一々整形するのも疲れてしまった。
 ……ここいらっていうのは、もちろん、この村のことだよ。
 嫌だなあ、そんな、具体的に名前を挙げるわけにはいかないじゃないか。
 ええっとぉ、まずコロンでしょ、それから……って、口に出してるね。でもここから先は本当に秘密。
 この村は狭いから、さ。すぐに噂が広まってしまう。
 もう広まってるんじゃないかな。
 だけどここいらの雌たちは、ちょっといじると、すぐにぼろを出すね。その「破片の形」を。
 どんな形をしてるのか、それを自ら話してくるんだ。
 コロンは満たされすぎている自分に無意識に不満を抱いているようだった。
 自分の容姿に劣等意識をを抱くあまり、学問に逃避している雌もいた。
 自らの日常にうすらぼんやりとした違和感を抱いていた雌もいた。
 お姉さんと自分を重ね合わせて見ている雌もいた。
 えっ? それってコロンの妹のことじゃないのって? だからいったでしょ、具体的な名前はいわないって。いくら訊いても、それは彼女たちの名誉のためにも絶対に口を割く気はないよ。
 さすがに、この妹にはいえなかった。君のいう『お姉さん』はどっちのお姉さん、だなんて。彼女の世界をかき回すのは、さすがに、気が引けた。何しろ自分とお姉さんを重ね合わせて見ているような雌なんだ、そんな沈み込んだ雌が二匹も一挙に沸いたら、さすがにパパが勘付くでしょ、勘付かないか、あれは。悪いキトゥンじゃないんだけどね。彼はその外見に似つかわしくなく本当に朴訥で純粋なキトゥンだと思う。……どちらかというと君に近い。
 だから、ああいう種類のキトゥンは、たとえ雄としては優れていても、雌は慎重に選んだほうがいいのかもしれない。……自分自身が抱えきれなくなるから。
 そうしてこぼれた「余剰」が、ここのやたらうら寂しげな「チコの庭付きの家」ってわけ。
 かわいそうに、チコは今でも「パパ」の呪縛から逃れられない。
 僕が──の呪縛から逃れられないのと同様に……。
 さあクルル—。
 話はおしまいだ。
 君のせいで、なんだか余計なことまでいっぱい話してしまった気がする。
 君があんまり動かないからだ。
 君があんまり喋らないからだ。
 君には最初から、むかついていたんだ。
 唯一無二を目指して、一心不乱にコロンを愛していた君が、疎ましかったんだ。
 だから、僕の目の前から消えて欲しいんだ。
 家に帰りなよ。
 ……僕も、さすがにもう、ここにはいられないかもしれない。
 なぜって、君が動かないからだ。
 ……だけど、僕はどこに「還れば」いいんだろう。
 ……どこに。


【ちょっと解説】
おわかりいただけましたでしょうか。
実はこれまでの「クルルー像」は、クルルーが本物のニゲルから言伝に聞いた話を盛り込んで捏造した姿でした。(代わりに本物のニゲルに空きができるのでクルルーはそこに真の自分を当て嵌めて補完した)。二章の始めっからその体験ほとんどはニゲルのものだったんですね。 一部クルルーの体験や心理も盛り込まれてますが。なんでそうしたかというと、多分本当のことを話してレフィナに嫌われるのが嫌だったからでしょう。


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本物のニゲルはこれ↑。
本物のニゲルはクルルーの手により崖から落とされてしまいました。
前回クルルーが樹木を挟んでニゲルを壁ドンしたんですがその衝撃で樹木ごとニゲルが落ちてしまったんですね。(なので前回ニゲルの世界も文字通り「崩壊」し、本物のクルルーの語りに完全に切り替わった。でもレフィナの手前、一応「ニゲル」語りという体裁を保っている。ややこい)
分かりづらいと思うのでご質問ございましたらどしどしお寄せください。
ニゲルの生死は。クルルーの本当の気持ちは。
様々な謎を孕みつつ次回「二章 クルルー様の冒険譚」は終幕を迎えます。

次の更新は4/1(土)を予定しております。

2017-03-15 : 小説・「千年相姦」 :
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『千年相姦』二章 『クルルー様の冒険譚』 第八夜 ニゲル襲来(1)

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「第八夜 ニゲル襲来」突入です。
ニゲルにもたらされた「繁殖成績」という尺度、クルルーとニゲルの関係性の謎。
様々な疑惑を孕みつつ、今回急展開を迎えます。
佳境を迎える第二章、どうぞお楽しみください。
それでは、どうぞ。


【今回登場する登場人物】
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クルルー(17歳)コロンのママ
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チコ(18〜9歳)ニゲル(18〜9歳)


二章 『クルルー様の冒険譚』 第八夜 ニゲル襲来(1)


 コロンとの仲は険悪になっていく一方だった。その一方で、パパやママやコロネとの関係は一貫して良好の一途を辿っていくばかりだった。けれど肝心のコロンと僕の関係がうまくいっていない。
 原因は明らかだった。
 コロネの手ほどきを巡ってだ。
 ある日思い切って尋ねてみたことがある。
「どうしてそんなに三匹ですることにこだわるの」
「……!」
 コロンは僕の頬をひっぱたいた。なぜそんな仕打ちを受けたのか、心底意味がわからなかった。
 僕はもちろん、秘められていた「宝石の一粒」の想いをきちんとコロンに伝えもした。
 コロンは涙を流して喜んでくれた。
 問題は解決したと思っていたのだ。
 パパもママも「焦らないで」とコロンに助言してくれている。
 キトゥンは元来身ごもりにくい種族なのだ。
 そう、焦り。
 なんだか最近のコロンは、彼女特有の朗らかさが失われてきているのだ。なのに交配時のいやらしさは増していく一方で、もはやなんのために交配をしているのかわからなくなるほどだった。
 気持ちがいいから交配をするのか。
 仔キトゥンをたくさんこさえるためにより多くの交配に挑むのか。
 はたまた「繁殖成績」を上げるためなのか。
 今ならわかる。
 コロンは雌の業に囚われていたのだ。
 コロンは「繁殖成績」の罠に囚われていたのだった。

※※※


「ママ、相談があるんです」
「コロンのことね」
「はい……」
 ある晩のことだった。「月夜の散歩」の途中で、とうとう僕はこの家にとっての雌キトゥンの先達でもあり先駆者であるママに、思い切って率直な意見を伺ってみようと思ったのだった。
「コロンって、昔からあんな仔でしたか」
「好奇心旺盛な仔ではあったわ」
「天真爛漫で」
「朗らかで」
「明るくて」
「ちょっとわがままで」
「いえ、それは違うと思います。えーと、自分の意見をしっかりもっていて」
「うふふ。ものはいいようね」
「つまり、あんなふうに、何かに悩んでそれをずっと引きずる、なんてことは、一番彼女に似つかわしくない状態だと思うんです」
「……」
 コロンのママが悲しげに眉を顰めた。
 そう、ここ最近のコロンの変貌ぶりは、深刻な危惧感を周りの者に抱かせてしまうほど危ういものだったのだ。
 やたらと怒っていたかと思えば、急に静かになる。落ち着いたかと思った途端、今度は泣きじゃくりながら誰かれ構わず当たり散らしたりする。
 それはコロンの心の乱れを反映したものではないのか。
 コロンは何かに悩んでいるのだ。
 正解がどこにあるかわからなくて、それで思い悩んでいるのではないだろうか。
「……正直ね、コロンからコロネの手ほどきの話を聞いたときはね、戸惑いもしたのよ。わたし自身、昔いろいろあってね……。けど、反面うれしくもあったの」
 複雑よね、と肩をすくめながら苦笑する。
 事情をその実知っている身としては黙っているよりほかない。ママだって僕が、その裏に含む「ジジョウ」を知らないであろうことを前提にこういったいい回しをしているのだろう。当たり障りのない相づちを打つのが精々だ。(※管理人注/パパの昔の浮気事件のことをいってるんですね)
「あなたみたいな素敵な雄キトゥンに、娘たちのすべてを委ねられるのなら、親としてはこれ以上安心なことはないじゃない?」
「親」という単語に、僕の中の失われた部分がちくりと痛んだ気がした。だけど気のせいだろう。「幻肢痛」というものだ。
「よその雌を手ほどきするのとは意味が違うもの」
 そのよその雌の手ほどきが手ほどきじゃなくなってしまった雄もいるのだ。
 ……多分。
「けれどコロンはねえ……。ちょっと、拘泥しすぎなんじゃないかしら。あなたはコロンが一番大事で、だからこそコロン以外の間には仔キトゥンを作りたくないそうじゃない?」
「はあ……まあ」
 そんなことまでもう伝わっていたのか、と、母娘の奇妙な絆を垣間見た思いがする。
「そういうのも愛の形の一つなのよ、って、わたしなりにあなたの思いを咀嚼して伝えたつもりなのよ。だけどあの仔はなんていうか……」
「繁殖成績」
「……! そう、繁殖成績。クルルーあなた、難しい言葉を知っているのね」
 コロンのママが目を見張る。僕は照れてしまって「う、受け売りです。……サリーの」
 ……の兄のニゲルから、という部分は割愛した。
「繁殖成績の罠にかかるとわたしたち雌キトゥンは一気にだめになるわね。自分の本当の気持ちがわからなくなる」
「え……」
「雄のあなたにはわからないでしょうね」
 それは、決して嫌味ないい方ではなかった。ただ冷静に、どうしても越えられない壁が両性間にはあるのだ、ということを噛み砕いて教えてくれている大人キトゥンの顔だった。
「雄はね、そのあたり、もっと単純なのよね、裏がないっていうか、馬鹿っていうか」
 馬鹿、とずいぶんあけすけにいう。その笑顔は、なんていうか初めてママが僕に見せる「大人キトゥンの雌」の顔だった。
 ママは僕に対して、まるで同年代のキトゥンに話すみたいに、今、心を割って話してくれている。
「だからわたしも受け入れることができたのね、パパを。パパは自分の持ち物に対して順位をつけるって発想っていうか、そんな知恵すらないのよ。自分の持ち物は全部大事、平等、そのすべてが愛の対象……、ごめんなさい、難しいわね、こんな話は」
「う、うん、ム、ムズカシイナー」
 なんっって白っじらしい! だけど「わかりまーす」というよりは遙かに良かったに違いない。
 けれどコロンのママのいうことはなんとなくわかる気がした。僕もまた雄だからだろうか。
 僕はコロネの身体に興味があるけれど、そこには本当に深い意味はなかったのだ。愛、とか、ましてや、恋、ですらなくて、でもまったく愛情がないかというと、決してそんなことはなくて、どちらかというと好奇心に近い。だけどコロンの「欠けた欠片」に敵うものをどうしてもコロネの「肉体」以外の中に見つけることができないのだ。それでいまだコロンにだけ愛を捧げているというだけのことだったのだ。
 そんなことをかいつまんでママに話すと、
「あなたは変わった雄だわ。その年齢でその域に達するなんて」
 と、まるで老キトゥンを見るような眼差しで僕を見る。
「い、いえ、初めて出会ったコロンが、たまたま最高で最愛だった……、だけです」
「……」
 コロンのママの瞳が寂しげに揺れた。月明かりのせいだったのかもしれない。僕はそれに気付かなかったふりをしながら、それとなく森の小道を二匹で歩み続ける。
「……コロンは何が不満なのかしらね。あなたの一身の愛をそんなに受けて。身も心も満たされているはずなのに」
 いつもすごい声を上げているから。
 今、ママ、すごいことをいわなかった?
「あの仔は本当に『繁殖成績の罠』に陥っているのかもしれないわね」
 クルルー。
 ママが矢継ぎ早に僕の名を呼ぶ。
「ねえ、最近、新しい雄がこの辺りに来たんじゃない? そうじゃなくても、そういった噂をあなた、聞いてない?」
 なぜかニゲルの顔が浮かんだ。
 だけどあいつは「新しい雄」じゃない。
 ずっとずっと昔からこの地にいる雄じゃないか。それこそサリーの兄なんだから……。
 むしろ新しいのは。
 あれ。
 なんだろう、これ。
 地面がぐにゃりと歪む。
 平衡感覚が薄くなる。
 ねえ、クルルー。
 ママの声が遠くから、それでいてやけに近くから聞こえてくる。
 雌はね、理詰めでは到底およびもつかない堪らない気持ちになってしまう「悪魔の雄」をそれぞれの内部にみんな飼っているの。その「悪魔の雄」は自分を不幸にする存在でしかないと本能でわかっていながら、雌たちはひとたびその罠に嵌ると自力で這い上がるのは困難を伴うの。そういった雄はそれぞれの雌によって容貌も性格もそれぞれ異なるの、だってそれは雌の弱点を補う形で目の前に現れるから。けれど、一度そんな雄が目の前に現れると雌の本能がうずくの。この雄の仔どもを産みたいって。その雄の仔どもを産むことこそがわたしの幸せなんだって。その雄の仔どもを産むことしか考えられなくなるの。それは錯覚だってわかっているのに、けれどそれこそが真実だったのかもしれないと、いつしか絶対的なうずきの前でその雄の前にひれ伏さざるを得なくなるの。そうしてそんな相手がわたしにとって。
「クルルー貴方なのよ」
 という声が聞こえた気がしたのは、それは幻聴だったのだろうか。
 月がぐらりと傾く。
 木立が横転して僕はそうして語るべき言葉を失った。

※※※

「はっ」
 僕は寝台から跳ね起きた。
「はっ、はっ、はっ……」
 肩で息をついている。横合いの水差しから水をくむ。
「はあ……」
 こぼれでる水を口で拭っていると、ようやく心身共に落ち着いてきた。とはいっても、全身は汗だくだった。
 健やかな寝息が横から聞こえる。コロンの横顔が愛しかった。
「なんっていう夢だ……」
 だけどそれが夢だったのだとしたら、どうして僕は知っているのだろう。コロンが繁殖成績の罠、もっというなら雌特有の業に囚われているんだってことを。相談自体は数日前にしていたということなのかもしれない。
「……どうしてなのコロン。僕の仔どもだけじゃ嫌なの……」
 コロンの髪をかきあげる。
 ……。
 ちょっと待て。
 今、僕はなんていった。
『僕の仔どもだけじゃ嫌なの』
 どうしてどうしてどうしてどうしてどうして。
 どうしてそんな最悪の事態が頭に浮かんだのか。
 けれど一度浮かんだ災厄は頭の中で具体性を増していくばかりだった。
『最近、新しい雄がこの辺りに来たんじゃない?』『ただいま〜』
 コロンのママの言葉とニゲルのふざけた声が交差する。
 僕の中でなぜかニゲルは「新しく来たばかりの雄」になっている。
 それはつまりこういうことなのではないか。
 あいつは放浪癖がある。この地で生まれ育ったはいいけれど、いつもいるかいないかわからない、ふらふらふらふら。サリーだっていっていたじゃないか、好奇心の赴くままにそこに赴く癖があるって。つまりほとんどこの村にいることがない。
 そうして帰ってくるたびに、仕入れてきた噂話をのべつまくなし村のみんなに話して回って、ひんしゅくを買っている。
 あいつのいい回し。
 僕の価値観を、一瞬とはいえ、一挙に突き崩してしまうような、あの、巧みな話術。
 法螺ふき。
 そうだ、それこそがあいつのおっかなさの正体だったのだ。
 悪気なく「仕入れてきた法螺」を誰かれ構わずいいふらして、そのたびに平和なキトゥンたちの生活を翻弄する。
 きっと、コロンも……。
 そもそも、繁殖成績、なんて難しい言葉、僕一匹でなら絶対に辿り着いていなかった言葉だった。
 僕はあの難しい、それでいてそれっぽい屁理屈の権化のような概念を誰に学んだのだったか。
「ニゲル……!」
 僕の中で怒りの矛先が明確になっていく気がした。
 不思議な力が沸いてくるようだった。
 僕が真に説得すべきは、コロンじゃなくてあいつだった。
 あいつがすべての元凶だ……!
『ニゲルほど弱くてあしらいやすい雄もいないわよ?』
 君はニゲルを侮っていた。
 だから「罠」にかかったんだ。
 急がなきゃ。
 明朝、決行だ。
 僕はニゲルに真偽を問わなければならない……。

※※※

「ニゲル!」
 僕は村中を駆け回る。
「ニゲルニゲルニゲルニゲルニゲル!」
 これほど何かに駆り立てられたことはこれまでの中で一度もなかった。僕はいつもぼーっとしていて、内気で、なんの取り柄だってなかったけれど、けれどそれは僕自身が僕の可能性にふたをしてきたからなんだ。
 僕はたしかに優れた雄でも強い雄でもない。
 けれど僕は手に入れることができた。
 キトゥンの本能を乗り越えたところにある、「真実の一粒」を……。それはコロンだ。
 僕はコロンを救うために今、闘っている!
「ニゲルっ! 見つけた!」
 なぜそこがわかったのか。
 勘と、あとは散りばめられていた数少ない情報と痕跡を頼りに僕がその一点を目指したからにほかならない。
 急斜面に張り付くように建っている村の果て。
 パパの『過ち』、チコの家を……。
 その雌キトゥンは、これまで見たこともないような美しい雌だった。
 すらりと伸びた手脚に、肉感を感じさせる豊かな膨らみ、そこから連なるほっそりとした腰に、再びなだらかに広がるのは、小振りの双丘……。
「あ……」
 僕は後ずさる。
 それらの肉体を、黒っぽい衣裳で身体の一部のようにしっとりと包んでいる。
 雌には「悪魔の雄」がそれぞれの内部にいるっていうけど、雄にもいるんじゃないか。「悪魔の雌」が。
 チコは僕にとっての「悪魔の雌」ではない。けれど限りなくそれに近い危険性を秘めた雌だった。
 それは本能だった。
 避けられようのない事実だった。
 そうしてパパは、おそらく「過去」に、自らの内部に巣食う「悪魔の雌」の誘惑の力に絡め取られてしまった……。
 おそらくチコによく似ていた、その魅惑の雌に。
「……」
 チコは言葉を発するでもない。ただ、唇をかすかに開いて、佇んでいるだけだ。その唇はやけにふっくらしていて、それでいて、赤かった。腐りかけのヌイの実みたいに。
「どうしたのそんなに息せき切って」
 気怠げな声と共に奥から出て来たのは、紛れもない、僕が探し求めていたニゲルだった。僕の様子を認めると目を見張り、「外に出よう。……ここにはチコがいるから」促された。
「……」
 後ろを振り返る。離れがたかった。
 チコから。
 強制的に意識を剥がしてニゲルに囁く。
「……君でも他者を気遣うことがあるんだね」
「……あ?」
「今の君のいい方だよ。チコ……、……チコ、さんを、思いやってる感じがした……、今の、いい方」
 ニゲルは無言だった。苦悶の表情に顔を歪めている。
「……ああそうかよ」
 その声は苦しげだった。
 自分でも納得がいっていない、というふうに。
「何しに来たの、こんな朝からさあ……、これから交配しようと思ってたのに」
 腕を伸ばした衣服に、寝乱れた皺がいっそう目についた。
「ふざけるな! 朝から……、いや、別にいつでもいいんだけれど、僕は畑仕事があるから、……じゃなくてっ、ニゲルっ、君、僕にいうことがあるだろう!」
「いうって何を」
 ニゲルは欠伸をしながらまるで緊迫感がない。伸びをして朝陽を眩しそうに浴びている。
「わかってるくせに!」
「……それを白日の元に晒すことがあんたの望んでいることなのか」
 突如切りつけるような眼差しを向けられた。怯みそうになるのを僕は勢い制し、立ち向かう。
「そうだよっ、全部をこのお日様の下に引きずりだして、君を諫めてっ、コロンを苦しみから解放してあげてっ……!」
「それで」
「それでって、え」
 淡々とした口調が逆に異質で僕は思わず後ずさってしまう。
 そのまま淀みのない歩調で僕に詰め寄ってくる。
 一分の隙もない、張り詰めた空気をまといながら。
「ひっ」
 そのまま斜面の樹木に押し付けられる。こいつに前面を阻まれて逃げる術もない。
「それで、あんたは僕を正して、コロンを苦しみから解放して、それでどうする」
「だ、だからっ、すべてはコロンを迷いから解き放つために……」
「コロンを幸福にするために、コロンを迷いから、解き放つ、……それができるのか、あんたに」
 一言一句たたみかけるような口調だった。樹木がみしみしと軋んだ音を立てた。ニゲルがものすごい勢いで樹木を殴打したからだ。
「コ、コロンは何かよくわからないけれど、今、迷ってるんだ。迷走してるんだ。自分の足元がおぼつかなくて、不安で……」
「つまり自分の価値観が根底から揺らいでいるって?」
「う……ん、そうだ、そうしてそれはおそらく、ニゲル、君が発端なんじゃないか……」
 ニゲルが酷薄そうに瞳を細めた。「ご名答」
「やっぱり……!」
 僕は怒りで我を忘れる。
 嫌な予感がひたひたと押し寄せる。
 嫌な予感が押し寄せてきて、脳髄を浸し、思考を支配した嫌な予感が、嫌な現実を、引き寄せる……!
「ねえクルルー、どうやってコロンの価値観を覆してやったか教えてやろうか」
「いっ、いいっ、どうせ『繁殖成績』の話をしたんだろ! 正しくもない知識を、法螺を!」
「繁殖成績? あんた、いつの話をしてるの? そんな理詰めの話をどうしてしなくちゃいけないの」
 雌相手に。
 そんなものいわぬ囁きが聞こえた気がした。
「やめろ……」
 嫌な予感が止まらない。予感をここで押し止めなきゃ、嫌な予感が一人歩きをして、嫌な想像を現実のものにしてしまう……!
「簡単なことだ」
 ニゲルの唇が薄く刻まれる。
「コロンと交配した」
 僕の世界が崩れた。


次の更新は3/15(水)を予定しております。

2017-03-01 : 小説・「千年相姦」 :
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今日は猫の日

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プロフィール

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Author:canaria

イラストと小説でオリジナルの世界観を表現しています。時々COMITIAに出たりもします。初めましての方はこちらをどうぞ。
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Nymphe(ニンフェ)名義の本家HPです。ここを見て興味を持って頂けたらこちらも覗いて頂けると嬉しいです。

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